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「バベットの晩餐会」を読んだら併録作品も面白かった

日本での公開は1989年2月18日。
デンマークのドラマ映画だったそうで、この「バベットの晩餐会」を映画館で観た。とても静かで文芸的な作品だった。

姉妹の家にメイドとしてやって来たバベットが振る舞う晩餐会の本格的なフランス料理は圧巻だ。料理をするバベットには鬼気迫るものがあったが、それは当然で彼女はプロの料理人だったのだ。パリの暴動から逃れた先が姉妹のところなのだが、以前妹のフィリッパと交流があったパパンという人物が、手紙を書いてバベットに持たせたのだった。

映画だけでは時代背景もよくわからず、宗教や文化についても足りない知識を補おうと書籍も読んでみた。ページ数も多くないし、簡潔に書かれた作品のように感じる。私は映画の雰囲気の方が好きだった。

作者はデンマークの女流作家カレン・ブリクセン(1885-1962)。
ほとんどの作品を英語とデンマーク語で書いているという。英語版はイサク・ディーネセンという男性名、デンマーク語版はカレン・ブリクセンの名で発表している。

そして、「エーレンガート」という作品が併せて収録されている。ページ数も「バベットの晩餐会」よりも多く、正直に言って印象もこちらの方が強く残ってしまった。

エーレンガート

ある貴婦人が120年前の物語を語り始める。
曾祖母が残した、ある人物とやり取りした手紙に記されていたある出来事。
古き良き時代のドイツで美しく栄えていた小さな公国でのお話。

バーベンハオゼン大公夫妻の間の、高貴で美しいロッター王子の妃がなかなか見つからない。悩んだ大公妃はカゾッテ氏に相談をするのだった。カゾッテ氏はヨーロッパ各国のほとんどの王妃、王女の肖像画を描く高名な芸術家で枢密顧問官という役職についていた。仕事上、他国の王女の情報も持っているので、血筋も申し分のないリュドミラ王女を見つけて王子の結婚が決まるのだった。

しかし!

結婚の晴れやかな数々の儀式の後、ロッター王子から母である大公妃にある事実が語られた。
「心待ちにしていた世継ぎが、名誉と秩序が認めうるより丸二か月も早く、この世に生まれることになりました」

大公妃は国民や他の一族の感情を考えて、ひどく驚愕し、恐怖心に襲われるのだった。それに大公にも真実を伝えることが出来なかったのだ。大公妃はこの公国の権威を守るために、このことを隠し通すため、カゾッテ氏と共にある作戦を練り、実行していく。

「エーレンガート」はこの後登場する、ある女性の名前だ。カゾッテ氏にとって、とても重要な存在になっていく。この時代の恋なのか、純愛なのか。先が気になって一気読みしてしまった美しい作品だった。



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