まどろみのお伴にコーヒーを|#菊地コーヒー 『深みのあるコクとバランス』 Peru
「このあと眠れなくなってしまう」
そう頭では分かっていても、ちょっぴり深めのコーヒーを舌の上で転がし味わいながらまどろむ時間は、一度味わったら忘れられないもののひとつ。肌寒い夜が続く今日この頃、本当に稀有な幸せな時間だなぁと思う。
夜ご飯が終わって、「さあ、コーヒーでも飲もうか」その一声でコーヒー豆のふわっとした香りが部屋中に充満する。コーヒー豆を、ミルで挽く香りだ。ペーパーの中でふっくらと挽いた粉が膨らんでいき、サーバーにポタポタとしずくが垂れていく。
そのひとつひとつの流れを、傍でぼんやりと眺める時間がたまらなく好きになったのは、いつのことだろう。確かそれは、飲まず嫌いをしていたブラックコーヒが飲めるようになったあのときで。
コーヒーの「味」というよりは、コーヒーを淹れるまでの「時間」に惹かれたんだろうな、なんてことをふと考える。それくらい、コーヒー豆のふわっとした香りと、コーヒーがサーバーに落ちていくのを待つ時間は時が止まったかのような静寂を生み出す。
普段補聴器をつけて意識的に「聴く」ことに力を入れすぎているからだろうか。コーヒーを淹れるこの過程をぼんやりと眺めているこの時間は、スッと肩の力が抜ける、そんなひとときなのかもしれない。
「コーヒー、入ったよ」そう声をかけられ、我に返ってコーヒーを口にする。
肌寒い冬の夜に、コーヒーのあったかさが身体中に染み渡る。とほぼ同時にちょっと身構える。
コーヒーを淹れる時間は何よりも好きなのだけれども、後味に残る酸味がちょっぴり苦手だ。だから、その後味が来る直前に、ほんのちょっぴり身構える。
でも、待てども待てども、このコーヒーからは酸味がやってこない。後味がスッと、まるで手のひらに舞い落ちてきた雪の結晶のようにすっと消えていく。
そんな馬鹿な、ともう一度コーヒーを口に含む。次は、口に含んだコーヒーを、舌の上で転がしながら。
それでも、また後味はすっと消えていってしまう。
コーヒーを「淹れる」時間だけでなくコーヒーを「味わう」時間までもが、わたしを、わたしたちを和ませ、幸せにさせるだなんて。
まだまだ肌寒さが続く日々で、またひとつ楽しみを発見してしまったのかもしれない。
明日もまた、まどろむ夜のこのひとときがやってくるのが、今から待ち遠しい。
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今回ご紹介したコーヒー
(この記事は、2021年2月10日時点の情報に基づいて執筆しています。)
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