とつおいつ
今年の秋は、どうやら一ヶ月ほど早く進んでいる様子で、雨も多く、その勢か朝晩などはひんやりとして、そうなると美しい奥方がそばにいる読者諸兄と違って、老骸と成り果てた私には、何だかうっすらと肌寒くもの悲しい気分。
すると、我が荒ら屋(あばらや)の隙間を抜ける冷気に触発刺激されたのか、私の汚れた脳も些少ではあるが活性化されてきて、駄文などひとつふたつと書いてみたくなってくるから秋って不思議。
振り返れば、どうも夏は、いけない。良くない。
夏は、暑さと開放感の相乗で、すべての臓物を外へ志向させ、脳細胞ふくめ、体のパーツ一切が弛緩してしまう。冬の間、日常の何気ない些細な出来事にも一つ一つ反応していた私の「自意識」と言ったものが、夏の猥褻な熱風に紛れて、雲表まで昇り昇華してしまう。溶けてしまうのだ。
もしかしたら薄い服から下着を透かせて、生と性のエネルギーを横溢させながら、町一杯に闊歩する女たちが、とてもいけないのかもしれない。くらくらと目眩がする。薄着の女は危険なのだ、男子のみんな!気を付けろ。オフショルダーもだぞ。
でもこうして九月も末となり、寒い季節が近づいて、そっとパソコンを開き一太郎とnoteに向かうと、ぽつりぽつりと何かしらを書いてみたくなるのも乙女心。そうして一太郎の白紙画面の前で私は手を合わせる。お経のかわりにお祈りだ。
「願わくはこの凡人の頭に、梶井基次郎のごとく、自らの心象風景を細密に描写する能力と、太宰治のごとく、生きる事への贖罪を浪々と書きながらも、悩み苦しみ生きる事の賛歌を逆説的に教えている、この不思議な能力を与えたまえ。なーむー」なんのこっちゃ?
さて閑話休題
読者諸兄は、大概がというより必ずや朝の時間帯、テレビを見ますよね。テレビをほとんどみないのが自慢の私だけれど、それでも、朝は、見ます。というか、妻が点ける。私が消すと激しく怒る。
そんな中で、私は最近、テレビ朝日「グッドモーニング」6時45分ころかな?林修先生の「ことば検定」を唯一おもしろく見ていますね。
同時間帯「NHKのおはビズ見てます」というあなたがいるとしたら、これは脱帽。すんません。
新井恵理那アナウンサーが少し体を横にしてから自慢のえくぼをへこませつつ「テレビのリモコンのdボタンを押して参加して下さい」というこのフレーズに、おじさん、年甲斐もなく「きゅーーん」としてしまう、まさに毎朝のルーティーンですね。毎朝きゅーんとするので心臓によくない。
今朝のお題は「馬脚をあらわす(露わす)」でした。隠していた事がばれる、正体を見破られてしまう、という意味で使われているそうです。
なるほど、と感心しつつもコーナーのあとゴン中山にコメントを振ったらば、人が馬を演じる際、二人一組でする事を指して、「後ろの人は足を合わせるのに大変でしょうね」と返していました。
僕は思わず、おい、ゴン、そこは違うでしょ。
「馬脚をあらわではなくて新井アナの美脚をあらわすにしてほしい」と返さなきゃ!カメラさんと打ち合わせておいて新井アナのお姿をパンするくらいあっても良いじゃないか。ちっ!
ここでこの私、ちくわ会長の稚拙な語彙辞書を開陳すれば「青菜に塩」つまり、がっくりとしょげてしまったという、今朝の一時(いっとき)でした。
閑話休題の閑話休題
さて私といったら日常的に複数冊の本を同時読みしていて、なおかつメモしながら読んでいくので、結果として読書の速度は限りなく遅いんですが、
夏前から読んでいる八原博道「沖縄決戦」が、それでもいよいよ終盤に入ってきました。
読後感はまた後ほどとして、この日本陸軍大佐の八原博道(沖縄守備第32軍高級参謀)たる男、この人の「語彙」の広さ?量?語彙力?に圧倒され続けています。並の作家の追随を許さない言葉の深さに、私ときたらこの好機を逃すまいと、日々、必死に電子辞書片手に、ノートに書き写しながら、舐めるように、読み進めているところです。八原大佐の文章を読んだ後、こうして自分の言葉でnoteに書くのがなんだか恥ずかしくなってくるくらい、この本は不思議な威圧感を持っています。
この「沖縄決戦」、難解な漢字熟語も沢山詰め込まれている本なのですが、それは一旦置いて、やさしい語句でそれでもためになる、八原大佐受け売りの、ちくわ会長「ことば検定」をご披露しましょう。
おさおさ (あとに打ち消しの語をともなって、ほとんど、まったく)
愁眉を開く (心配ごとがなくなって安心する)
毫も (下に打ち消しの言葉をともなって、打ち消しを強調する気持ちをあらわす、わずかも、すこしも)
とつとつ (くちごもりながら話すさま)
口さがない (他人のことをあれこれくちうるさく批評するのが好きである、くちうるさい)
水火 (洪水と火災、そのように勢いのはげしいもの)
閲する (けみする、よく調べる、年月が経過する)
岳父 (妻の父、しゅうと)
長大息 (ながいため息をつくこと)
宜 (むべ、むべなるかな、なるほど当然だ、と得心したりするありさま、ほんとうに、もっともなこと)
最後に、極めつけ、こんなのはどうでしょう
とつおいつ (あれこれ思い迷って決心のつかない様)
とつおいつ、使わないよねえ。八原高級参謀殿、素晴らしい語彙力です。敬礼!で、上に列挙した美しい言葉をnote記事に使おうか使うまいかとつおいつと悩める、最近のちくわ会長は、いかが?