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エステサロンによるHIFU施術は即時中止・・・経産省と関連団体が呼びかけた理由とは

高密度の超音波を照射して脂肪を燃焼させたり肌のハリを取り戻したりという「HIFU」施術はその手軽さも相まって人気です。
しかしそのHIFUによって健康被害が続出しているとのこと。
ついに経済産業省とエステティック関連団体から注意喚起と即時停止を呼びかける事態になりました。

■経済産業省がHIFU施術の危険性について注意喚起

2023年4月、経済産業省はHIFU施術の危険性について注意喚起を行いました。
これに合わせて次の9つのエステティック関連団体からも即時中止を呼び掛けるプレスリリースを発表しています。

特定非営利活動法人日本エステティック機構
一般社団法人日本エステティック振興協議会
公益財団法人日本エステティック研究財団
一般社団法人日本エステティック協会
一般社団法人日本エステティック業協会
一般社団法人日本エステティック工業会
一般社団法人日本全身美容協会
全日本全身美容業協同組合
一般社団法人エステティックグランプリ

消費者庁安全調査委員会が公表した「事故等原因調査報告書」によれば、一部のエステサロンにてHIFU施術による健康被害が出ているとのこと。
調査の結果、

◎照射出力が高く、安全上信頼性の低い機器を用いている
◎施術に必要な解剖学の知識が不十分なスタッフが施術を行っている
◎出力や照射方法の調整に関する知識が不十分なスタッフが施術を行っている

これらが原因となり、熱傷や神経障害などの事故が発生したと結論付けられています。
この結果を基に安全調査委員会は厚生労働大臣・経済産業大臣・消費者庁長官に対して意見書を提出しています。
また、経済産業大臣へは次のように要請しました。

◎エステティック業界に対して早急かつ広範に注意喚起を行う必要がある
◎こうしたリスクについてエステティック業界団体と協力し、団体未加盟を含むエステサロン店舗に広く周知し、注意喚起すること
◎適切に勧告や注意喚起を行っているエステティック業界団体の取組を後押しすること

この要請を受け、エステティック関連団体と協力し、HIFU施術の危険性の注意喚起と即時中止の呼びかけを同時に発表するに至っています。

■HIFUによる健康被害が急増している

今回の注意喚起に至る経緯としてまず、消費者庁への被害相談数の増加がありました。
エステサロンでのHIFU施術によって皮膚障害や顔のしびれ、熱傷や急性白内障といった症状が出たとの被害相談が多く寄せられたことから2021年7月、消費者庁消費者安全調査委員会が調査をスタート。
その結果、必要な知識を持たない施術者によって皮下神経や血管などを損傷する被害が出ていることが判明します。
とはいえ、調査段階の時点ですでにエステティック業界の主要団体はエステサロンでのHIFU施術を禁止していました。
そのため、団体に非加盟のサロンがHIFU施術を行っている可能性が高まったことから、経済産業省と主要団体が協力する形での注意喚起・即時中止の呼びかけとなったと考えられます。

■そもそもHIFUとはどういう施術なのか

消費者庁安全調査委員会による調査では、HIFUの施術者には様々な知識が必要であるとしています。
ではそもそもHIFUとはどういった施術なのでしょうか。

・皮下組織や筋膜に超音波を照射する施術

HIFUとはHigh Intensity Focused Ultrasound(高密度焦点式超音波)の略。
施術としては密度の高い超音波を皮下組織や筋膜へ照射するというものになります。
照射された皮膚組織は熱によって破壊されます。
元々HIFUはがんなどの治療に使われていた技術です。
しかし壊れた組織が再生しようとコラーゲンやエラスチンを生成するため、美容効果があるとして美容に転用するサロンが出てきます。
肌を傷つけずに超音波を当てることができるので、メスを使うような手術をしなくて済む、ダウンタイムが少なくて済むなどの気軽さもあって人気になりました。

・肌の弾力やハリ感のアップが期待できる

HIFUを真皮層に照射することで線維芽細胞が活性化。
コラーゲンやエラスチンといった肌の弾力を支える物質が生成されます。
加齢とともに減少する一方だったコラーゲンやエラスチンが増えることで肌に弾力が戻り、ハリ感がアップします。

・リフトアップにも効果が期待できる

HIFUならリフトアップ効果も期待可能。
顔の筋肉である表情筋は筋膜に覆われています。
この筋膜にHIFUを照射すると組織が再生して表情筋が引き締まり、リフトアップするという仕組みです。

・たるみ解消や小顔効果が期待できる

皮下組織へHIFUを照射すると脂肪細胞が破壊されます。
破壊された脂肪細胞は代謝によって体内を流れていき、やがて排出されます。
顔のたるみの解消といったエイジングケアや小顔効果が得られます。

■HIFUにはリスクや副作用がある

様々な美容効果が期待できるHIFUですが、冒頭の通り、エステサロンでの取り扱いは即時中止すべきとの注意喚起がなされています。
理由は美容目的での施術によるリスクや副作用です。

・HIFUに伴うリスクとは?

