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ちょっと地方債の話でも

 私は、役場時代に”財政”という部署も経験する事ができました。

 3年近く財政担当していました。私の町では係長1人と担当者2人の3人体制でした。担当者2人で普通交付税と特別交付税とか、地方債の種類によって仕事を分担したりしていましたが、結局忙しい時などはみんなでやるので、主で担当していない仕事の方も、理解しないと仕事にならないそういう部署でした。それと、私の町では珍しく、その担当の間に10日間の地方財政についての研修を受けさせてもらう事もできました。

 おかげで、地方公務員経験者の中でも自治体財政については、詳しい方だと思います。それでも、まだまだ不十分なところもあります。それぐらい自治体財政って複雑で緻密に法律・制度が作られています。

 それだけに、たぶん、どこの市町村も財政係長とか、その上の管理職になるような人って、財政担当して長い人が多いんじゃないでしょうか。そういう人が居ないとできない、役場の中でも特殊で、役場全体の予算を扱うので、理事者との距離も近くなる担当部署なのかと思います。

 

 なので、元役場職員だからといって誰でもできない地方債の話です。地方債って地方自治体が新たにする借金の事です。過疎自治体の平均で歳入(収入)全体の10%近くが、新たな借金に頼っています。また今回はあまり触れませんが、地方交付税という歳入が40%くらいで、地方債と地方交付税が歳入の約半分を占めています。

 歳出(支出)側の、借金を返済していく経費の事を公債費と言いますが、これも10%くらいとなっています。

参考資料 https://www.soumu.go.jp/main_content/000569949.pdf

 過疎関係自治体では、歳入歳出の10%を占める借金の額、この将来負担がどうなのかっていうのが、住民が気になるところだと思います。財政を担当したことのない、多くの役場職員も、気になって公表されている自分の自治体のデータとか見るけど、よくわからない類のものかと思います。

 結論から言うと、どこの自治体もそんなに心配することはないと思います。

 過疎自治体が借金するためには、法律・制度で国が管理できるようになっています。例えば、過疎対策事業債(過疎債)って言われる地方債も、1つの自治体で借金できる額が、ほぼコントロールされています。

 なぜなら、公債費のほとんどを地方交付税という国の財源から負担(交付税措置)するからです。

 国からすると、際限なく地方債発行されたら、後々とんでもないことになります。

 だから、何でもかんでも借金させません。

 借り先の金融機関も、償還年数も、利率もほぼほぼ国がある程度コントロールできるようになっています。

 過疎債のように、近年はどこの自治体も、交付税措置率の高い地方債しか借りてないんじゃないでしょうか。皆さんの自治体の借金が不安であれば、現在借り入れしている地方債の種類と、その交付税措置率まで調べてみてください。

 自治体によってはわかりやすく公表しているところもあります。

 もう一つ、地方債を調べると、臨時財政対策債という借金を毎年している自治体が多いと思います。

 この臨時財政対策債の話をすると、交付税制度の話をしなくてはいけなくなり、話がより難しくなるんですが、とりあえず、この臨時財政対策債は何と!交付税措置率100%です。

 なので、公債費と地方債の額が毎年同じくらいで、自治体の借金の負担が全然改善されていないように見えても、実は公債費のほとんどが、国からの交付税で賄われています。

 将来公債費が嵩んできて自治体財政が危なくなることは、ほぼほぼないかなと思います。ほとんどの自治体よりも国の財政の方が心配です。

 自治体は借金まで国に管理されていて、予算に自由がなく地域独自の政策などをやっていくのが難しいと思われる方もいるとは思います。

 でも、各自治体が独自の裁量で、それぞれ地方債発行するなら(できなくはないですが、ほとんどの自治体はやっていません)、各自治体に借り入れのスペシャリスト養成しないといけません。

 公務員は、自分の生活で借金(ローン)組むとしても、家か車ぐらいだと思います。金融機関もたぶん、労金がほとんどで、後は信金とかに家族や親しい人がいてとかって場合もあるかもしれませんが、金融商品比較してどれが有利かとか、しっかり調べて考えて借金したことある公務員って少ないんじゃないでしょうか。考えたことがあったとしても、給与は安定的に入ってくるという神話の基に借りるので、返済の心配とかもそんなにしてないでしょう。

 そんな公務員ですから、借り入れするのに、相当な勉強しないといけません。金融機関と交渉事にもなります。当然、借り換えもありえるので、常に金融情報を入れ続けていないといけません。タイミング逃すと、地域に損失を与えます。額が億を超えると、低金利だってバカになりません。

 国の交付税制度に紐付けされた地方債だけ発行していれば、借り先は政府系金融機関のみです。利率も償還年数もほぼ決められているので、示されたとおりに借受していれば、翌年からの償還も困る事はありません。利率変動だとしても、交付税もそれに合わせて交付されるので、金利情報を常に情報収集しておく必要もありません。

 これらの仕事を、国家レベルでまとめてやってくれていると考えれば、非常に合理的です。おかげで、私みたいに、簿記も知らない、経済学も知らない、自分で借金したこともなかった地方公務員でも、財政の仕事、何とかできました。

 地方債のこと、市町村、特に小規模市町村レベルで深く考えるのやめましょう。地方自治体の財政・経済力にあった地方債借りることができるように、国家レベルでしっかり考えてくれています。自治体の財政担当者は、その中で最大限できることをやってくれているはずです。

 仮に市町村独自に、地銀と組んで地方債借りて、独自事業に取り組みます!って辞めましょう。交付税措置される地方債よりも有利に地銀から借りるのは不可能です。逆に地方債借りるのやめよう!とか極端なこと考えるのもやめましょう。政府系金融機関も、その運用益などが、政府系金融機関の運営資金になったり、国の財政にも影響出るかもしれません。

 

 問題・課題があるとすれば、地方債を借りられてしまうから、新しいハード事業ができてしまうところだと思います。

 新しい施設建てたら(改修工事だとしても)、その施設の維持管理費、これは自治体の予算・決算にも数字が出てきてわかりやすいですが、維持管理していくための予算も契約も検収も役場の仕事。料金などが適正なのか、利用率がどれくらいなのか、利用促進を図っていくのかなどなど、施設1つ増えると役場の仕事も増えます。こっちは、償還が終わっても、掛かり続ける経費です。財政破綻しそうな自治体は、公債費よりも施設の維持管理費が理由として大きいんじゃないでしょうか。

 地方債のことは、地域住民はそれほど気にしないで、優秀な国家公務員と善良な市町村職員に委ねておいていいんじゃないのって話でした。

↓こちらに、自治体財政、少し良くなる方法提言させてもらっています。

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