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子供部屋おじさんの逆襲(婚活編_2話目)

フリートークに入ると、他の人に先を越されまいと男女が獲物を狙うように押しかけていった。そんな中、私と小林さんには全く女性陣が近寄ってこなかった。

「小林さん、やっぱり子供部屋おじさん影響が出てますね、これは。」
「そうですね。でも、私は子供部屋おじさんでもなければ、年収が低すぎるわけでもないのに来ないのは何ですかね?」
「それは、単純に小林さんに魅力がないだけなんじゃないですか?」
私と小林さんは、この状況を悲観するでもなく楽しんでいた。

しかし、ずっと二人で話しているのも違うと思ってきたので、
「誰かに話しかけにいきますか。」
と小林さんに提案した。

「そうですね、佐々木さんは誰と話したいですか?」
「うーん。私は、男性を年収や仕事、外見など性格よりはステータスなどを重要視していそうな女性と話したいですね。」
「だとすると、3組目にいた女性二人組じゃないですか?」
「どの女性たちだろう?」
「えーっと、あそこにいる女性ですね。」

その意中の女性たちは、美容室経営者の太田さんと話をしていた。太田さんは、この会場の中で上位に入る高収入でありファッションセンスも高い男性だけあって、女性人気も一番のようだった。

「佐々木さん、彼女たちの名前ちゃんと覚えてます?」
小林さんが野暮な質問をしてくるので、
「当たり前じゃないですか。青山さんに加藤さんですよ。」
「流石ですね。じゃあ、行きますか。」

私と小林さんは太田さんと話をしている女性陣たちの会話が途切れるタイミングを見計らっていた。
「青山さん、加藤さん、ぜひ一緒にお話したいんですが、向こうでお話しませんか?」
子供部屋おじさんである私が声を掛けても振り向かれないと考えて、小林さんに声かけを任せた。

「えーっと、どちら様でしたっけ?」
女性二人はお互いに顔を見合わせた。
「私、小林と申します。先ほど3回目の時に自己紹介させていただいたものです。」
小林さんは丁寧な口調で会話を続け、プロフィールカードを手渡したりと思い出してもらう作業に必死になっていた。すると、このやりとりを見ていた太田さんが横から、
「子供部屋おじさんと一緒にいた方ですよ。」
と助け舟を出してきた。

その言葉を聞いた途端に二人は思い出したらしく、
「あー、思い出した。子供部屋おじさんに使う時間は持ち合わせていないので、すみません。」
と私のせいで、子供部屋おじさんではない小林さんまで子供部屋おじさんと見なされてしまった。

「佐々木さん、あの女性陣二人はダメでしたね。『子供部屋おじさんに使う時間は一秒もない』と断られてしまいました。やはり、ステータスで男を選んでいる女性に対して、私たちは相当のハンデを背負っているようですね。」
「やはりダメでしたね。じゃあ、違う女性たちにアプローチしてみますか。」

そうして、私と小林さんは二人で女性たちに声を掛けに回ったけれど、ほとんどの女性陣は私たちと会話することを断り続けられてしまった。

「小林さん、どうやらこの会場では私のような子供部屋おじさんはお呼びでなかったようです。」
「そのようですね。ここにいても時間もったいないですし、帰りますか?」
「そうですね。じゃあ、帰る前にこのパーティーの主催者に一言挨拶してから帰りますか。」

私たち二人は、近くにいたスタッフの人に責任者の方の居場所を聞きに向かった。

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