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記憶の中の波間にゆれる

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くちなしの花

あ、くちなしの花のにおい、と
祖母が言った

有るのか無いのかわからないような
ほそい釣り糸のような
そんな香り

この日から
くちなしの香りは
祖母の香りになった

このまま 錦市場に行って
お魚を買って帰ろう

くちなしの花の香りは
じんわりと 汗ばんだ肌に まとわりつく

今年も 京都の夏は とてもあつい
#詩 #詩を書く#タイムラグ#ポエム

潮の香りを纏った夕方のうすい月を わたしは見ている

海なんて 全然近くないのに
どうしてだか
潮の香りがした

身体の芯の部分に
降りてきた
夕方のうすい三日月

潮の香りをまとったそれは
わたしを
幾分か 動揺させる

どこにも行ってないのに
ずっとここにいるはずなのに

わたしは
異国の空を見ている

身体の芯の部分に
降りてきた
夕方のうすい三日月を見ている
#詩 #詩を書く#詩作#ポエム

シスコの少年

芝生の庭を横切って
玄関のポーチに腰掛けた
ジーンズのすそのほつれを気にしながら

世界が
ひだまりの色に染まる時
在ることが

あなたの髪の色と
とても似ていて

僕は ちいさくため息をつく

きっとそこに在るのに
探し物がなんなのか僕は知らない

あなたは 笑うだろうか
若い僕の 憂鬱の理由

恵まれているのよ
悩みがあるなんて、と

あなたは いうだろう

世界に無関心

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