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「野又 穫 Continuum 想像の語彙」感想

東京オペラシティ アートギャラリーにて開催されている展覧会「野又 穫 Continuum 想像の語彙」を見てきた。


野又 穫は、インターネットで非現実的な建築デザインを検索していたときにたまたま見つけて、それからずっと生で見たいと思っていた作家の一人だ。

(たしか実現不可能な建築ジャンル(?)「奇想建築」にたどり着いて、その1つのエティエンヌ・ルイ・ブーレーによる「ニュートン記念堂」の画像から、似た作品として野又 穫の作品が出てきたんだった気がする)

野又 穫 《Alternative Sights-2》2010
エティエンヌ・ルイ・ブーレー「ニュートン記念堂」


私は昔から、こういった不自然なほどに静けさを感じる、人工的な直線あるいは、円で描かれた建物を描いた美術作品に何故だか惹かれてしまう。


この作家の作品にも不思議なノスタルジィと、ユートピアの成れの果てのディストピアのようなもの感じる。
だから、この作家の生い立ちや、何を思ってこの作品を描いたのかといった作品に込めたメッセージなどを知りたいという強い気持ちがありつつ、そういった背景を知らなくても自分が「理由はわからないけれども、すごく好きな画家だ」と思っている。


今回、野又の作品を見て私の頭の中に浮かんだものの1つが、お台場の街並みだ。
私が子供時代を過ごした、00年代はバブル期に計画された巨大な都市開発が実際に建設された時期だ。
特にお台場は広い埋立地に他の街とは一線を画す近代的なデザインの建物がポツポツと建っており、00年代の最先端の街だった。
しかし、今ではパレットタウンの観覧車や、ヴィーナスフォートといった平成のユートピアお台場を代表する施設がどんどん閉鎖し、残る巨大な建築物も一見不変のように見えて、近づいてみると老朽化を感じさせる。

「野又 穫 Continuum 想像の語彙」展示作品より 


もう1つ、展覧会を見て浮かんだものが北方ルネサンスの画家ヒエロニムス・ボスの「快楽の園」の中央に描かれた噴水。

ヒエロニムス・ボスの「快楽の園」中央部分

これは単なるこじつけでしなかないのかもしれないし、野又作品にはボスのようなキリスト教的なテーマはないと思うが、<ユートピアとディストピアの表裏一体>的なイメージは共通するのかもしれない。


美術作品を鑑賞する時の作品から受けるパワーには2パターンがあると個人的には思っている。

1つは目の前に立っているだけでクラクラしてくるような、怖くて絵の前にひれ伏したくなってしまうような、平面の絵から描かれているものが飛び出してくる錯覚を感じる力。これは、抽象絵画を見た時によく感じる。

もう1つは何時間でもじっとその作品を見つめて、その作品の中に入って行く感覚に囚われる引力のような力。一見、心地がいいように思えるけれども、どこか不安や寂しさを感じるような作品を見た時にこちらは感じる。



野又の作品は圧倒的に後者だ。そして、その力がとても強い。
「下手をすると、描かれた建物の中にいつの間にか迷い込んで永遠に出られなくなってしまうのではないか?」
そういう不安が、鑑賞時によぎっていた。


展覧会情報
野又 穫 Continuum 想像の語彙期間
2023年7月6日[木]─ 9月24日[日]
会場:東京オペラシティ アートギャラリー
https://www.operacity.jp/ag/exh264/


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