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苦しいセカイ

苦しい、苦しい、苦しい。息苦しい。
このところ、毎日苦しくて仕方がない。周りの友は、今日もスイスイと軽やかなのに、どうも体が重くて、同じようには動けない。黙っていても、深呼吸しても、とても苦しい。
 周りは笑顔で、スムーズで…。どうして僕だけ、ずっしり重くて、苦しくて…。

「やあピスタ。今日もひねくれているのかい?」
「うまく泳げないなんて、おかしいやつ!」
「お前の足、ニセモノだろう!形も色もおかしいし!」
 何か言い返すより前に、彼らは笑って去っていく。彼らだけじゃない。みんなそうだ、違うからって馬鹿にして。
 ああ、辛いなあ、どうして僕だけ違うのだろう。みんなと似ていた僕の足は、大きくなるにつれてヘロヘロと衰えてきて、なんだか妙ちくりんなものが代わりに生えてきた。
キラキラの友たち、僕だけ違う、みんなと違う。なんてったって見た目が変。ずっしりしていて、暗くって。

「あらピスタ、今日も一人?寂しいわね」
 そう話しかけてきたのは、変わり者のルナ。もっとも、僕はそう呼ぶ資格なんてないが。誰がみても、変わっているのは僕の方。
「ほっとけよ。どうせ、僕は出来損ないさ」
「あら、良いじゃない。羨ましいわ。アハハ」
 そう言って笑うルナを睨みつけ、歩く、歩く。馬鹿にしているな。水をかけない足も、光に反射しない体も、何もかも。
よろよろ進む。もう疲れた、浅海へでもいってしまおうか、怪物の棲む、ここより浅い、怖い場所。消えてしまうにもってこい。

そんな時、ふいに体に衝撃が走る。
「オマエキケン!オマエキケン!デテケ!デテケ!」
 小さな群れの縄張りだ!いつの間にか入り込んでいたらしい。群れに追われ、必死で逃げているうちに気付く。このままずっと、ずぅっといけば、浅海に行ける。ちょうどいい、いっそこのまま…。
 小さな群れを振り切って尚、走る、走る。浅海に近づくにつれ、次第に消える生物の影、増える光量、減る水位。ああこのまま、とうとう僕は。

浅海を進み、砂嵐を過ぎた先、不思議と僕は、まるでそうすることを知っていたかのように、妙ちくりんなもので一歩一歩進んでいく。
 水面へと踏み込んだ先、一面に広がる白、白、白。さらに、遠くの方には緑が広がり、世界が変わる。
 僕は空気を大きく吸い込み、また一歩進んだ。まったく新しい、未知の世界へ。妙な足で、また一歩。

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