三月アキ

子育てを言い訳に自分のことを後回しにした結果、何者にもなれず呆然と立ち尽くす。 年齢と…

三月アキ

子育てを言い訳に自分のことを後回しにした結果、何者にもなれず呆然と立ち尽くす。 年齢とともに心奪われるモノ、コトも変わるのね。と言いながら手放せないのが読書だった。

最近の記事

恩田陸の世界に魅せられて

最近はエンターテイメントの小説が出ているが、私はやはり恩田陸さんのミステリーが好きだ。 「鈍色幻視行」と「夜果つるところ」を読んだ。この2冊には関連性があってとても面白い。 せっかく読み終えても時間と共に記憶が薄れていくので、簡単にでも記録するようにしている。 しかしこの2冊については、なかなか書けないでいた。何故か? 「鈍色幻視行」 「夜果つるところ」という小説についての取材を望む作家の梢。 再婚同士である夫の雅春と共に関係者が一堂に会するクルーズ船での旅行に参加するのだ

    • 「猫君」を読んで猫又を想う

      吉原で髪結いをして暮らすお香。 易者だった亭主の新助は四十になる前に死んでしまった。 子どももおらず先々が心配だったが、髪結いの仕事がお香を助けた。 一人暮らしに慣れた頃、亭主と縁のあった占い師、和楽がやって来た。 「良き縁を持ってきた」 蜜柑色のふわふわの毛をした子猫だった。 右目が青で左目が黄色をしている。 そして和楽は猫又について語り始めた。 「あら、じゃあこの蜜柑色の猫ちゃんも、猫又になりそうな、筋の良い猫なんですね。それで和楽さんはあたしに、二十年以上大事に飼う

      • THE HOLDOVERS

        映画を観に行った。 ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ 映像や音がこれから古い映画が始まるかのような演出で、期待感でワクワクする。1970年12月、ボストン近郊の寄宿制の名門バートン校(実在しません!)が舞台だ。 クリスマス休暇に事情があって家に帰れない5人の生徒の面倒を見るよう、校長に命じられた古代史の教師ポール・ハナム。融通も利かず変わり者で、生徒や他の教師からも嫌われていた。 休暇中も勉強させられ、生徒は不満がたまるばかり。 ある日、学校にヘリコプターが

        • 「夜明けの花園」ー理瀬シリーズ短編集

          恩田陸さんの作品の中で「麦の海に沈む果実」という作品がある。 ゴシック・ミステリと呼ばれていて、全寮制の学園が舞台で私はとても魅了された。水野理瀬という女の子が主人公で、他の登場人物が中心に描かれる作品もあり、これらを「理瀬シリーズ」と呼んでいる。ネット上で時系列に沿った読む順番のお薦めリストも出ていて、私も参考にして読んだ。中には短編作品もあり、いつかまとめてほしいなー と思っていたら出来ました。 短編集。 やや小ぶりで、北見隆さんの装画・装丁でとても世界観が表現されている

        恩田陸の世界に魅せられて

          桑名へ再び

          「コンデルさん」で書いた「六華苑」のすぐ隣に「諸戸氏庭園」がある。一般公開は春と秋ということで、令和6年の春の一般公開は6月16日(日)まで。 庭園の中でも歴史的に最も古い部分であるという菖蒲池は本当に素晴らしかった。 重要文化財の御殿広間。地盤改良で盛土を施し、柱筋に石垣を地下2mほど下から積み上げているそう。中には入れないので庭園側から眺めることになり、床の位置が高く存在感に圧倒されてしまう。 もちろん六華苑も クイズです。これは誰でしょう。 初代桑名藩主の本多

          桑名へ再び

          コンデルさん

          三重県桑名市にある「六華苑(ろっかえん)」に行った。 山林王と呼ばれた桑名の実業家・諸戸清六の邸宅として大正2年に竣工。広大な敷地に洋館と和館、蔵などの建造物と日本庭園で構成されている。国や三重県、桑名市に重要文化財や有形文化財に指定される貴重な遺構である。 とリーフレットに書かれている。 私は洋館が見たかった。建築物についての知識は全く無いのだが、洋館には憧れのようなものを感じるし、この六華苑の洋館は鹿鳴館などを設計したジョサイア・コンドルが手掛けているのだ。 日本画家

          コンデルさん

          ネネとりっちゃん

          読み終えてしまった。物語の中にもうしばらく入っていたかった。 私は本が新しく出版されても、すぐに読むことはまずない。どれほど話題になっても手にするのは数年後、文庫になっていたりする。でもこの「水車小屋のネネ」は珍しく早々に購入した。読んでいる間に本屋大賞2位の受賞となった。(すごい!おめでとうございます!!) 本に掛けられた帯の言葉がとても気になった。 「助け合い 支え合う人々の 40年を描く 長編小説」 18歳の理佐と8歳の律。二人の姉妹が「そば屋の仕事と鳥の世話じゃ

          ネネとりっちゃん

          心地いい毎日とは?【ある日の日記】

          以前、友人と行った喫茶店。ランチで食べたロールキャベツ煮込みが本当に美味しかった。ただ、店内は広くなく、食事が美味しいのでお客さんが次々に訪れる。そのため長居が出来ないので、その後友人とはなかなか行くことが出来ないお店になってしまっていた。 仕事が休みの朝、郵便局へ行く途中でその喫茶店の前を通った。 今日はなんだか入りたくなった。 まだモーニングサービスの時間帯だし。 スライドの扉を開ける。 確かオーナーは年配のご夫婦だ。 すぐ目の前のカウンターの中のご主人に声を掛けられ

