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しんとした中で空が染まっていく時間が、好きなんだと思う。@小田原・御幸の浜
海って、夕陽を連想しがちでしょう。
でもね、ここの海は東向きだから、ベストタイムは朝なのよ。
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家のベッドで迎える朝は「あとちょっと……」と一秒でも長く布団にくるまっていたいのに、旅に出ると余裕のある朝ごはんどころか朝風呂や朝散歩に行きたくなるのは、なんでだろう。
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朝日が昇ってくるのとほぼ同時に目を覚まして、洗った顔をタオルで包み込む。いつも我が家で愛用している「イケウチオーガニック」のタオルを置いている宿はたいてい大当たりで、この日目覚めたTipy records innも、地元小田原を歩いているとみんなが「あら、Tipyさんに泊まっているのね」とニコニコしていた。
わたしはタイミングが合わなくて参加できなかったんだけれども、定期的にイベントとかも開催しているゲストハウスで、この日もみんなが楽しそうに牡蠣を食べていました。あー、わたしも食べたかったな。
とりあえずお散歩に行くだけだしと、日焼け止めをさっと塗っていざ砂浜へ。
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漁港の朝は忙しないイメージがあったけれども、小田原の朝は、静けさに包まれていて。ピリピリした空気はまったくなくて、とても歩きやすい。
商店街を抜けると、御幸の浜へとつながるトンネルが見えてきた。ちょっとずつ、ワクワクが高まっていく。
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トンネルを一歩ずつ歩いていくと、波が静かに寄せては引いて、海がキラキラと輝いていた。
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さっき歩いてきた小田原の街はもう充分明るくなっていたけれど、地平線の向こうの太陽は、まだまだ昇っている途中で。今日という一日は、これからじわじわと始まっていくんだなぁと、ただただ昇っていく太陽と打ち寄せては引いていく水面を眺めながら思う。
この海を、一人で眺めにきてよかったな、と。
誰かと一緒にお散歩をするのも好きだけれども、相手がいるとつい甘えてしまう。多分わたしは、根っからの寂しがり屋だから。「ねぇねぇ」と話して、喋って、止まらない。
だから、なんにもしないでただボーッと眺めるという時間を過ごすには、もう物理的に一人になるしかないんだろうなだと思うし、それはそれで大切な時間で。とにかく、驚くくらいに何もしないで、何も考えないで、ただボーッと過ごしてきた。
一日のうちで一番好きな時間は絶対に夕焼けの時間だと信じて疑わなかったわたしだけれども、この朝は、人生でまた過ごしたいと思う朝だった。
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それで、お昼過ぎに立ち寄った浜の近くの雑貨屋さんで「今朝、御幸の浜で過ごした時間がとても愛おしかった」という話を、柚子と果林のシロップを飲みながら店員さんにふと話したのだ。やっぱり、誰かがそこにいると話したくなってしまうのは性なんだろうね。
そしたら、彼女が教えてくれたのです。
海って、夕陽を連想しがちでしょう。
でもね、ここの海は東向きだから、ベストタイムは朝なのよ。
太陽が綺麗に昇っていくの。
と。
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そういえば、いつかの寒い日に訪れたウラジオストクの街も、朝日が綺麗な街だったということをふと思い出す。
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あの日々も、ひとりでのんびりと、ひんやりと澄み切った空気の中で、静かに朝焼けと夕焼けを眺めていた。
あぁ、もしかしたらわたしは、しんとした中で空が染まっていく時間が、たまらなく好きなのかもしれない。夕方に限らず。
異国のあの地へはもうしばらく行けそうにないけれど、だから、あの浜には行けるうちに何度もまた訪れたい。
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