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【交通事故】「脳外傷による高次脳機能障害」の等級認定

  先日、日弁連交通事故相談センターの高次脳機能障害相談研修会を受講しました。

 せっかくなので、「脳外傷による高次脳機能障害」に関する自賠責等級認定について私が理解しているところの概略を記します(誤解もあるかもしれませんが、支障がある程の誤解ではないはず。)。

1 「脳外傷による高次脳機能障害」のイメージ

 「「脳外傷による高次脳機能障害事案」の相談における留意点」という文献では、「脳外傷による高次脳機能障害事案」の定義について

事故により脳外傷(脳損傷)が発生した被害者について、その回復過程において生じる認知障害人格変化等の症状が、外傷の治療後も残存し、就労や生活が制限され、時には社会復帰が困難になる障害を総称するもの

としています。

 医学界で考えられている「高次脳機能障害」とは若干範囲が異なるようであるため、区別するために「脳外傷による」という枕詞が付いています。

 「脳外傷による高次脳機能障害事案」は、次のような症状が特徴とされています。

 ⑴ 知的障害(認知障害)

 例:新しいことを覚えられない、気が散りやすい、行動を計画して実行することができない、複数のことを同時に処理できない など。

 ⑵ 性格・人格変化(情動障害)

 例:自発性低下、気力の低下、衝動性、易怒性、自己中心性、反社会的な行動をする など。

2 自賠責において脳外傷による高次脳機能障害事案と取り扱われるための条件

 交通事故に遭い、後遺障害が残った場合、自賠責保険に対して後遺障害等級の認定をするよう求めていくこととなります。

 自賠責保険において、残存した症状が「脳外傷による高次脳機能障害」によるものとして判断してもらうためには、大前提として、脳の器質的損傷が有る、と判断されなければなりません。
※器質的損傷:交通事故では、外傷性の変化が認められる状態というイメージでとらえています(私は)。

 脳の器質的損傷が有るか否かの判断に際しては、次の3つのポイントが検討されています

 ⑴ 意識障害の有無とその程度

 基準として

当初の意識障害(半昏睡~昏睡で開眼・応答しない状態:JCSが3~2桁、GCSが12点以下)が6時間以上続いている

当初の健忘あるいは軽度意識障害(JCSが1桁、GCSが13~14点)が1週間以上続いている

というものがあります。

 ⑵ 画像所見

 CTやMRIの画像が重視されています。

 さらに述べると、次のような画像も有用とされています。

・脳挫傷は脳表に多いので、T2協調画像の中でも特にFLAIRがあると良い

・MRI画像は、横断像のみでなく冠状断像も撮影すべき(素人表現で恐縮ですが縦スライスです。)。

 ∵頭蓋底部の箇所の外傷については、FLAIRの冠状断の方が良くわかる。

発症直後の微細な脳挫傷を見つけるには、拡張強調画像(DWI)が有用。

微小な出血を見つけるには、T2スター強調画像(T2*)磁化率強調画像(SWI)が良い。

 ⑶ 特徴的な精神症状の発生

 判断するための資料としては、

神経系統の障害に関する医学的意見

日常生活状況報告

・WAISなどの神経心理学的検査

が用いられています。

3 後遺障害等級認定基準

 脳の器質的損傷が有る、と認められると、等級認定の判断が行われます。

 脳外傷による高次脳機能障害では、1級から9級の後遺障害等級が存在します(脳損傷は認められるが、就労や生活に影響がない場合には12級とされることもあります。)。

 自賠責保険では、次のリンクで触れられているような基本的な考え方に基づいて等級認定がなされています。

 ですので、これらの基準に当てはまることを示すに足りる資料をしっかり集めることが重要となります。

 また、自賠責保険における後遺障害等級認定は、原則として労災保険における障害等級認定基準に準じて行われています。

 労災の認定基準は、次のリンクで記載されている4つの能力が、どの程度失われているかを評価し、等級格付けを行うとされています。

 交通事故により高次脳機能障害が残存したとして訴訟をする場合、補足的にこの労災保険の認定基準に当てはめて主張をしていくことも有用とのことです。


 「脳外傷による高次脳機能障害」に関する事案はかなり専門的な問題であり、賠償交渉を行っていると、多くの事案において、ここに記載した以外にも様々なことが問題になります。
 このような問題で悩まれている方は、弁護士に相談することをお勧めいたします。

 もし私にご相談いただけるようであれば、下記リンクを通じてご連絡ください。オンラインでのご相談も承っております。


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