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「話が弾む中国語」前書き公開

2月20日取次搬入の新刊、『話が弾む中国語』著者ヤンチャンによる前書きを公開します。 


 皆さん、こんにちは! 日本で中国語・中国文化YouTuberとして活動しているヤンチャン(楊小溪)です。私は大学時代から中国語教育に携わり、上海にある日本人が学ぶ中国語学校でアルバイトをしていました。日本に来てからも、マンツーマンの中国語レッスンや、NPOで中国語講師を担当してきました。その経験から、多くの学習者に共通する問題に気づきました。それは、HSK4級に合格しても、中国語ネイティブとのコミュニケーションが難しく、中国人同士の実際の会話を聴き取れないことです。もしあなたもその一人であれば、本書は役に立つと思います。
 そういう私も、実は日本語学習者として同じ悩みを経験してきたので、私自身の語学学習の経験についてお話したいと思います。私は「あ、い、う、え、お」から日本語を学び始めたのは18歳の大学生の時でした。大学で日本語を2年間勉強し、日本語能力試験N2(難易度で言うとHSK4〜5級相当)に、さくっと合格しました。しかし、大学3年生で留学のため来日したところ、初めは現地の日本人と全然上手くコミュニケーションできませんでした。
自分の言いたいことは上手く伝えられないし、日本人の話す日本語を理解することさえ難しい状態でした。それは、日本人、特に若者は、普段教科書には載っていない日本語をたくさん使っていたからです。その時、自分の外国語の学習方法に何か問題があるのではないかと思いました。そして、学習方法を工夫することで、半年後にようやくスムーズに会話できるようになりました。その後は、日本語で卒論を書いたり、就職したり、動画を撮ったり、起業したりと、日本語というツールを自由に使っています。まず皆さんに信じてほしいのは、大人になってからでも外国語を習得することは可能だということです。
 では、長い間中国語を勉強したにもかかわらず、ネイティブの中国語を聴き取れなかったり、中国人とコミュニケーションできなかったりするのはなぜでしょうか? それには2つの理由があると思います。1つはリアルな中国語材料のインプットが少なすぎること、もう一つはアウトプットが足りないことです。


インプット

 教科書の内容はもちろん言語の基礎を学ぶのにとても重要です。でも、大半の教科書で使われている例文や単語は、私たちのリアルな生活とはギャップがあります。日常会話でよく使われるスラングや俗語は、教科書ではあまり紹介されません。例えば、「やばい」「マジ」「ウザい」「ワンチャン」……。こういった言葉は日本語の教科書には載っていないし、テストの問題にも絶対に出てきませんが、普通の生活でよく使われます。
 またリスニングでも同じです。学校の中国語の先生にしても、教科書に付いている音声にしても、HSKの問題にしても、使われているのはごくきれいな標準語(普通話)です。でも実際には、教科書の音声のようにはっきりと発音できる中国人の方が少なく、ほんのわずかしかいません。中国は国土が広く、さまざまな方言や言語があるため、たとえ標準語(普通話)を話せても、出身地の言葉の影響を受けて訛ります。一般的に、北方人はより標準的な普通話を話し、南方人は巻き舌音や鼻音・奥鼻音が比較的に弱い傾向があります。標準的な中国語の表現や標準的な発音だけを聴いて勉強しても、リアルな社会でされる会話はそれとはギャップが大きいので、理解することは難しいでしょう。

