中国文学・演劇との関わり その1ーー中国への出立 (奥田)
こんにちは。
三人之会主宰の奥田です。
今日は私と中国文学、演劇の関わりについてお話ししてみようと思います。
初めて中国文学を読んだのは小学1年か2年頃でした。小学校に置いてあった「三国志」にハマり、一時期は絵本、小説、伝記と様々な「三国志」を読み漁りました。
同じ頃、無料で開催されていた中国語教室に通い始め、字幕付きで中国ドラマを見るようにも。まず見たのは1996年に制作されたCCTVの「三国志」。そのスケール感、ロケ地の広大さ、動員された人数の膨大さは今見ても圧倒されるものがあります。その後も「大明王朝」「孫子兵法三十六計」「铁齿铜牙纪晓岚」「雍正王朝」など、中国語で「老戏骨」と呼ばれるベテラン俳優が多く出演しているものを見るようになりました。普通、時代劇の見どころの一つは戦争シーンなのですが、「大明王朝」、「「雍正王朝」の二つは大きな合戦シーンがなく、ほとんどのシーンが会話で進行していきます。
私の演出では、俳優の身体以外に、音楽・美術・映像といった様々なメディアを使用しますが、台本には詩ではなく台詞で書かれた戯曲を選びます。「台詞」への憧れが、私の演出、演劇観の根幹になっています。
さて、そんな中国ドラマ好きが高じて、大学では中国文学科を専攻したかったのですが、教職が取りやすいという両親の意向で国文学科を受けることに。ちょうど大学生の頃地元の演劇サークルに参加するようになったのですが、そこは「リアリズム」と呼ばれる明瞭なセリフ、リアルな演技を目指しており、いろいろあって(割愛)演出を志すことになりました。
セリフを聞いたり読んだりするのが何よりも好きだったのに、なぜそれを自分で発することを諦めたかはまたの機会に置いておき、演出をしっかり学びたい私は、中国の演劇学校に留学することを考えました。
もともと中国ドラマが好きだったので、そこに登場する俳優たちがどのような訓練を受けていたかも調べるようになったのですが、その際いつも目にするのが、中央戯劇学院という学校です。
この学校は三人之会で上演する『逃亡』の原文にも登場しますが、北京の東城区に位置しており、天安門や故宫、什刹海といった北京の中心地にも近く、(現在は機能の多くを昌平区という郊外に移転しています)、文字通り中国を代表する、国立の演劇学校(大学)です。学部、大学院(修士から博士)があり、演技専攻・演出専攻・舞台美術専攻・舞踊専攻といった多くの領域に分かれています。日本でもよく知られている中国の俳優の多くが、この学校の出身です。
2018年春、期待に胸を膨らませながら北京での留学生活を始めたのですが、そこから私の演劇観は大きな大きな変転を遂げることに…
私が2019年から通い始めた日本の養成所 劇場創造アカデミーは、「アングラ世代」と呼ばれる演出家たちがカリキュラムを組んでおり、私が大学生の頃、そして中央戯劇学院で学んでいた「リアリズム」とは大きく異なる演劇論のもと指導を行っていました。
いわば水と油。
それに、もともと私は中国の話劇と呼ばれるリアルな会話を重視する演劇を好んでいたのですが、今回三人之会で上演する「逃亡」の作者、高行健は話劇とは正反対の演劇観を持つ作家です。話劇の革命者と呼んでいいでしょう。
リアリズムの重視から、実験・前衛・アンダーグラウンドへと、いわば大きく「転向」したわけですが、なぜこうなったかはまたの機会に。
三人之会 奥田
2023年8月8日脱稿
(以上の内容は、三人之会の第二回公演『逃亡』のクラファンを実施した時に書かれたものです)
(編輯 衛かもめ)
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