雲南日本商工会通信2024年3月号「副会長の挨拶」
「子供、叱るな、来た道じゃ、老人笑うな、行く道じゃ」
生きてれば毎年、毎年、1歳ずつ歳をとるわけで、体型も見た目も反応も変わってくるのは生物としての道理です。理性では当然と理解できても、心では老化を感じないわけですから、これが一つの始末が悪いところで、戦争や圧政に関連している各国の指導者や、高齢化先進国の某国の政治指導者を見ても、この「心は老化を感じない」という問題が根本原因のようにも思います。
考えてみれば、人間の免疫力のピークは18歳くらい、筋肉量のピークは25歳くらいで、その後はずっと下降線をたどるわけです。現代のように人生80年とすれば、ほぼ第1コーナーで免疫力が最高速度に達したあと、第2コーナーの20代で体力が最高速度、それを過ぎると半分に達すまでに速度が急速に減少を始め、第3コーナーの50歳をすぎる頃には、スピードはすべての指標で能力は低下、第4コーナーを曲がるのが60過ぎ。競馬なら最後の直線は追い込みで最高度に盛り上がるけれど、人間の場合は、もうほぼヘロヘロの悲惨な状態、走るどころか、歩いたり、這ったり、転んだり、押してもらったり、引っ張ってもらったり、点滴を打ったり、薬漬けになったりの、無残な状態で運が良ければゴールまで辿り着けるということになるわけです。
ある人の庭に大きな立派な柿の樹がありました。ところがこの家の主人は吝嗇家、ドケチだったから、食べ頃の柿を見ても、まだ早い、まだ未熟かもしれないと、取るのを躊躇っていました。そのうち、自然に落ちる柿の実が出てきたから、すでに痛んでいたけれども、勿体ないのでそれを食べていると、食べ終わった頃にはまた、新しく落ちた柿があり、その半分カビが生えた柿を食べながら、シーズン中、一度も美味しい柿を食べることはできませんでした。
免疫力と体力のピークは18歳、25歳としても、人間の知力のピークはいつかという問題が残ります。知力の場合は経験という要素が加わるので、体力よりもピークが遅いという傾向はありますが、囲碁やチェスのチャンピオンの年齢を見てみると20代から30代、40歳以上はかなり例外的で稀であることがわかります。
技術が必要なスポーツ選手もその多くは40代が引退の年齢というのが、どのスポーツでも常識のようですから、技術や経験で体力の減少を補えるとしても、パフォーマンス上の年齢の壁というのが存在するというのが、事実です。
過去のノーベル賞受賞者が、長年の研究の末にその研究を発表した年齢の平均値は、44歳だそうです。ということは、免疫、体力、知力、実績、どの方面から見ても、人生レースの最高パフォーマンス時期は第1コーナーから第2コーナーまでで、第2コーナーを過ぎると、一歩一歩スピードは落ちるばかり、特に第4コーナーを迎えた60歳過ぎからは、ゴールまで何とか自分の足で辿り着けるかどうかが最大の課題で、青息吐息の段階にあるのは間違いのないことのようです。
「心は知能の老化を感じない」
これが長寿社会で人間が誤る桎梏であるのは、過去と現在のデータからも間違いないことのようで、現在の世界の戦争や紛争リスクも、どこかの国の停滞も、その多くがこの原因のように見て取れます。
今年は世界的に選挙の多い年。世界は変えられないけれど、自分は変えることができるので、まずは「隗より始めよ」と戒め、60歳を過ぎたら若い人に権限委譲を始め、彼らのサポートが役割と認識すべきというのが、事実とデータが示すところというのは間違いありません。
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