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交通事故マップから地域の安全を考える


はじめに

この記事では、私が作成した「日本全国交通事故マップ」を使ってどのように自分たちが住む地域の安全対策ができるかを考えます。

交通事故マップについて

警察庁のオープンデータを使って2019年〜2022年の4年間に起きた交通事故の場所や状況をウェブ地図化したものです。
参考として、私が住んでいる地域周辺を表示すると下図の情報が得られます。(対象地点へのリンク

交通事故マップの表示例

問1:交通事故マップから考える”危ない場所”とは?

さて、ここからが本題です。この交通事故マップから見えてくる”危ない場所”とはどこでしょうか?

候補1:交通事故の件数が多い場所

最もシンプルに考えれば、交通事故の危険箇所とは「交通事故が多発している場所」です。しかし、一般的に交通量が多い大通りほど事故が多くなるので、それを特定しているだけとも言えます。

大通りほど事故が多い

候補2:交通事故が多発する交差点

交通事故の危険箇所として代表的なのは「交差点」です。
朝日新聞の特集「みえない交差点(外部リンク)」では同様のデータを使って、小さな交差点ほど歩行者や自転車と車の事故が多く危険であることを突き止めています。
また、実際に専門家の立ち会いのもと、該当箇所への安全対策を講じるところまで実施しており、これは一つの好例だと思います。

朝日新聞の特集「みえない交差点」

候補3:死亡事故が起こった場所

重大事故、即ち人が亡くなるような事故は最も危険であり避けなければなりません。 
したがって、過去に死亡事故が起きた場所は件数の多寡に関係なく、二度と同様の事故を起こさないためにも、必ず対策を講じる必要があります。

候補4: それ以外の場所

さて、データ上で事故が起こっていない場所は果たして安全でしょうか?そうとも言い切れません。
皆さんがお住まいの地域を交通事故マップで見ていただくと、「ここ怖いんだよな」「でも意外と事故は起こってないんだな」という場所があるはずです。
たまたま過去数年で事故が起こっていなくても、放置しておくと明日は重大な事故が起こるかもしれません。

問2:交通事故が少ない場所は安全なのか?

日常に潜む事故の前兆

ヒヤリハット”という言葉があります。これは日常に潜むちょっとした危険の合図です。
一件の大きな事故の背後には百件の小さな前兆があり、そこで今まで事故が起こっていないのは単なる偶然とも言えます。
逆に言えば、日常で感じたヒヤリハットを集めることができれば将来の大きな事故を未然に防げるかもしれません。

あわや大惨事 - 柏市のケース

一例として、2023年5月に千葉県柏市で起こった事故を挙げます。
病院から出てきた車が保育園に突っ込むという事故で、当時偶然にも保育園児は散歩に出かけていたため施設におらず、園児や保育園関係者に怪我はありませんでした。しかし、一歩違えば大惨事になっていたことは想像に難くありません。(当時のニュース記事へのリンク

当該事故に関する柏市の発表情報

事故の正確な位置図を下記に示します。なお、マップは2022年までのデータしかないため当該事故は未反映です。

2023年5月当該事故の位置図(クリックするとマップで見れます)

図の通り、事故履歴からは特に危険にはみえません。一方、住民目線だと「ちょっとした懸念」程度は以前からあったようです。
事故の後に対策としてガードが付けられましたが、兆しを捉えて事前に対策を取る重要性と難しさを感じました。

結論:事故履歴だけでなくヒヤリハット情報も必要

このような場所を「危険箇所」として発見するのは既存データだけでは難しいため、日常生活における交通事故の「ヒヤリハット」情報を集めることが、事故履歴を見ることに加えて重要になると考えます。

交通事故危険箇所の4象限

交通事故マップを地域の安全対策に役立てるには、事故記録のデータから得られる客観的な情報に加えて、日常生活で感じる主観的な情報も必要と結論付けました。
具体的には、下図のように「交通事故が多い・少ない」・「生活者が危険だと感じる・感じない」の2軸4象限で危険箇所を整理していくと良さそうです。

交通事故危険箇所の4象限

このように整理することで、同時に誰が対策の主体になり得るかも議論しやすくなります。
交通事故が既に多く発生している(あるいは重大事故が発生した)場所は、警察による優先的な対応がされることでしょう。

一方、③の「交通事故が少ないが住民が危険だと感じる」場所は警察が優先的に対応をとることが難しいため、住民コミュニティによる自主的な範囲での対策や、地元の市議会議員に頼るアプローチが必要になると思います。

まとめ

この記事では、交通事故マップを使ってどのように地域の安全対策ができるかを考えました。
交通事故マップからは事故件数が多い場所・重大事故があった場所といった客観的な情報から危険箇所を見ることはできますが、一方で主観的な危険箇所、特に日常のヒヤリハット情報と照らし合わせてみることも事故を未然に防ぐためには重要です。

この考え方をもとに、交通事故マップを活用した地域の安全対策へのアクションに繋げていきたいと思います。

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