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3.11 体験記 困った時は、お互い様

『困った時は、お互い様』


3月11日以降、仙台で度々、耳にする言葉だった。

電気、ガス、水道が止まり。
食料がない。幸いクリニックには水がペットボトルで少しあった。

二日間、食事をしていない。
コンビニ、スーパーなど営業しているわけがない。

『町を歩けば食事にありつける』

そんなインスピレーションを頼りに町を歩く。携帯電話は、止まったまま。

町の人に声をかけて

『コンビニやスーパーで営業しているところ、ありませんか?』

と尋ねる。
偶然、営業再開しているコンビニ発見。

一人当たり購入二つの商品までという購入制限あり。

それでも食事にありつけると思うと
ありがたい。

コンビニの店主に、あなたも震災被害者なのにお店を営業していただき、ありがとうございます、と伝えると
疲れた顔ではあるが

『困った時はお互い様だよ』

とニッコリ微笑む。

コンビニで二つの商品購入。
チョコレート、二個。

これでしばらく飢えを凌げる。
若い時に武道、格闘技にて減量の経験を思い出す。

あれに比べればこれぐらい、なんてことはない。

それでも次の食料を探しに町を歩く。
営業再開しているスーパー発見。
購入制限あり。それでも食料を購入できると精神的に安心する。

レジの女性店員さんに、あなたも震災被害者なのにお店を営業していただき、ありがとうございます、と伝えると
疲れた顔ではあるが

『困った時はお互い様です』

と優しく微笑む。

この極限状態で

『困った時はお互い様』

と言える人に、ただ

『ありがとうございます』

と伝え、頭を下げる私であった。

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