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事業買収をした人の話

約20年近く事業をしていると、様々な方と知り合いになることがあります。
今回の登場人物もそんな中の一人です。

今から、3-4年前頃になるでしょうか・・
ある大手のリサイクルショップを展開している会社さんからのオーダーが始まりでした。

こちらのお客様、リサイクル事業以外にも様々な事業展開をされていて、なかなか勢いのある会社さんでした。

リサイクルショップには日々いろんなものが持ち込まれるのですが、中にはそれ単体ではなかなか販売が難しいものもたくさんあるとのこと。

それら持ち込まれるものを使って、別の企画商品を打ち出そうという話でした。そして、その企画商品を生産をしてほしいという内容の依頼でした。

この企画、費用はリメイク代だけでさほどかからないし、売れるあてのない在庫もはける、なかなか良い企画に思えます。

ただ、私はこれはダメだろうな~と最初から感じていました。
詳しい商材を言うのは難しいのですが、ダメだと感じたのは以下の理由。

・持ち込まれた素材の企画を過去に何度もやっていたが、うまくいった成功例がなかった。
・営業マンの仕組みありきのアイデア商品のため、デザイン・機能的に凡庸な商品だった。
・そもそも、その商品を買う顧客像が全く想定されていなかった

何度かの試作を重ねて商品化。
クラウドファンディングなども積極的に活用されて、少しは売れたかなという感じでしたが、結局鳴かず飛ばず・・・

オーダーがストップして、1年程度経ったでしょうか・・・
そのお客様のことを忘れかけていたころに、一本の電話をいただいたのでした。
「ちょっと紹介したい方がおられるんで、伺ってもよいですか?」
もちろん、断る理由もなく。

数日後、いつもの担当者ともう一人の男性が連れ立って、工場にやってきたのでした。男性は、50歳手前といった感じだったでしょうか。

到着するなり、担当者はこう言いました。
「この度、今のリメイク事業をこちらの方に事業売却することになりましたので、そのあいさつを兼ねて伺いました。」

正直私は耳を疑いました。

リメイク事業といっても、もうほとんど稼働していないような状態。
しかも、事業ってそんなポップな感じで売れるのかというのも驚きでした。

私は不安半分、興味半分で事業売買の件を聞いたのです。
・M&A(事業売買)を手掛ける会社があること
・サラリーマンの副業として、事業買収がひそかに人気であるということ
・数十万というような少額での売買から可能だということ

非常に興味深いな~と思ったのですが・・・

50歳手前の方は、こんな状況でした。
・勤めている企業がかなりブラックで長時間労働&薄給に悩んでいる
・上司との人間関係も悪く、すぐに会社を辞めたい
・しかし、年齢的にも再就職は厳しく、自営業としてやるためにこの事業を買収した

「今後の人生のすべてを、この事業にかけているんです!!」
そんな言葉に、私は胸を締め付けられる思いがしました。

「今ほとんどこの事業は稼働してませんよ。しかも、大手の会社が資金力をかけてもダメなものを、何のノウハウもない個人がやっても成功するわけないですよ~」

こんなことを言いたい気持ちにもなったのですが、すでに事業の売買は成立しているし、担当者の顔も立てないと・・

結局、
「お仕事大変でしょうが、この事業が軌道に乗るまで副業とされてはいかがでしょうか・・」
そんな提案をさせてもらったのでした。

その後、その方からのオーダーは一度も来ていません。
元気でやっていてくれたらいいのですが・・・







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