アウトプット

 スピーキングについての解決策は、簡単です。たくさんしゃべる練習をすれば解決します。でも、いきなりネイティブスピーカーと話す自信がない場合は、どうすればよいでしょうか? まずはシャドーイングをお勧めします。私は日本に来てからテレビを観る時はいつも、出演者が話すことを聞きながら真似することを習慣にしています。最初は何を言っているのか分からないことも多かったのですが、そんなことはどうでもいいのです。
一つひとつ、単語の意味を理解する必要もなく、ただ聴いた音を繰り返すだけでいいのです。これは口周りの筋肉と、言語感覚を鍛えるのに最適な方法だと思います。こうすることで私の日本語の発音が正確になっただけでなく、それまで区別できていなかった文法や微妙なニュアンスも自然と理解できるようになりました。また、来日当初、カラオケ店でアルバイトをしていました。すぐに日本語で接客の仕事ができないと生活が成り立たないので、バイト先で接客のために必要な会話や、どんなシチュエーションで何を言うべきかをノートに書き出し、毎日何度も読み返し、すべて暗記しました。すると3カ月後には、一人でお店の業務全般を担当でき、予約電話も接客も問題なくこなせるようになりました。ほかの分野の日本語を完全に理解できるわけではなかったのですが、少なくともバイト先では日本語でちゃんと業務ができるようになりました。このように、スピーキングの練習では、ある場面や話題を何度も繰り返すのが効率的だと思います。
 このような個人的な経験や洞察に加え、世界的に有名な言語教育の専門家であるクリス・ロンズデール氏の提唱する方法や、スティーブ・カウフマン氏といった多言語話者の学習法も参考に、本書を書きました。

本書の特徴

① 自然な中国語
文章も例文も単語も、中国人がリアルな生活でよく使う表現です。
普段話す時に使わない書面語や古い表現などを
なるべく避けています。

② 25のトピック
実際に中国人とのおしゃべりで、
話題にしやすいトピックを25個取り上げました。

③ ヤンチャンと王陽さんの音声
ヤンチャンは中国南部の四川省出身、
王陽さんは江蘇省出身なので、
実際の中国人が話す時のリアルな発音を実感できます。

お勧めの使い方

 また、この本のお勧めの使い方があります。

  1.  まず本文を読まずに、音声を先に聴いてください。聴いた後、日本語訳を参照して、大体何パーセントの内容が分かったか確認します。

  2.  分からない単語や文法は、もう一度読んで確認してください。

  3.  初めて見る単語は、ネットで写真を検索してみたり、使われているほかの例文を探してみましょう。紙幅の関係で、十分に説明できない単語も多いため。

  4.  2回目からは1.5倍速で聴き、それに続けてシャドーイングしましょう。一度速いスピードの音声に慣れておくと、普通のスピードの音声がとても明瞭で理解しやすいと感じるため。

  5.  あなたがよくおしゃべりする話題をいくつか選んで、そこに出てくる例文と文章を暗唱しましょう。

  6.  本書で学んだ表現を使って、勇気を出して中国人と会話の練習をしましょう!

 本書は私が執筆した初めての中国語学習書です。文法説明の部分では完璧でなかったり、学術的な専門性に欠けていたりするかもしれませんが、中国語を勉強する皆さんの会話力の向上に役に立てるとうれしいです。一番大切なことは、言語学習に対する認識と学習方法を変えて、頭で考えなくても思わず口から出る「会話が弾む」能力を身につけることです!


書誌情報

書名 話が弾む中国語
著者 ヤンチャン
判型 A5判並製168ページ 2色
ISBN978-4-384-06088-1 C2087
定価1,980円 (本体 1,800円+税)
音声は無料ダウンロード・ストリーミング対応
電子書籍あり

著者プロフィール

ヤンチャン 
[本名は]楊小溪。中国四川省出身。2011年交換留学で来日、一橋大学大学院を修了。2017年から中国のSNSで日本の情報を発信し、中国人気ネット番組『東遊食記』、『和飯情報局』のレギュラーMCを担当。2019年からYouTubeヤンチャンCH/楊小溪で日本向けに中国語や中国文化などのコンテンツを配信。中国のSNSとYouTubeのフォロワーは合計30万人超、日本でも20万人を獲得し上昇中。NHK『テレビで中国語』、『漢字ふむふむ』など多数のテレビ番組にも出演。著書に『33地域の暮らしと文化が丸わかり! 中国大陸大全』(KADOKAWA)がある。


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