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第4回Q&A 課題遂行で考える文字と読みの指導

課題遂行の読みとはどういうものだろうか。この回では、課題遂行の読みの能力はどのようにして身につけることができるのか、さらに文字の知識や力がそれにどう関わってくるのかを考えました。

Q1:ひらがなとカタカナ、どちらを先に学ぶ?

自分の名前や国の名前、外来語がカタカナで書かれるので、特に非漢字圏の学習者はカタカナから文字学習に入った方が負担が少ないと思いますが、ひらがなとカタカナのどちらを先にするかについて、どう思われますか。
 
A1:『まるごと』では、「どちらが先」という考え方はありません。必要なことばを必要な形(ひらがなならひらがな、カタカナならカタカナ)で学び、学習を進めながら、徐々に、ことばを形とともに覚えていくという考え方です。
従来の学習では、「教えた=覚えた」と考えることが多いために、「どちらが先が良いか」という議論になるのだと思います。しかし、「提出順=教える順=学習者が覚える順」ではないと考えています。形を覚えてから日本語学習に入るのではなく、日本語学習をしながら、ことばを通して形も一緒に覚えていくのです。そのため『まるごと』では、入門A1の段階では、ローマ字が学習を助けています。
文字学習は、学習者にとって大きな負担となります。どのような形で学習を進めるのが良いか、学習者の立場に立って考えていく必要があると思います。
 
 

Q2:文字ができないと日本語力は向上しない?

学習者が「読み書きはしたくない、聞いて話せればいいから」とはっきり言っている場合でも、「文字ができないと結局、聞いて話すことも高いレベルまで到達しないから、読み書きも教えるように」と言われることがあります。それについて、どう思われますか。
 
A2:文字は学習の大きな助けになりますが、必ずしも文字ができないと高いレベルになれないということはないと思います。機関としての立場や難しさもあると思いますが、教師としては、学習者の意思を尊重し、何がどこまで必要なのか一緒に考えていけるといいと思います。
 

Q3:「読む」「書く」ができない場合は…

プライベートの学習者様(駐在員)で、授業は気に入ってくださっている様子なのですが、登録している機関の評価基準に「読む」「書く」が入っていて、そこがいつまでたっても低いために、その機関のコーディネータから苦言を呈されてしまいました。聴解やコミュニケ―ション能力はかなり高くなっているのですが。
 
A3:学習者の個人目標と、機関で開講しているコースの目標が合わない場合、このような問題が起こることがあります。機関の中に、このような学習者に合ったコースデザインがされたコースがあると良いのですが、ない場合は事前にしっかり話し合って、双方で合意しておく必要があります。その際に、機関側も改めてコースデザインを見直したり、学習者のニーズやレディネスに関する調査を再度実施したりしてみてはいかがでしょうか。現在の多様な学習者に合わせた日本語教育を、ぜひ実現してほしいと願っています。
 

Q4:ひらがな・カタカナが覚えられない方への対応

地域の社会人に教えています。日本在住で、初級1A2くらい話せますが、3か月勉強してもひらがな・カタカナの80%は読み書きできません。話せるのに、ひらがな・カタカナが覚えられない方の文字学習で、気を付ける点は何かありますか。
(修了要件にひらがな・カタカナテストがあり、修了証があると就職に有利ですが、その方は修了できそうになく、おそらく修了証の発行ができません)
 
A4:まずはどのような理由で読み書きがなかなかできるようにならないのか、ご本人とじっくりお話になってみてはいかがでしょうか。もしかしたら、ただ単に勉強していないからという理由ではない可能性もあります。またセミナー内でも少し触れましたが、やはり文字学習は、それ単独で行うよりも、知っていることばや表現を通して何度も繰り返し見ることや、ことばや表現を文字(形)として覚える目的や必要性がどれほどあるかによって学習が進むと思います。まずは、その学習者の方と、普段の自身の学習方法や、必要な日本語能力について話してみてください。その上で、どうしてひらがな・カタカナがコースの修了に必要なのか、修了することでどのようなことが可能になるのか、話してあげるといいのではないでしょうか。
それとともに、機関やコースの目標・目的が、本当に学習者に合っているのかどうか、改めて検討してみるのもよいのではないでしょうか。
 

Q5:本を開いたアイコンは「どっかい」?

〈かつどう〉では、本を開いたアイコンが「どっかい」に関するものと捉えておりますが、それで合っていますか。
 
A5:はい、その通りです。〈かつどう〉の本を開いたアイコンは、読みのCan-doを示しています。短い文や単語を読むに過ぎなくても、文字の理解を通してのコミュニケーションはここに入ります。



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