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全く知らない困窮してるらしい人に3万円振り込んだ話

11月のとある日。Twitterで、たすけてください、というツイートがタイムラインに流れてきた。

スクロールした私の指が自然ととまり、そのツイートをタップした。フォローもされていないし、してもいない人のツイートが最近よく流れてくるようになったなあと思いつつ、助けを求めるツイートの人のプロフィールを見た。

生活が苦しい旨が書かれていて、銀行口座の番号が載っている。正直こういった方をTwitterで見るのは初めてだった。最近のツイートみると、体調がわるくて仕事にいけず、お金がなく、の繰り返しのようだった。

私は普通のサラリーマン。寄付をすることがよくある。直近でキャンプファイヤーでなにかの支援をした際のツイートが今回の助けを求めた人にいいねされたことで、AIかなにかが私のタイムラインに助けを求めるツイートを表示させたようだ。

これもなにかの縁かなと思い、振り込もうかなという考えが浮かんだ。はい、ここでもう私のことを頭のおかしい人間だと思った方いらっしゃるでしょう。わかります。
何度も言っておきますが私は普通のサラリーマン、石油王でも芸能人でもなく、一般人です。

それでも私は恵まれていると思っています。
働けていることも、満足にご飯を食べれることも、温かい布団で寝れることも、暖房がつけられることも、お風呂でも温まることができることも当たり前に感じているのは恵まれているから。今身体一つで外に放り出されたら生きていけるのかと考えたこともない。

でも、この人は本当に困っているのだろうか。
助けてといってお金をせびる、詐欺のようなものなのではないか。
だってTwitterをしているということはスマホがあるのだし、仕事だってしている。支援住宅にいるようだから野宿はしていない。恵まれているほうではないの?と疑問に思った。

関わらないほうがいいに決まっている。
面倒なことになるかもしれない。
お金を渡すことで、この人が本当の意味で助かるのかもわからない。

それでも。一人くらい、お人好しがいてもいいか。
こういう人が無敵な人と呼ばれて、世を恨んで事件を起こしたりするかもしれないなんてことも考えてしまった。
私はホームレスの人に炊き出しをしたり、直接お金をあげたり、BIG ISSUEも人の目を気にして買うこともできない、そういう人間のひとりです。

もやもや悩んだ末
嘘でもいいか、一万円振り込んだ。
手数料も合わせて10260円。
振り込んだとDMを送った。

すると、感謝の意と今の状況が長めの文章で返事がきた。出勤途中で気力がなくなり、仕事を休むことにしたとのこと。
気力がなくなり、の部分にただの怠惰ではないのか?と、思ってはいけないであろうことが頭に浮かんでしまった。今日食べるものにも困っているのに働かないでどうする、と思ったが、そう思えるのも自分が恵まれているからなのだと思う。

私は能天気に、たまにはゆっくり銭湯でも行ってゆっくりしてくださいとDMしていた。

助けを求めていた人のこと今後Aさんと呼ぶことにする。Aさんは振込の確認をしたのか、こんなに大金申し訳ありません、次の給料で返しますと謝ってきた。
いやいや、今の生活もままならないのに返す目処なんて立たないだろう。私は返さなくていいですと伝えた。そもそも人にお金を貸したら返ってこないと思っているので。

いつくかやりとりをした後、唐突にネットカフェのポスターの写真が送られてきた。一週間パック、一ヶ月パックいくらとかかれたポスターの写真。

そういうのがあるんですね〜とぼーっとした人間の私はスルーした。鈍感な私に意を決したAさんは、どうしてもネットカフェで休みたい、さらに支援してほしいと言ってきた。
私は正直ドン引きしてしまった。

え?1万円じゃ足りなかったってこと?
結構図々しいお願いじゃない???と正直思ってしまった自分がいた。生きるか死ぬかだと思って、少なくない1万円を振り込んだのに。
こうやって落ち込むこと自体が失礼なことかも。
いやいやでもさ‥‥

なんか文句の一つも言いたかったけど、悩みに悩んで2万円振り込んだ。これで最後にしよう。
やっぱり関わるんじゃなかった~。

振り込んだ後、不足分だけお願いしたつもりでした、これでは一ヶ月パックの値段に届きそうです、とAさんからDMがきた。
ネットカフェ一週間パックは16000円くらい、一ヶ月パックは40000円くらい。一ヶ月パックがよかったんだね、と思ったが私は無視した。

いいカモだな私は。
休日は散歩して近くの公園でぼーっとしているらしいAさん。そんなの脳細胞死ぬじゃんと思って、図書館を勧めた。暖かいし、無料だし。
まあ、一週間はわたしのお金でネットカフェにいれるからね、すぐには行かなくてもいいけど。

それからラジオを勧めた。ラジオを聴きながらTwitterしてると聴いてる人と同じ時間を共有できておすすめですと。実際私はラジオがすきでよく聴く。テレビよりもラジオ派。おすすめの番組を教えた。

体調わるいというAさんを励ましたり、ラジオのことをはなしたり、仕事の話などもDMでやりとりした。

そんなやりとりを一週間くらいしたときのこと。
夫が朝方いつもスマホ鳴ってるけど、と不審に思ったようで聞いてきた。私はめちゃくちゃ焦り、なんかいけないことをしていると思われているかもしれないと、取り繕えば取り繕うほど無理になり、正直に話した。

「知らない人にお金を振り込みました」
夫は冷静に、ひとつひとつ質問してから、
「働く先なんていくらでもあるし、本当に困ってる人はTwitterなんかしない、お金を振込んで痛い目にあって後悔してほしいって思う」
と言われた
いくら振込んだのか聞かれたけど、それには正直に答えられなかった
夫は正しい。やろうと思えば稼ぐ方法はいくらでもある。

自分がしたことは良くないことだったのか。
良いことをしたつもりだった。困ってる人を助けるって難しいことなんだな。

AさんとのDMを打ち切ったとき、恩を返したかったですと言われた。がんばれ馬鹿野郎。

その後Aさんの弱音ばかりのツイートを目にしたくないためミュートにし、わたしのAさんへの支援は幕を閉じた。

3万円振り込んでわかったことは、人を助ける側になるとすこし傲慢になるということ、私自身がバカであるということ。

それと、支援はちゃんとしたところにお願いしたほうが確実だ、ということ。

今月はAさんへ私としては高額の支援をしてしまったので、来年から無理のない支援を正規の団体を通じてしていきたいです。


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