エステサロンでHIFU施術を行ったことで事故が起きています。
HIFUの人気の高まりに比例するように事故件数も増加し、消費者庁への相談が相次ぎました。
HIFUによる実際の事故の主な内容は次の通りです。

◎唇や口角といった口周りの麻痺
◎顔のしびれ
◎目のかすみやぼやけ
◎シワやたるみ
◎熱傷による色素沈着

このほかにも出血や蕁麻疹、肌表面に火傷を負ったという事例もあるとのこと。

・HIFUによる副作用とは?

メスを使うような手術に比べるととても手軽に感じられるHIFUですが、副作用がないわけではありません。
HIFUであっても施術後は痛みや腫れ、むくみといった症状が出ます。
いわゆる「ダウンタイム」です。
個人差はあるものの、数日続くので、まったく副作用のない施術とはいえません。
また、一般的に効果の持続期間は半年ほどといわれていますが、施術を受ける際の体の状態や状況によって短くなることもあります。

・なぜHIFUで事故が起こる?

密度の高い超音波を照射して、その熱で皮下組織や筋膜を破壊し、再生を促すというのがHIFUの仕組みです。
肌の表面には影響を与えずに、皮膚の深部にまで難なく照射できるのが特徴といえるでしょう。
しかし人の顔はいくつもの神経が複雑に走行しています。
それらの神経に干渉することなく確実な施術を行うには、解剖学などの高度な医療知識が欠かせません。
事故の内容にある顔面の麻痺やしびれ、視力低下などはHIFUによって神経を損傷してしまったために起きたと考えられます。
消費者庁安全調査委員会の調査でも必要な知識を持たない者が施術したことによる事故であると結論付けています。

・エステサロンでのHIFUは何が問題?

エステサロンによるHIFUの注意喚起や即時中止といった発表が行われることになった背景には、医療行為に当たるのかどうかといった議論がなされていないことがあります。
厳密に言えばHIFU施術は「医師のみが行える医療行為」とする医師法第17条の「医業」に該当するのではないかという考え方が主流です。
また、薬機法や厚生労働大臣の承認といったものに関する懸念もあり、エステティック関連団体では自主的に施術を禁止しています。
そのため、施術が行われているのは非加盟のサロンであるとのこと。
しかし現時点ではエステサロンがHIFUの施術を行っても違法ではなく、罰則もありません。

・HIFUで健康被害を遭ってしまった場合は?

エステサロンでHIFUの施術後、麻痺やしびれなどの健康被害に遭ってしまった場合は速やかに皮膚科にて診察を受けましょう。
同時に国民生活センターへも相談することを忘れずに。
施術内容はもちろん、金銭に関してもしっかりと解決する必要があります。

■医療資格を持つ医師のいる美容クリニックは問題ない

HIFUは効果が高い施術ゆえに、リスクを伴います。
しかしだからといってHIFUすべてが危険だということではありません。
施術に必要な知識のある、医療資格を持つ医師が在籍する美容クリニックであれば安全です。
医学的な根拠を基にきめ細やかな施術とアフターケアが受けられるため、効果も期待できるでしょう。
HIFUは医療行為であるというのが現在の認識です。
料金やSNSの口コミといったものでなく、

◎医師が在籍していること
◎医師によるカウンセリングが受けられること

などの点をしっかり確認できるクリニックを選びましょう。

■エステサロンのこんな広告は注意すべき

HIFUによる健康被害の増加に伴ってエステ・美容業界では取り扱い方を改めています。
HIFUの施術を自主規制するのはもちろん、広告などの掲載も取りやめるなどの動きが出ています。
しかし団体に加盟していないサロンについては規制が及びません。
被害に遭わないためには自衛する必要があります。
見極める方法の一つが広告です。

・効果を保証する広告

「絶対にやせる」「痛みもなく安全」などといった広告を出しているエステサロンは危険です。
これらの表現は医療HIFUと誤認できることから、医療広告ガイドライン違反になります。
また、医療HIFUと変わらない効果を謳うようであれば薬機法違反になる場合も。

・肌の変化を謳う広告

シミ・シワやリフトアップといった肌の変化を謳う広告にも注意が必要です。
エステサロンにてコラーゲンやエラスチンの生成させるようなHIFU施術を謳うことは薬機法違反となります。
したがって「アンチエイジング」や「若返り」といった文言のある広告が出ているエステサロンは避けた方が無難です。

■すでにコース契約をしている場合はどうなる?

注意喚起と即時中止が発表されたエステサロンによるHIFU施術ですが、すでにコース契約をしてしまっている人もいるでしょう。
そういった場合について各団体では次のように呼びかけています。

◎HIFU以外の施術への変更を顧客へ依頼すること
◎顧客が解約を希望した場合は速やかに中途解約に応じること

もしも自身が該当する場合は契約しているエステサロンに問い合わせてみることをおすすめします。
また、今後のサービスの提供内容などについても聞いておくと安心です。
 

肌のハリやリフトアップ、小顔効果など、HIFU施術で得られる効果は魅力的なものばかりのため、取り扱うエステサロンは少なくありません。
しかし実際は高度な医療知識が必要となる専門的な施術でした。
そのため健康被害が後を絶たず、ついに経済産業省とエステティック関連団体から注意喚起と即時中止が発表されることとなります。
今後はどういった規制を行うのか、対応について注意深く見守る必要があるでしょう。


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