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雲南日本商工会通信2023年12月号「会長の挨拶」

 中学生の頃は、歴史の授業が特に好きではありませんでした。
 昔々、○年にどのようなことが起き、どうなったかということを暗記すること、そしてそれが試験に出されて暗記が得意な人は成績が良いなんて……。そんな、ちょっとした(少年ながらの)反発を理由に、真面目に歴史の授業に向き合わなかった自分ですが、今では、コツコツと暗記することが苦手で嫌いだったことの単なる言い訳に過ぎなかったと思っています。
 そんなわけで、日本史も世界史もちゃんと勉強してこなかった自分は、社会に出てからも歴史の話題についていけない事がしばしばありました。歳を重ねてこの国で日常生活をしていても、それで特に困ることはありませんでした。
 ところが、“歴史”という言葉に対する気持ちが“勉強”から“興味”に変わってきたのは、やはり自分の“年齢”に起因するものではないかと感じてきています。簡単に言うと、そんなことに興味が湧く年頃になっているのではないかと思うわけです(「年頃なんていう歳じゃないだろっ」と突っ込まれそうですがそれは人それぞれということで)。
 とは言っても、その興味を満たしてくれるのは本を読み漁るわけでは無く、動画でした。
 ウクライナ侵攻にはどんな背景があるのか、イスラエルの根深い問題とはどんなことか、宗教がどのような歴史を辿って世界にどんな影響を引き起こしているのか、そこから辿ってユダヤ人の迫害はなぜ起きたのか、更にはるか昔に遡ってローマ帝国は何故崩壊したのか……。
 このようなキーワードで歴史を辿っていくために本を読むには、大変な苦労が伴うわけで、Webで検索するという便利な手立てもありますが、それもやはり“自分で読んで噛み砕く”というスキル(と思ってしまうのは自分が苦手意識を持っているからですが)が必要になるわけです。
 そんなことから、知りたいときに易しく解説してくれる動画は、様々な歴史を容易に知ることができ、自分の興味をそこそこ奥深くまで満たしてくれる素晴らしいツールであると実感しています。
 そうして、戦争や宗教の歴史や顛末を眺めていると「国境線はいったい誰が作ったの?」という素朴な疑問が沸いてきます。
 戦争によって奪い取った植民地の権利は、「戦勝国が継承し、敗戦国は元の国に返す」というルールがあるようで、第二次世界大戦の敗者である日本はサイパンやグアム、パラオなどの統治権を返還しています。その後、先進国が統治していた国々でも、香港や沖縄のように協議によって返還されたり、シンガポールやパラオのように独立を認められたりなど、戦争とは違う方法で線引きされることも行われてきました。
 ここで一つ興味深く感じたのは、今でも東南アジアでは親日国と呼ばれる国が多く存在していることです。台湾、パラオ、ベトナムなどが特にそう感じます。
 それらの国を統治する背景は当然略奪にあり、殺戮や悪行を行使したうえで奪い取られた側からしてみれば、恨むことがあっても親しみを持つことなど考えられないと思うのが普通です。ところが日本が今では感謝されている主な原因は、統治後の統治の考え方の違いによるものにあるということが、歴史をひも解いてくると理解できるようになります。
 本来、戦争によって略奪した国は、略奪した国がその国を奴隷のように扱い、自国のために働かせて自国の利益のために利用するという仕打ちを受けることが多いようでした。
 ところが日本の場合、その国を日本国の一部として扱い、ともに発展するという観点から、統治後はトップに知識人や技術者を送り込み、インフラや産業の整備に注力しました。それが現在でも影響を残していることから、結果的には統治されていた国も日本に感謝している面があるようです。
 話は飛びますが、最近見た動画の中でチベットの問題がありました。
70年前に〇国が略奪後、世界地図には普通に〇国の一部として線が引かれています。海外から見ると、そのことを普通に受け入れている方が大半だとは思いますが、当のチベットの人々は、いまだに自分たちを〇国人とは思っていないようです。
 〇国の統治後、漢民族が多く移民し、チベット仏教を一切排除し、教育や結婚の管理を行うことにより、血統ごと国を変えてしまおうという行為がいまだに行われているようです(ここで詳細を語ると批判的な話と受け取られてしまいますので、もし興味のある方は動画等をご覧になっていただければと思います)。
 自ら反旗を掲げる力を持たないチベットは、〇国の統治を認める代わりに、自分たちの伝統や文化を維持していくことも認めてほしいと〇国に訴えているようですが、どうも耳を傾けてはくれないようです。“自分たちは生まれながらの文化や風習、宗教を大事にし、それを表に出すだけで迫害を受けるような暮らしから脱したいだけです”という現地の方の想いに胸を痛めました。
 今の時代に信じられないことですが、表だって戦争を仕掛けていく国があります。それは国益が目的であったり、宗教が原因によるものであったりもしますが、最近の私の心情の変化として、こうして表だって事を起こせなくても苦しんでいる国もあるのだということを、動画によって思い知らされた次第です。

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