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とにかく箱推ししたい二ツ目さん5人の会|五十歩百歩(第7回)

第七回 五十歩百歩の会

謝罪会見(一刀&朝之助、司会市若)
柳家圭花   ぞろぞろ
柳家小はぜ  茶代
春風亭朝之助 唖の釣り
〜仲入り
柳亭市若   魚屋の五郎 / 発酵問答(三題噺)
春風一刀   聖職者

20220820
棕櫚亭


二ツ目さんの会にお邪魔するようになってほんの1年半ほどのニワカだが、すでに、わたしのなかの二大巨頭「雲助ボロ市」「白酒ひとり」に優先度が並ぶ会がある。それが「五十歩百歩」。
もう、大好きなんである。隔月と言わず、毎月やってほしい。

読売ランド前駅というのに、およそ「よみうりランド」の気配を感じない小田急線の各停の駅。
その駅を降り、なぞの小さな橋を渡った先にあるのが、「五十歩百歩」の会場「棕櫚亭」。平屋の小さな建物である。

駅から徒歩1分かからない。こんなに駅近なのに、なぞの橋のせいか、ちょっと日常から隔離された感じがあって、それがまた、いい。

メンバーは、
・春風亭朝之助
・柳家圭花
・柳家小はぜ
・春風一刀
・柳亭市若
の5人(敬称略)。

もともと、小田急沿線に住んでいる二ツ目さん4人が「向が丘落語会」というものを開催していて、それに市若さんが加入してこの会になった、らしい。
今の会場も市若さんが見つけてくれたとのこと。それゆえか、市若さんはいつもスタッフさんのような顔して、会場を整備していらっしゃる。かわいい。

棕櫚亭さんの雰囲気もあるのか、なんだか会自体が箱庭っぽいのだ。
メンバーの皆さんの持ち味もそれぞれに、程よい距離感を感じさせつつ、でも各々補い合っている感じがして、いい。
とにかく5人集まると、なんか知らんがかわいい。目上の方々(たぶん)に大変失礼な話なのだが、ちょっと、どうしたってかわいい。

肝心の落語も、全体を通してバランスがいいなと思う。古典担当の朝之助さん、圭花さん、小はぜさんに、三題噺という離れ業を使う市若さん、ときどきフラっと新作を演る一刀さん。
いつもその組み合わせとは限らないけど、今日はどうなるのかな?というわくわく感があって、それも楽しいのだ。

しかし、わたしが目撃した限りでは、トリは大体朝之助さんが押し付けられ 担当し、たまに弟弟子の一刀さんがやっているのみである。毎回順番はその日に楽屋で決めているそうなのだが、意思決定のシステムはなぞである。
ブラックボックスかわいい。

というわけで、第7回。わたしにとってはまだ5回目の第7回。

冒頭、例の如くスタッフ顔をした市若さんがひとりで登場したので、今日は全員でのトークはなしで、三題噺のお題募集かな?と思ったら、突然、「謝罪会見を行います」とのこと。
後ろから、ズボンにシャツをインした朝之助さんと一刀さんが登場するw

どうやら、前回一刀さんが急遽ケガで休演してしまったことの謝罪らしい。
一般社会に身を置くわたしからすれば、ケガなら無理して来ないで、まずはちゃんと治したらいいじゃないという感じなのだが(ましてや演者さんたちが自ら運営している勉強会だし)、噺家さんの(というか小はぜさんの?)了見ではそうもいかないらしい。

まずは誠意をカタチで表すようにと、ズボンにシャツをインするように指示があったそうで、その時点でもうだいぶ方向がおかしいw 
こう書くと、一見ウケを狙っているようなのだが、いやいやいや。背後であやつる(?)小はぜさんからは、至極大マジな雰囲気が漂ってくる。
でもたぶん、前に出ている3人は、なぜこんな事態になっているのか、今ひとつわかっていない感じがする。
ダメだ、温度差かわいいwww

