コトバノチカラ⑤
スポーツにできることについて
コロナウイルスの感染拡大を受けて、Jリーグが真っ先に試合の延期を決定した。3月15日までの公式戦94試合が対象となる。英断だと思う。東日本大震災の際も、すぐにチェアマンが試合の延期を決断したことを記憶している。
東日本大震災が起こり、ボクが住む自治体にも避難所が設けられた。選手たちは開幕に向けて仕上げた体を、また作り直すことになった。トレーニングと並行して何度か避難所への慰問が行われた。
水洗トイレをバケツの水を使って流したり、段ボールだけで仕切られた空間で生活したり、と避難所の状態はコトバにできない厳しさがあった。慰問する選手もコトバを掛けようにも、どのようなコトバが適切なのか、戸惑いの様子が見られた。
当然だと思う。今までに直面したことがない光景を目にすれば、だれでもコトバにつまる。それでも必死にコトバを探し、被災された方々にコトバを掛けていた。互いに笑顔が見られる場面があった。こころがじんわりと温かくなった。
また、コトバでは伝わらない思いは、一緒にボールを蹴ることで伝えていた。狭い避難所に暮らしていた方にとっては、少しの時間でも運動できたことは小さくなかったようだ。ボールを蹴り終わった後、幾分か表情が明るくなっていた。
スポーツのチカラを信じている
スポーツにできることは少ないかもしれないけど、一時でも悲しさ、辛さ、苦しさを忘れられたのならば、それはそれですごいことだと思う。
当時のチームを率いていたのは、神戸の震災を経験された監督さんだった。被災された方の気持ちがわかるだけに、かけるコトバも心情を汲んだものだった。
「僕たちはみなさんのそばにいます。いつでも困ったことがあったら言ってください」
そばにいる。被災者の方に寄り添うコトバは、シンプルだけど心に響くものがあった。短いフレーズの中には、確かな温かさがあった。
これからコロナウイルスがどうなっていくのかは見通しが立たない。そんな中でもスポーツにできることはあると思う。接触できないだけに一緒に体を動かしたり、ともに何かをすることは難しいけど、みんなに元気な姿を届けることだけでも価値があることだと思う。
公式戦が再開したら、この重苦しい空気をぜひとも吹き飛ばすような、はつらつとしたパフォーマンスを見せてほしい。スポーツにはチカラがある。ボクは、それを信じている。
おもいのままに。続けます。今日も呼吸ができた。ありがとう!
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