雲南日本商工会通信2023年12月号「編集後記」
膨れ上がる不動産業や地方政府の債務。深刻化する若年層の失業。先行き不安による需要の落ち込みとデフレ圧力……。今後の中国経済を立て直すためにはどうすればいいのか。誰にも頼まれてないのに、そんなことをよく考えます。
現状の中国経済の希望といえば、電動自動車や次世代ハイテク分野で世界覇権を握ることですが、電気自動車は従来型自動車と違って産業のすそ野が狭く、あふれる若年求職者を吸収できません。同様にハイテク技術の多くが省人化に資するものなので、発展するほど雇用が減ってしまいます。つまりこれらは中国経済を立て直す決定打ではないのです。ではどうすればいいのか。
短中期的な立て直し策をいろいろ考えましたが、いずれも“あの人”がいるために実行できない策ばかり。たとえば「不動産業や地方政府の過剰債務」。高度経済成長期が過去のものとなった以上、「先延ばしすればいずれ良くなる」という考えは楽観的すぎます。政府が今すぐ国債を発行して肩代わりするのが、最も妥当な策だと思われます。リスクを恐れて貯金している国民が多い現在、貯金代わりに買ってくれる人が多いと見込まれることから、金利上昇圧力は予想以上に少ないことでしょう。
中国はすでにデフレ経済ですが、実のところ、デフレは国債金利の高騰を防ぐメリットがあります。ならば積極的に「日本の失われた30年」を作り出し、30年かけて国債を支払い切ればいいのです。経済成長しにくいデフレ経済とはいえ、実態以上に大きくなった中国経済にとって、日本のような1パーセント前後の経済成長率は自然だし、妥当といえます。
しかし、そうなると「中国の夢」――アメリカを追い越すことで、中国の政治体制こそが世界で最も効率的かつ普遍的だと立証すること――が困難になります。「君子豹変す」は悪い意味ではないそうですし、最近は「朝令暮改」もいい意味で使われています。“あの人”が夢を放棄すれば、あるいは延期すれば、むしろ賞賛されることでしょう。先月の米国訪問がその下馴らしであったことを期待します。
それをいったん決断すれば、苦境からのソフトランディングが可能となります。欧米諸国との対立も徐々に解除され、人的・経済的交流が再び活性化することで、安定した経済体制が構築されることでしょう。加えて国営企業重視の政策を変更すれば、民間のアニマルスピリッツが復活し、経済はより活性化されます。より重要なのは、これによって将来に対する希望を国民が取り戻せることです。
では放棄しない場合はどうでしょうか。強引に需要を増やす策が考えられます。つまり戦争などの手段でスクラップ&ビルドすればよいのです。別に台湾侵攻しなくても、国際紛争が多発する現在なら、自国が無傷なままでも目的を達成できるでしょう。その際、武器や軍需品の供給で持続的に儲けるために、中国政府にはこれらの紛争をできる限り長引かせるための暗躍が求められます。
もちろん、これはバッドシナリオです。いずれにせよ“あの人”の決断次第なのです。
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