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『前の家族』/ 青山七恵 | 引越しホラー小説

タイトルと表紙で、重たい小説の息抜きと思って読んだらまさかの引越しホラー小説だった。
ストーリーは、買ったマンションの前の住人がやたらと接近してくる話。

前の住人は、新しい家があるのに、すごく前の家を気に入っていて、なんなら住んでた子供達からは敵意を持って見られるくらいな感じ。なぜ引っ越すかというとお父さんが新しい家に住みたいからで、他の皆はあまり納得していない…

暮らし始めると前の住人の子供が遊びに来はじめる。
この時点で自分だったら結構嫌だな・・・母親は止めるがそれでも子供はやってくるし、最初はさすがに外に出しとく訳には…くらいの感じで家に入れてたけど、母親含めて前の家族と交流がうまれ、最終的には前の住人の家に泊まったりし始め、どんどん主人公は前の住人の家庭に依存していく…

すると今度はなかなか皆家に帰らなくなり、不審に思い、主人公は自分の家に帰ると明かりがついてて前の住人がクリスマスパーティーをしてるっていう…

バナナマンのコントで前の住人が訪ねてきてなつかしい〜といいながら部屋を見るコントがあった気がするけど、小説でこんなホラーを読んだのは初めて。

たしかに学生時代とかに住んでたアパートとか懐かしくて、久しぶりにあの部屋だ〜くらいの感じでこっちは見てても、住んでる側からしたらそんな思い入れとか知ったことではなくて、単純に怖いよな〜。

ただ、この本は引っ越した先の家がしっくりこない家族が、独身女性を家族に依存させ、追い出す的な話なんで、怖さの質は違うけど。

新しい切り口のホラーだな〜とは思ったものの、前の住人、特にお母さんが怪しすぎて、あまり主人公に同情できない。

主人公は独身なんだけど、どこか家族に飢えている部分があって、それで前の住人に依存していく。なんか独身でかつ一人暮らしだから、そんなことになるくらいなら実家に帰るか結婚すればいいのに…みたいな、たぶん本の趣旨とは全然違う感想を持たれなかねないと思った。

寂しいからって結婚して子供もいる前の住人の家に泊まるか?普通断るよな〜みたいな…突飛な行動に対する理屈があんまり納得いかなくて、詐欺に騙される人を見ている様な気持ちになることが多かった。

とはいえだんだんと洗脳されていく主人公の様子は怖くもあるし、家に帰ったら里芋の皮が玄関前にばら撒かれてるとか、あまり見たことがない描写が多くて楽しく読めた。引越し予定の人、中古物件を買う人にある意味オススメです!

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