          心地いい毎日とは?【ある日の日記】

          年を取るということ【ある日の日記】

          自分の考えを発言したら、相手はどう思うだろう。 もし反対の意見だったら、真っ向から反撃されてしまうのだろうか。 フーンと冷たくあしらわれ、以降相手にされない無関心な反応だったりしたら…。 ネガティブな妄想にとらわれて、自己主張が苦手な静かな人で過ごしてきた。思えば、激しすぎる父親似の感情を、それを嫌う母親が私の本質をぐるぐると布でくるむように隠してしまい、自分好みの子どもに育て上げてしまったような気がするのだ。 もちろん時に激しい感情があふれ出る。それを抑え込みたい自分も存

          年を取るということ【ある日の日記】

          ウディ・アレンのラブ・コメディ?

          映画「サン・セバスチャンへ、ようこそ」を観に行った。 北スペインとフランスにまたがるバスク地方にあるサン・セバスチャン。美しいビスケー湾のリゾート地の景観が作品をキラキラと輝かせていて、訪れたくなる素敵な街だった。この地で開催される映画祭は、ヴェネチア、カンヌ、ベルリンと並ぶ国際四大映画祭の一つとして1953年に誕生したという。 冴えない熟年男性モートは、妻のスーが仕事のために訪れたサン・セバスチャン映画祭に同行する。モートは映画が好きなのだが、実は妻の浮気を疑って付いてき

          ウディ・アレンのラブ・コメディ?

          「バベットの晩餐会」を読んだら併録作品も面白かった

          日本での公開は1989年2月18日。 デンマークのドラマ映画だったそうで、この「バベットの晩餐会」を映画館で観た。とても静かで文芸的な作品だった。 姉妹の家にメイドとしてやって来たバベットが振る舞う晩餐会の本格的なフランス料理は圧巻だ。料理をするバベットには鬼気迫るものがあったが、それは当然で彼女はプロの料理人だったのだ。パリの暴動から逃れた先が姉妹のところなのだが、以前妹のフィリッパと交流があったパパンという人物が、手紙を書いてバベットに持たせたのだった。 映画だけでは

          「バベットの晩餐会」を読んだら併録作品も面白かった

          グーテンベルク聖書と活版印刷

          昨年末、クリスマス企画としてグーテンベルク聖書を図書館で展示するという新聞記事を目にした。とても興味を持ったので見に行くことにした。 活版印刷を発明したドイツのヨハネス・グーテンベルク。 1455年頃にヨーロッパ初の聖書の印刷を行っている。 ほとんどのページが二段組42行の組版であることから「四十二行聖書」とも呼ばれている。 レイアウトは中世写本の伝統を受けつぎ、ゴシック体を使用。 180部から200部程度の印刷部数と推定され、今も現存しているのは世界中で48部だそう。

          グーテンベルク聖書と活版印刷

          ロアルド・ダールを読んで

          昨年末に慌てて観に行った「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」。時間が合わず吹き替えで観ることになってしまったが、すぐに後悔することになる。ウォンカ役のティモシー・シャラメが歌って踊っているではないか!! あー字幕で観るべきだった…。 少しの悲しみを抱えながら小説を読むことにする。ロアルド・ダールの 「チョコレート工場の秘密」と続編の 「ガラスの大エレベーター」 もちろん評論社から出版されている、柳瀬尚紀氏による日本語版で!! どうしてもジョニー・デップを思い浮かべてし

          ロアルド・ダールを読んで

          「ノースウッズ」を知る

          北米大陸の湖水地方、広大な原生林が広がるこの地域は「ノースウッズ」と呼ばれている。ここには多くの野生動物が生息していて、写真家の大竹英洋さんは野生のオオカミと出会うために、この地を訪れるようになったという。 私はまず「古本屋かえりみち」を訪れて、併設された「gallery ki」で開催されている写真展に行った。「ノースウッズ 生命を与える大地」に掲載されている写真展だ。どの写真もノースウッズの研ぎ澄まされた空気感が感じられる。チラシにも使用された白熊の親子の写真はとても微笑

          「ノースウッズ」を知る

          表紙の美しさで出会えた「あなたを想う花」

          まだ私は物語の中にいる。 余韻の強く残る作品だ。 読んでいて映像がはっきりと浮かび上がる。 それが要因かもしれない。 ヴィオレットの歩んできた人生は決して幸せではない。 読んでいて辛くなる。 墓地の管理人として、ひとり慎ましく暮らす様子と、 今までの人生が交互に語られてゆく。 失ったものの大きさに衝撃を受けるが、そのような時にそっと寄り添い、 手を差し伸べてくれる大切な人との出会いもあり、私も心が癒される。 悲しみだけではない、心から幸せを願うヴィオレットの再生の物語。

          表紙の美しさで出会えた「あなたを想う花」

          地元で古代文明を学ぶ

          近所の公民館で大学連携講座を受講した。 「ラテンアメリカ地域の古代文明 メソアメリカ」 担当の大学院の先生は実際に発掘調査をされていて、書籍にまとめられている。(やはり高価で難しそうだ。) 「メソ」とは「中央にある」という意味で、ギリシア語の mesos からきているのだそう。地図を見るとメキシコからグアテマラ、エルサルバドルなどの国をまたいでたくさんの遺跡が分布している。 その中で私が興味を持っているのはマヤだ。 謎めいた神秘的な文明としてテレビで放送されることも多か

          地元で古代文明を学ぶ