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小1の参観日がIPPONグランプリだった話

写真で一言。真剣にやったらどうなるのか。

息子が小学校に入学して、初めての参観日は6月のことだった。

国語や算数も本格的に始まり、そろそろ園時代の自由な過ごし方ではいられなくなってきた頃。我が子がどんな様子で日々を過ごしているのか、その様子を垣間見れる日がやってきたのだ。


教室には30人ほどの子ども達。
先生はベテランの方なので、安心して息子をお任せしている。

息子は一番後ろの席だったので、その真後ろに立った。照れくさそうにこちらを見てから、頭をポリポリかいて息子も座った。

「はい!じゃあお当番さんお願いします!」という先生のかけ声で、息子と隣の席の女の子が席を立った。奇跡的に今日は息子がお当番さんだった。

2人は教卓に向かって歩いていく。


息子は上履きを片っぽ履いていない。


……は?
開始から1分で暗雲が立ち込めた。


片っぽくつ下のまま、息子と女の子は開会を宣言した。
「これから、こくごのジュギョーをはじめます!!」



息子たちが席に戻ると、私が言うより先に隣の女の子が上目遣いに「上履きくらいはきな?」と言った。かわいかった。ありがとう女子。本当ごめん。




国語のテーマはこれ。『あいうえおであそぼう』


教科書に載っているものを、先生が模造紙に白黒コピーして黒板に貼る。一通り声に出して読んでから、先生は子どもたちに問いかけた。


「さて、みなさん、何か気づいたことはありますか?」



これがIPPONグランプリの始まりの合図だった。「お題で一言」小学生バージョンだ。


次々に手をあげる子ども達を、先生が順にあてていった。


「せんせい!このおおかみ、タイヤがいっこしかない自転車にのってます!」

「一輪車っていうんだよ。他には?」

「せんせい!教科書では青いオバケなのに、黒板のは真っ黒です」

「え?どこ?」戸惑う先生。

「あー!ここね!?白黒コピーだから黒くなっちゃったね。はい、他には?」


「せんせい!ここに間があいています!」
「え?どこ?」戸惑う先生。

り と い の間

「確かにー。他には?」


「せんせい!ここにあるはずのお花がありません!」

「うん…白黒コピーだから…。黄色は写らなくなるってことに先生気がつきました。他には?」



先生が言いたいのは本文にある『あいうえお』である。あ行は全部「あ」から始まってるとか、そういうことに気がついて欲しい。だけど子どもたちは真剣に自分が気がついたことを発表しているのだ。誰か、気づいて!


「せんせい!あやとりって書いてあって、あやとりしている女の子がいます!」

「おぉ!!そうですね!『あやとり』うん!よく気がついたね!」

やっとあやとりに着目する子が現れた。
その調子!


「せんせい!この人何してるの?」

「…何してるんだろうね…?」


「せんせい!……えっと…忘れました。」

あるある。手上げたけど当てられると忘れちゃうよね。


「せんせい!ここの黄色の丸がありません!」

「うん…白黒だから…(略)」


「せんせい!」


「これ全部、 から始まってます!」

ついにきた!!先生嬉しそう。心なしか、たいこを持つ子も嬉しそう。

「そこそこ!!」


「せんせい!」

ついに息子が手をあげた。

おぉ。なんて言うんだろう。今、 について発見があったぞ!続け!

息子は教卓に向かって歩いていく。
……やっぱり上履きは片っぽ履いていない。Shit!



「ここにいたちが隠れています!」

「え?どこ?」戸惑う先生。

もはや大喜利である


「ここ!?よく見つけたね。」

先生に「よく見つけたね」と褒められ(?)、息子はこれでもかといわんばかりのドヤ顔で戻ってくる。片っぽくつ下で。


「よく見つけたね」の言葉に、他の子たちも色めきだった。

「せんせい!わたしサル見つけた!ここ!」
「ぼく川!!かわあったよ川!」
「サイいるよ!!」
「イカもある!!!」


子どもたちが口々にかくれんぼ探しを始めて勝手に発表し始めた。





「かくれんぼはもうおしまい!!!!」

その日一番の大声で先生は子どもたちを制した。



え……?だって先生が気がついたことを発表してって…よく見つけたねって…そう言ったじゃない…?みたいな顔をして先生を見つめる子どもたち。



「ほら、やとり、すとり、いうえお。ね?なんか気がついたことある人?」
先生はの部分で手を叩いた。ほとんど答え言っちゃってるね、と親たちは内心思ったとか。


「せんせい!」


きたか!


「といれ!」


トイレかぁ。



「せんせい!」


ついに気がついた!?



「ここにつりいとってあるけど、僕この前お父さんと釣りに行って、お母さんは行かなかったんだけど。お父さんとね、海に行ったの。その棒の先に?ついてたながーいのが釣り糸?だと思うんだよね。」


「ぼくも釣り行ったことある!」
「わたしもあるよ。魚が……」

今度は釣りの話をそれぞれ発表し始める子ども達。


「釣りの話はおしまい!!!!!」

先生の思いはなかなか伝わらない。

「やだもう信じられない!」って顔している親御さんもいた。気持ちは分かる。



結局先生が相当ヒントを出して、あ行は全部あ行の言葉で出来ているとか、国語っぽい答えまで持っていくことに成功したっぽかった。たぶん。


📕✏️

1年生の先生の心労がいかばかりかと心配にもなった。まだ赤ちゃんに毛がはえたくらいの、自由奔放な子ども達。


それを1人でまとめるのだ。


先生というお仕事のみなさん。
本当にいつもありがとうございます。


たまに見に行く分にはおもしろいなぁとか思っちゃいますが、いつも上履き履いてなかったら注意するの嫌になりますよね。本当すみません。なんで上履き片っぽしか履いてないのか問い詰めたいと思います。


でも子ども達の自由な答え聞けて、親としてはとっても楽しい時間でした。

大人が振り絞って考えた面白いネタも最高だけど、子どもが真剣に答える《お題で一言》は想像のななめ上の答えばかりでこれまた最高でした。


だってさ、この中にサイ🦏がいるって見つけられる大人いる?



▼エッセイ書いてます


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