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Dittoを聴いて

冒頭の透き通るような歌声が儚げに響いた時、同じく一点の曇りもないガラスのような、あの頃の心を呼び起こして大きく震わせた。

かつて目の前にあった当たり前はいつの間にか姿を消し、気づけば想像もつかなかった新しい日常に自分が組み込まれている。

そして目まぐるしい日々の中で”それ”はただの幻に変わってしまう。

DittoのPVはNewJeansのメンバーを青春の象徴として、もう二度と戻れない時をそんな気持ちで振り返るかつての少女の視点で描かれている。

でもこの曲を聴いていると不思議と、あの頃の思い出も純粋さも失われたわけじゃない、胸の奥の小さな箱に仕舞われているだけなのだと思えてくる。

教室に響くおしゃべり、ファミレスで食べたポテト、先生のモノマネ、放課後に撮ったプリクラの落書き、古典の時間に窓から差し込んだ心地よい木漏れ日、渡り廊下で感じた冬の気配

あの頃の毎日の何気ない出来事はなぜか時として、体育祭や合唱コンクールみたいなイベントごとより鮮明に思い出される。
あまりに近すぎて特別と気が付かなかったものたち。

それらをかけがえのない記憶として認識した時はじめて青春は終わりを告げ、私たちは本当に大人になってしまうのかもしれない。


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