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日本産業ストレス学会シンポジウムに登壇

 2023年12月に行われた日本産業ストレス学会では、当社組織コンサルテーションチームの槇本英典、中部支社カウンセラーの夏目こころが一般演題発表を行い、米沢がシンポジウムに登壇しました。今回は米沢の発表内容をご紹介します。
 
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第31回 日本産業ストレス学会
会期:2023年12月8-9日
会場:一橋講堂(ハイブリッド開催)
テーマ:産業ストレスとキャリア、ライフの統合的視座
   ~働き方のリデザインへ向けて~
https://procomu.jp/jajsr31/index.html
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▼シンポジウム8「事例の進展に沿って多職種連携を考える(3)」
 一つの事例の進展・展開に沿って、心理職、専属産業医、産業看護職、人事、そして主治医の立場から意見を交わし、他の職種の見方や関わりを理解し、多職種連携を深めていこうというのが本シンポジウムのねらいです。
 座長が用意したモデル事例(架空事例)は、大手メーカーに勤務する48歳の男性です。35歳の時に抑うつ状態の診断で7ヶ月休職し現在も通院中。共働きで子どもはいません。場面1はX年12月。管理職試験に不合格になり落胆し、転職しようかと思うと相談にみえた場面です。場面2はX+2年。会社で早期退職制度の対象になり気持ちが揺らぎます。退職金の割増はあるものの、現時点で転職先のあてはなくどの分野に進みたいかもはっきりせず、億劫さが増しているという相談の場面です。
 
○米沢は主治医の役割で登壇
 事例概要はあらかじめシンポジストに知らされ、抄録にはそれぞれの立場からのコメントが出されていますが、当日改めて他のシンポジストが語る言葉を聞いていると、新しい気づきが生まれ、それを言葉にすることで、事例の理解がより深まっていく感覚が得られました。
 各シンポジストのコメントはいずれ学会誌に掲載されますので割愛しますが、米沢が最初に事例を読んだ時は、キャリアの問題だから主治医の出番は少ないなと感じました。しかし各シンポジストの話を聞いていくうちに、「この人に最後まで関わるのは主治医だ!」と気づき、急に臨場感がわいてきました。退職すれば職場関係の支援者とは縁が切れますが、主治医はその後もこの方の悩みと向き合っていく可能性が高いのです。
 
○相談できる人がいることの有難さ
 実はこのシンポジウムに登壇する直前の時間に、「定年後」という本で有名な楠木新さんの特別講演を聴きました。楠木さんによれば45歳以降が人生の後半戦で、副業や趣味、ボランティアなどによる「もう一人の自分」を持つことが重要と仰っていました。「完全にリタイアしたら、自分の名前を呼んでくれる場所なんて病院くらいしかありませんよ」と。そうなんです!いま仕事をしているからこそ、相談のアクションを起こせばいろいろな支援者が関わってくれるし、本人を一番よく理解している家族や、愚痴を言える友人や、一緒に仕事をする同僚などにも相談できるのです。自分のキャリアを振り返ることで自分の持ち味を再発見し、退職後も見据えた、自分が望む人生を見つけていってほしいなと思いながらシンポジストの話を聞いていました。
 
○管理職に求められるものは何か
 フロアのコメントでハッとさせられたものがあったのでご紹介します。実は当社の社長、榎本のコメントで恐縮なのですが、試験に落ちた後にどのように行動するかで管理職への適性やキャリアアンカー(その人の譲れないもの)が見えるのではないかと。このような困難な状況に接した際に、その状況を読み解く解像度を高め、何をやっていくかを考えるのが管理職の仕事でありやりがいではないか。社長としてはそれができない人に管理職は任せられないし、一方でカウンセラーとしてはその挫折や転機をこそ扱いたい、というわけです。まったくその通りだと思いました。レジリエンスと価値ですね。
 
○改めてキャリアを考える

 今回の学会のテーマは「キャリア」でした。メンタル疾患はそれを経験していない方には実感が持ちにくいかもしれませんが、キャリアの問題はすべての人に関わります。自分は自分の人生の中で今どこにいるのか。そんなことを考える参加者が少なくなかったのではないかと思いました。
 私自身、事例の対応を考えつつ、シンポジストのみなさんとの新たな出会いに感謝し、私に声をかけてくださった経緯やつながりを思い返したりしていました。そして学会終了後の新たな展開にワクワクする日もあります。
 貴重な機会にお招きくださった座長の種市先生、ご一緒してくださったシンポジストのみなさま、そして大会関係者のみなさまに改めて感謝申し上げます。

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