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なのか展備忘録−Ⅳ 「ふぇ?」

今日は、itten様より出展された「ふぇ?」について。
itten様に関しては、僕は「TOKYO HIGHWAY」で知り、記憶したってイメージがあります。
シンプルさを突き詰めたコンポーネントが好き。

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「ふぇ?」

おそらく、今回の展示会場の中で一番目立っていたゲームはこの「ふぇ?」だったのではないかとそう思います。会場のど真ん中に、おおきな「ふぇ」が鎮座していたワケです。

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これね。サイズ幽霊と比較して見てください。




これは一体なんだろう? と気になって観に行ってみると、近くに似たような形のものを配置するゲームが置いてある。となると必然興味が湧くと、そういう作りになっているブースでした。上手だなと思います。

「ふぇ」を配置していくゲーム

気になる「ふぇ」の正体について軽く説明を受けた後、ゲームのルールについてインストラクションを聞きました。因みに「ふぇ」は、ミクロネシアのヤップ島というところで使用されていた石貨=石でできた貨幣なんだそう。真ん中に空いてる穴は、棒を突っ込んで担いだり紐を括って引っ張るためのものらしい。
会場に大きく展示されていたものが原寸大なんだって。すごい。

ゲームのルールは、1/50のレプリカ「ふぇ」を、街の中に配置していくというもの。ただし置き方には決まりがあります。

1.道には侵入できない
2.置いた「ふぇ」の穴から、一つ前に置いた「ふぇ」が見えるように置く
3.置く「ふぇ」は全部で7つ
4.7つ目の「ふぇ」は、最初の「ふぇ」の穴から見えるようにする

穴を辿って、「ふぇ」同士を繋いでいくわけですね。
ちょうど6人がブースに集っていたので、1人1枚ずつ配置することに。(最初の一枚はスタッフさん)


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「1枚目が大事なんですよ」と、中央付近のビルに置きながらスタッフさん。確かに、半端なところに置かれてしまうと後でだいぶ困ることになりそうでした。

そこからは試行錯誤の時間で、それぞれが自分の「ふぇ」を大事に持ちながら場所を探ります。

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僕はこの手前の角のところに置かせてもらいました。そのまま左側に展開して行って、ぐるっと回りながら登って行くのがいいかなと考えていたと思います。

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結果としては、僕の予想とは少し違う感じに。
同じ盤面を見ていても、プレイヤーそれぞれの位置や順番によって、見えてくるものが違うんだなあと実感しました。
これ、最後の方がなかなか難しくて上手くいかないこともあるそうなのですが、今回は後半のプレイヤーさんたちが上手で無事に完成させることができました。
拍手。


ストーリーを楽しむ

さて、話をミクロネシアに戻しましょう。
そもそも「ふぇ」とは何なのか。

これがお金であるというところまでは説明してもらってわかったんですけども、それ以上の詳しいことは特に解説されなかったので帰ってから調べてみました。


書籍にあまり当たれずインターネットからの情報収集が主になってしまいましたが、「お金」をメインテーマに扱った「BRUTUS特別編集 合本 お金の、答え。」内に於いて扱われているのを確認できました(最後の方に2ページほどです)。


「ふぇ」は、正式名称(?)を「フェイ」と呼ぶ、ヤップ島(現ミクロネシア)で使われていた通貨。日比谷公園に行くと、1925年にミクロネシアより寄贈された本物があるらしい(いずれ観に行きます)。

大卒初任給が50円ほどの時代に1000円くらいの価値で通用していたと言いますから、見た目より凄い価値あるお金だったんだとか。これらは主に結婚式等で送られたり、実際に取引に用いられたりしていた模様です。

大きさは様々で、直径50cm程のものから3m程のものまで。重さは何と5トンに及ぶものも存在しているんだとか。

しかし、その価値を決める要素は大きさだけではないのだそう。施された彫刻の美しさや円の綺麗さ、そして、その石の背景にある「ストーリー」が重要視されていたと言います。

「この石はパラオまで切り出しに行って、船に乗せて持ち帰る途中に酷い嵐に見舞われてしまった。必死の思いで持ち帰って来たんだ」などのように、背景にある物語を語ることで「なるほどそれはすごい」と、価値を付与することができたのです。

で、これ使って借金返したりとかもしてたんだって。
仮想の通貨かつ価値が変動するって、何だかだいぶ時代を先取りしていた感がありますね。

これはゲームなのか?

それはもう十全にゲームだったわけですが、結論が製作陣の意図とはちょっと違うところに着地しそうです。ご愛嬌。

何が言いたかったのかというと、「物の価値は、経験した物語で増幅できる」ということ。これはゲームにも確かに言えることだなと感じたわけです。

同じゲームを遊んでも、評価に差が出る事がある。

そうなる背景には「評価者のそれぞれが、ゲームの素点としての面白さに自分が遊んだ時の経験を足し引きして語っている」という前提があるのだと。

当たり前のことの再確認ではありますが、気付きとして書き留めておこうと思います。
負けたら悔しいよね。


「ふぇ?」も、多分会期中にひとつとして同じ展開になったことのないゲーム。
プレイヤー1人1人に、ストーリーがあるのです。

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