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雲南日本商工会通信2024年2月号「会長の挨拶」

 車はやっぱりガソリン車がいいですよね、マニュアルで1速2速とギアを上げながら、エンジンの排気音を聞きながら加速していくあの感覚はたまりません。何よりも車を自分で駆ることの楽しさと自由さを実感できることこそ、自分が車好きである最大の原因であると思っています。16歳で原付免許を取って初めてバイクで街を走った時の嬉しさと楽しさは、今でもはっきりと記憶にあります。そしてこの歳になってもマニュアルのスポーツカー“トヨタ86”に乗って街を駆る夢をずっと抱き続けています。
 
 地球の温暖化はガソリン車の走行中に排出されるCO2が原因とされています。そして環境保護の観点からBEV(電気自動車)を強力にEUが推し進め、世の中からガソリン車を排除しようという考えが世界中に広まっており、実際にBEVの販売は米国のテスラや中国のBYDを筆頭にこの数年伸び続けているようです。しかしながらこの状況は、地球環境を優先された結果ではなく、各国の政治や経済の企みが多く裏に潜んでいるとも言えるでしょう。
 確かに車の走行中にBEVはCO2を排出しません。しかしながらバッテリーの製造工程ではガソリン車製造の2倍以上のCO2を排出していること。また、BEVを走らせるために肝心の電気を作るために大量のCO2が地球にばらまかれています。このことから、発電を化石燃料に頼っている現在では実は既存のガソリン車よりBEVのほうが環境に悪く、地球温暖化に歯止めがかかっていないのが事実です。そしてこの事実を、BEVを推進している欧米各国や、大量に生産している中国は見て見ぬふりをしているのです。
 元々ディーゼル車の需要が多かったEUはガソリン車よりCO2排出量の少ないクリーンディーゼルを次世代エンジンとして推し進めていました。しかし2015年にVWによるディーゼルゲート事件(排ガス試験時のみ排ガス制御を強める不正プログラムを入れていた)が発覚してから信用は失墜。台頭するトヨタのハイブリットが主導権を取りつつあることに危機感を感じたEUが日本車潰しのために振りかざしてきたのが、環境を盾にしたガソリンエンジン悪者論でした。そこに米国や中国が乗っかったのは、やはり自国の貿易上日本を潰しておけば有利になることをもくろんでいたためなのは間違いないでしょう。
 こうして2035年までには100%をBEVにすると謳っているEUに追従している米国中国ですが、現在ではその方向にいくらか陰りが見えているようです。
 実際に2022年には半導体の世界的な品不足という要因も相まって、在庫が持てないほど売れていたBEVですが、現在BEVメーカーは今までのガソリン車の過剰在庫数をはるかに超えた在庫を抱えているようです。裏を返せば、結局は事実を見て見ぬふりをするのは製造側であって、エンドユーザーはいつまでもそこに騙されるわけではないということかもしれません。また、いち早くBEVにチェンジしてきた中国では、既に廃棄の問題が浮上しており、CO2排出以外の重大な環境問題にどこまで見て見ぬふりをできるかというのも興味深いところです。
 BEVが悪いというお話ではありません。風力や太陽光、化石燃料を使用しない電気を用いるのであれば、もちろん環境には優しいわけで、今後も選択肢の一つとしては必ず大きな比率を占めてくるでしょう。しかしながら、BEV100%にするにはその前にやるべきことがたくさんあることを、エンドユーザーはもう少し理解を深めたほうが本当の意味で環境にとって良いのでしょう。
 中国のガソリン価格は、現在では日本と同じかそれより少し高いくらいです。例えば小型の乗用車でガソリンを満タンにすると350元(約7000円)である一方、BEVでフル充電すると60元(約1200円)で済むそうです。しかもBEVに買い替えれば国からの補助金等もついてくる制度があります。また、大量に抱えている石炭でCO2を出しながらでも電気に変換して利用したほうが輸入ガソリンを利用するより良いという裏事情もあります。そのような事情があるため、この国でBEVが増加している原因は環境保護の観点ではないことは想像にたやすいでしょう。
 
 “敵はCO2削減でありガソリン車ではない”と堂々と謳っているトヨタは、もちろんBEV開発も進めているようです。しかしながらその観点は製造時から一貫してCO2を削減することに目標を定めており、それと並行して水素エンジンや引き続きハイブリット車も無くならないと見据えて開発の力を緩めていません。環境に配慮したモノづくりを前提とし、お客様に選んでいただく選択肢を考えた“マルチパスウェイ”という方針を堅持しているトヨタに期待を寄せ、“いつかはクラウン”ならぬ“いつかは86”の夢は引き続き持っていようと思っています。

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