とりあえず、何ひとつ非がないのに、当たり前のように表に引っ張り出されて、一緒に責任を取らされている朝之助さんがかわいそうで、大爆笑してしまった。

全然反省しているようには見えない一刀さん(たぶんご本人のなかではちゃんと申し訳ないと思ってらっしゃる)と、「無関係です」ばりに気配を消す市若さんも可笑しい。

絶対にそんなはずはないんだけど、もはや前回の一刀さんの休演から、壮大な仕込みだったんじゃないかと思えてくるくらい、オープニングとしての出来がよかった。あのコーナー、忘れた頃にまたやってほしいw

その後に上がったのは圭花さん。
謝罪会見に関しては、市若さん以上に無関係感を醸し出していらしたのが、じわじわ可笑しい。落語協会の新真打お披露目興行のお話と、師匠の花緑師匠が実行委員長を務める謝楽祭の宣伝をなさって、満足げ。
まくらではよくしれっと宣伝を入れていらっしゃる気がするので、個人的に花緑事務所の方とお呼びしたい(やめなさい)。

圭花さんは、何気に自由人のにおい……というか、やさしげな顔つきでズバッと誰よりも核心をついてくる感じがする。わたしにとっては、この5人のなかで一番未知数なお方である。

以前、中程の出番の折に何食わぬ顔で長講をかけてくださった気がするのだけど、この日は一番手で「ぞろぞろ」を。いいな、圭花さんの滑稽話もっと聴いてみたいな。



続いて小はぜさんの「茶代」。この噺、また聴きたいと思っていたので嬉しい。小はぜさんの田舎者、好きなんだよね。旦那のむっつり助平感も可笑しい。

まくらでの謝罪に関する持論の展開も面白かった。野球部出身かな?(※適当言ってます)
──いや、こんなふうに茶化しているのがバレたら、わたしも怒られてしまうかもしれない……。でも、噺のなかにしろ、まくらにしろ、怒ってる小はぜさんって、なんかちょっと突っつきたい気持ちにさせません?(やめなさい)

目に見える形で誠意をという話、じゃっかん昭和のかほりが漂ってくるとはいえ大筋同意できそうなのだけど、いかんせん、シャツインのふたりが絵として強すぎて。
あれは、だいぶズルいw 小はぜさんからすればきっと大真面目な発案なんだから、もうほんとズルいと思うw



この日は反省の証として一刀さんがトリで、いつもトリの朝之助さんは仲入り前に。

楽屋では圭花さんから「地味なの続いちゃったんで、後はよろしく」的なことを言われたそうな。圭花さんw ──というか、朝之助さんの包容力もあるんだろうな。みんなのお兄ちゃん感。
五十歩百歩の言いようもないかわいらしさは、朝之助さんというお兄ちゃんの存在によって醸し出されているのかもしれない。と、外野は勝手に想像するのであった。

朝之助さん、まくらでお子さんの話をしてくださることがあり、それも地味に楽しみにしている。というのも、どうもまだ小さい子っぽいんだけど、落語に出てくる金坊とか小僧さんの感じでなく、こう、存在感も声も太い感じで。たまにドゥンって幼いながらに泰然としたお子さんいるけど、ああいう感じなのかな、かわいいな?

一朝師匠で何度か拝見したことのある「唖の釣り」。一朝ご一門のお弟子さんって、随所に一朝師匠イズムのようなものを感じさせるのが凄いなぁなどと思っている(とはいえまだそんなに回数を重ねて拝見していないのだが)。
役人に詰め寄られて、俯き加減で応対するところ、朝之助さんのお顔の彫りが深いからなのか、表情にだいぶ凄みが出ているように見えて可笑しかった。わたしが役人だったら、深入りしたらヤバいって思ってしまいそうだw

