矛盾だらけのおとなの葛藤
我が家は、3歳5ヶ月の娘と共に畑を借りていて、今は白菜を育てている。
その中に、かじられたあと……。
一匹逃すと被害は甚大。
芯を食べられると結球しない。
というスタッフさんの、脅し(アドバイス)に従い、ちなまこになって本人を探すと、いたいた。気緑色の青虫と、毛虫と。
青虫の方は、シャクトリムシみたいな歩き方をしてないから、たぶんモンシロチョウ、ときいて、人参にいたキアゲハの幼虫と共に、うちに連れて帰ってきた。
毛虫の方は、娘に見えないようにサヨナラ……。
見た目だけで選別するのが申し訳なかったが、そのままにしておくわけにもいかず、そっと……。
で、お二人を連れ帰ってからの娘は、それはもう、かいがいしいお世話っぷり。
指にのせたり、葉っぱを押し付けたり、迷惑千万なお世話だったが、名前もつけて、白菜もまた取りに行ったり、可愛がっていた。
ところが、である。
モンシロチョウの方が、なぜか人参の葉っぱばかりにいる。元気がないのか?日中食べてる気配がない。
次第に色がくすんできた。
元気を出すために、柔らか目な白菜を摘んできたりしてみたが、完全にグレー茶色になってしまった。
そこで私は、ある疑いを持った。
この子、具合悪いんじゃなくて、変身したのでは?
ということは、モンシロチョウじゃなくて、ヨトウムシという、蛾なのでは……。
グーグル先生に聞くと、まさに同じ虫の画像が……。
しかも、夜活動する性格で、日中寝てるときは木の根本や土に潜りたいらしい。
自分で自分にがっかりなのだが、ヨトウムシと分かった瞬間から、ひとななちゃんと名付けられたその子を気持ち悪いと思うようになってしまった……。
蛾でも蝶でも、同じ種類だし、白菜を食べるという意味ではどちらも害虫。
それなのに、見た目がきれいかきれいじゃないかで、こんなにも、心持ちがちがうのか……。
モンシロチョウはアブラナ科しかたべないが、ヨトウムシなら人参の葉っぱもいろいろ食べるらしい。だから人参の葉っぱにいたのか。
毒はないのか調べたら、予測変換で駆除ばかり出てきて、毒殺するのは人間の方だった……。 人間だったら好き嫌いせず色々食べて偉いねとまでいわれるのに、食欲旺盛が、余計に仇になっている。
飼育ケースは、潜れるところがなくて、大きくなってからは狭い葉っぱの隙間にずっと縮こまっている。
どうやら土の中でサナギになって越冬するらしい。
かわいそうだなと思いつつ、そんな情報をみて、飼えない理由を見つけたと、ホッとした自分がいる。
おとなは勝手だなぁ……。
畑じゃないところにリリースしたいと、娘に提案したら、「えっ……」と絶句して、泣きそうな声で「……大丈夫だよ……」、「土をいれてあげたらいいじゃない……」と言われてしまった。
「ななちゃん(キアゲハ)も、ひとななちゃんも元気でよかったね!!」と、喜んでいた娘はお別れしたくないのだろう。
土を入れる具体的な方法を、一生懸命、説明する娘。
確かに土を入れるって、一番の解決策ではある。
気持ちが伝わりすぎて、痛い。
娘の純粋な気持ちに、母はオロオロとして、なにもいえなくなってしまった。
土は虫がわかないか、越冬を耐えられるか、おとなの打算がまた頭を持ち上げる。
こんなにも、可愛がってしまうと、白菜についた他の青虫毛虫達を、サヨナラできるのか、という、葛藤も、母には生まれる。
でも、他の人の畑もあるので、放置はできない……。
命を大切に、というのは簡単だけど。
その場で愛でるのも簡単だけど。
すべての命そのものに、自分にとって敵なのか、かわいいかというシンプルな思考のなかで、真っ向から平等に対峙する娘と違って、おとなの矛盾のなんと多いことか……。
そんなおとなが、命の大切さを教えるなんて、甚だ傲慢だなと思う。
むしろ私が今、命の授業を受けているようだ。
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