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【夏至】乃東枯(なつかれくさかるる)2022

うだるような灼熱の道を歩いて、先生のお宅へと向かう。お腹はペコペコ。「今日のお稽古はなんだろう」というよりも「今日のお昼ご飯飯はなんだろう」なんて花より団子精神丸出しで、その道を歩く。

先生のお宅に到着すると、もう一人のお弟子さんが。午前のお稽古を終えて先生とお昼ご飯を作っているところだった。

「sanmariちゃん、暑かったでしょう。今日は、天ぷらそうめんです!」

先生はお昼ご飯の用意を俄然張り切るタイプなので、茄子・海老・人参・まいたけ・さつまいも・春菊・茗荷・海老と大盤振る舞い。

わたしたちは、その傍らでいそいそとお皿を出したり揚げ終えた天ぷらたちを並べたりしながら台所中に広がるいい匂いによだれを出し、ますますの空腹感を覚えながら、そのときを待つ。

全部揚がって、そうめんも茹で終えて、いざ実食。

待っていた時間もひとしおだったので、無言で無我夢中になりながらパクパクと箸を進めていく。がしかし、天ぷらの数が多すぎていくら食べても下が見えてこない。

「残った天ぷらは、おうちに持って帰って天丼にしなさい」

そう言っていただいたので、タッパーに入れて持ち帰ってもまあまあおいしいまま食べられそうなさつまいもやまいたけを残しつつ、水分量の多いものたちはパクパクと食べ進める。

特に茗荷の天ぷらは逸品で。先生が天ぷらをあげてくださるたびに、虜になる。

先生のもとでお昼ご飯をいただくようになる前のわたしにとって、茗荷といえば、おそうめんの薬味くらいの感覚でしかなく、刻んで出てくるお料理のわき役くらいのイメージだった。でも、先生が揚げてくれる天ぷらの中では、かなりの主役級。

もともと薬味としての茗荷が好きだったわたしは、この茗荷の天ぷらの虜。ほんのり香りがあってジューシーで、でも後味はさっぱりとしている。お店でも実家でもほとんど食べてこなかったので、これはもう完全に先生の味。

毎週のようにあるお稽古は、お茶を点てに行っているのか、お昼ご飯を食べさせてもらいに行っているのか、自分でもちょっとよく分からなくなるくらいには楽しみのひとつになっていて。小さい頃からおばあちゃんっ子だったわたしにとって、東京のおばあちゃんのお家に遊びにいくような感覚で、お稽古に通っている。

転勤族育ちで、旅が好きで、全国に友達がいて。いつも「sanmariちゃんに食べさせたくて」とおいしいご飯やお菓子を用意してくれる東京のおばあちゃんがいて。どこに行っても「あぁ、帰ってきたな」と思える場所があって。どれもが愛おしいなと思いながら、また一口味わう。

窓から、灼熱のヒカリが窓に注ぐ。天ぷらとそうめんをモグモグしながら、「梅雨というよりも夏至という言葉がよく似合う1日ね」なんて言いながらぺろりと食べてしまった。

この日のお稽古は、ギヤマン(硝子)のお道具をたくさん使って、見た目で涼をとりながら。冬にひと通りお稽古を終えた飾り物のお稽古を。

硝子のお道具は、見ているだけで涼しい気持ちになれるし、水やお湯を入れるときの音も初夏の川辺のようなそれだけで心癒される。外のうだるような暑さとは対照的に、お点前はどんどん涼しさの見えるものに変わっていく。

この夏はゆっくりと過ごす事ができそうなので、小学生が夏休みに連日プールに通うように、わたしもお茶の夏期講習をしてもらおうかな……。

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