さて仲入り後。
前回から、市若さんの出番では、三題噺で作ったお題を磨いて次の会で再演するというシステムが導入されました(これまた小はぜさんの指示である。裏ボスかw)。
新作→再演→新作と交代でやるのかと思っていたんだけど、1回に再演+新しい三題噺も演ってくれるシステムだったみたい。これは、かなり大変なのでは。。

先に今回の新しい三題噺、トリプルプレー、五円玉、スマホのお題で「魚屋の五郎」。
電気うなぎと水の場面、五郎さんだけが最後に立っているディストピアを瞬間想像してしまったので、いつか市若さんでそういうブラックな噺も聞いてみたいと思った。でもブラックユーモアはなんだか加減が難しそうだな、とも思う。

前回の三題噺「発酵問答」。小ゑん師匠にも相談して推敲したとのこと。結果、三題のうち「梅雨の空」と「キャンプ」の二題が消えた(!)

わたし、梅雨のキャンプにおにぎりを持ってきて腐っちゃった展開、秀逸で好きだったんだけどなあ。あと、キャンプの大自然のなかで、手の中のおにぎりに小宇宙を見つけちゃうという、顕微鏡を覗きこむみたいな、風景の倍率の差も好きだったの。だから設定が変わってしまって、ちょみっと残念。

でもなるほど、新作落語をつくるときは色々要素を詰め込みすぎちゃダメなのねー……。でもでも、好きだったのよー。。

↑前回の感想(正しくは菌類じゃなくて微生物だそうです)

と、個人的には少しかなしい展開もあったのだけど、全体として擬人化は大好きだし、市若さんの得意分野を生かしたネタということもあって、楽しそうに演られているのが印象的だった。
酵母菌と乳酸菌の新婚いちゃいちゃとか、酢酸菌の悪女っぷりとか、詳しい方でないとまずできない発想。

生物なんて高校の授業っきり●年も遠ざかっているド文系人間としては、楽しくって勉強にもなる(但しすぐ忘れる)。市若さんには、ぜひ、楽しく学べる(微)生物シリーズを創作していただきたい!

宣言通り、この日は一刀さんがトリ。新作で「聖職者」なるネタを。やった、一刀さんの新作、わくわくする!
一刀さんのつくる、ひたすらウダウダ会話している噺って、なにゆえこんなにじわじわくるんだろう。この面白さ、一刀さんが演るからこそなんだろうな。

固有名詞も多めなんだけど、乳酸菌飲料3種のうち「ピルクル」くらいしか知らないわたしでも、なんだかんだで言わんとしていることがわかるの、すごくない? 素材選びが秀逸すぎると思うw

あと喋り方が若干ヤカラっぽい(?)のに、セリフ選びの随所にゆとり世代らしい大らかさ(?)を感じさせるのも、なんかいいなと思っている。「ああ、いいよ、気にすんなよ」でもあり「(どうでも)いいよ」でもある感じ。ごめん、自分で言っててよくわかってない。ニュアンスです。

楽しかったな〜と思い返しながら感想を書いていたら、あっという間に4,000字を超えてしまった。「メモログ」にあるまじき事態である。いや、よくやらかしてるけど。

今回のオープニングにまつわるエピソードを拾い集めると、5人の個性がすごく出ているような気がして、本当にこの5人さんはかわいいなあ、おかしな5人組だなあ、と思ったのであった。

それもこれも、変に狙ったり作ったりしていないからなんだろうな。自然体で、かつ、全員が絶妙に噛み合っていない感じがするのに、ちゃんとまとまってる。最高(かわいい)。

次は12月とのこと。……ちょっと!隔月ですらなくなってるじゃないか……!焦らしプレイ(※違います)、つらい!!!叶うことなら、次もぜひまたお邪魔したいと思います(ので、どうか早めにスケジュールください…)(と、そっとネットという名の虚無に話しかける…)。

それにしても、note書き始めてから、こんなに「かわいい」連呼したのはじめてだわ。

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