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『ここはすべての夜明けまえ』/ 間宮改衣 | ひらがな最終兵器彼女

じんせいでたったひとつでいいから、わたしはまちがってなかったっておもうことがしたいな。

『ここはすべての夜明けまえ』P113

知ったきっかけは星野源がラジオでおすすめしていたから。

生きててよかったと思える本とは一体…?と思って読み始めたけど、面白い、というよりずっとうっすら悲しくて、読み終わった後の余韻がすごい話だった。何かに似てるな、と思ったら昔読んだ「最終兵器彼女」を読み終わった時の気持ちに似てた。

読み始めるといきなりひらがな。
ストロングスタイル…とまず思った。単純に読みづらいから、よっぽど面白くないと途中で読むのやめちゃうんじゃないか?と謎の心配をしつつ読み進める。面白い。でも悲しい。

物語は主人公の女の子が過去を振り返るところから始まる。病気で苦しんでいた主人公の描写が続く。病気の女の子話は辛い。ただ主人公は病気の辛さでずっと死にたいと思ったけど、「適合手術」というものを受けて不老不死(に近い存在)になる。
おぉーSFと思う。SF小説を読むのは「マルドゥックスクランブル」以来だったんで、ワクワクする部分もある。半分ロボットになった主人公をみんな気持ち悪くなるけど甥っ子のシンちゃんは主人公のことが好き。シンちゃんと主人公の歳の差カップル話がはじまる…かと思いきや全然そうじゃない。地球はダメになっていくし、幸せな瞬間が全然ない。間に挟まるボーカロイドや将棋の電脳戦が現代のSFらしさとリアリティを感じさせてくれる。永瀬名人の話がSFで出てくるとは…

いつのまにかひらがなにも慣れてしまって本の終わりが見えてくると、主人公の話が聞けなくなることの寂しさまで感じてしまう。なんというか、主人公との別れが寂しい。不思議な気持ちだった。本を読んでてそんなことを感じたことはない。ひらがなは何かの作用があるのか?たしかにひらがなといえば、絵本をずっと読んでるようなものでもあると思うとそんな効果もあるのかも…

悲しい小説はなかなか読むのが辛い。でもかすかにだけど希望はある話だった。
よかった…でも幸せってなんだ?と考えさせられる小説でもある。かなり読後感が最終兵器彼女に近かったんで、あの感覚が好きな人にオススメです!

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