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好きな子の部屋で放尿した話

こんにちは。
実家が全焼したサノと申します。

大学生の頃、僕は幼馴染から
こんなことを相談されました。

「最近好きな子ができたんやけど、
その子の家に行くことになってん。
でも2人で遊ぶと緊張するから、
サノもついて来て欲しい。」

家に呼ばれるくらい好印象なら
よっぽど変なことをしない限り
2人で遊んでもうまくいくと思いましたが、
幼馴染はかなり奥手な性格なので、
僕は了承し、ついていくことにしました。

当日、幼馴染と先に
待ち合わせして作戦会議をおこないました。

今回の目的は、
ゴールを決めに行くのではなく、
楽しい時間を過ごして次に繋げること。
そして僕の役回りは、会話を拾って
盛り上げることでした。

それぞれの役回りを確認した後、
幼馴染に案内され、いよいよ
彼女の家に到着しました。

出迎えてくれた彼女は、
おのののかさんに似た
とても可愛らしい方でした。

簡単に自己紹介を済ませた後、
僕は黒子に徹して
2人の出会ったきっかけや、
それぞれの趣味などについて聞きました。

話は弾み、幼馴染も彼女も
かなり打ち解けている様子でした。

彼女はファッションやインテリアに
興味があると言っていて、
確かに部屋がとてもオシャレでした。

彼女は、

「これが私の1番お気に入りのバッグ!」

と僕たちにバッグを紹介してくれる程に
上機嫌になっていました。

ただ、緊張していたからか、
幼馴染がハイペースでお酒を
飲んでいたことだけが少し心配でした。

それでも2人ともとても楽しんでいたし、
幼馴染の役に立てて良かったな、
と僕は胸を撫で下ろしました。

その後もしばらく話したり、
彼女の家にあったゲームをしたりして
遊んでいましたが、
お酒が進んだせいなのか、
彼女は眠ってしまいました。

そろそろお開きにしよう、と
僕が幼馴染に告げると、幼馴染は

「そうやな…片付けて帰ろう。
先にトイレしてくるわ。」

と言いました。

当然トイレに行くのだと思い、
僕が部屋のゴミを片付けていると、突然

ボジョジョジョジョジョ!!

という大きな音が部屋中に響き渡りました。

驚いて振り返ると、幼馴染が、
彼女の1番お気に入りだと言っていた
カバンの中で放尿していました。

もうわけがわからなさすぎて、
僕は幼馴染がおしっこを終えるまで、
何も言えず立ち尽くしてしまいました。

そしておしっこの音が止まった後、
振り絞るように聞きました。

「…どういうこと?」

幼馴染は何も答えず、黙々と部屋を片付け、
バッグも元のクローゼットに戻し、
そして彼女に何事も無かったように
挨拶を済ませた後、家を出ました。

僕は幼馴染と20年近く一緒に
過ごしたにも関わらず、
サイコパスだと見抜けなかった
自分の愚かさを呪いました。

そして隣にいる幼馴染が、
怖くて仕方がありませんでした。

帰り道、僕は改めて聞きました。

「あの、どういうことなん?」

幼馴染は開き直ったような答えました。

「何がやねん」

ただただ、怖かったです。

好きな子のバッグに
放尿することに理由などない、
と言いたいのでしょうか。

でも、やはり引き下がれません。

「いや、だってバッグの中に
おしっこする人初めて見たから…」

幼馴染の瞳孔が開くのが見えました。
しつこく聞いたせいで、
怒らせてしまったのだと思いました。

すると幼馴染は

「あの、どういうこと?」

と言い、みるみる顔が青ざめていきました。

どうやら幼馴染は、
緊張していつもより飲みすぎたせいで、
完全に記憶を失っていたようでした。

トイレに行ったつもりが、
部屋の中で、しかもお気に入りバッグの中で
放尿してしまっていたのです。

幼馴染はしゃがみこんで

うわーーーーーー!!!

と叫びました。

正気に戻った後の情報量が多すぎて
自我が壊れてしまったようでした。

忘れ物を取りに行くと彼女に連絡し、
幼馴染と僕は急いで家に戻りました。

バッグの中身を確認すると、
やはり尿がしっかりと入っていました。

幼馴染はまたしゃがみこんで

コウモリしか聞こえないような音域の
叫び声をあげていました。

彼女に放尿したことがバレないように
幼馴染は

「ちょっとバッグ汚しちゃったから
クリーニングして返すわ」

と言い、バッグを半ば強奪するように
持ち去りました。

結局、2人の恋愛は
うまくいかなかったと後で聞きました。

冒頭で

「家に呼ばれるくらい好印象なら
よっぽど変なことをしない限り
2人で遊んでもうまくいくと思う」

と言いましたが、やはり
よっぽど変なことしたら
ダメなんだなと学びました。

いただいたお金は、切ないことに使います。