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「メイカソンはコミュニティづくりの第一歩」——そう気付いた瞬間

前回は、ファブラボ浜松TAKE-SPACEの竹村真郷さんにJICAの技術協力専門家として来られた時の活動をご紹介しました。今回は、その竹村さんと交代する形でブータン入りされた、ファブラボ品川の林園子さんと濱中直樹さんのご活動についてお話したいと思います。お二人は、3月2日から13日までブータンに滞在され、最初の1週間はプンツォリンのファブラボCSTを拠点に活動され、最後の3日間は首都ティンプーで過ごされました。


1.専門家招聘の経緯

私が「障害と開発」とファブをつなげてとらえるようになったのはかなり昔のことなので、これについては別途お話したいと思います。今回お二人を招聘する直接のきっかけは、昨年6月下旬に当地にお越しになられた渡辺智暁専門家の現地活動です。

プンツォリンでは、市内にある障害児特別教育(SEN)指定校を訪問し、障害児の学習を支援する教員とも意見交換を行い、自助具製作や学校施設のアクセシビリティ改善に、デジタルファブリケーションの強いニーズがあることを確認しました。(中略)

ティンプーでは、ファブラボマンダラやスーパーファブラボを学生とともに訪問した他、脳卒中回復者とその家族への戸別訪問インタビューやブータン脳卒中財団事務所での脳卒中回復者のリハビリや生活改善、生計向上でのニーズを確認し、さらに市内スタートアップセンターの入居企業を個別訪問して、各入居者の事業内容の聞き取りと、デジタルファブリケーションの導入余地の検討なども行いました。これらの訪問にはすべてCST学生が同行しました。特に、7月の新学期に4年生になる学生にとっては、これらの訪問先は、卒業研究における試作プロジェクトのテーマ検討の材料としてだけではなく、カリキュラムに組み込まれているOJTの受入先ともなり得るため、渡辺専門家の訪問先での会話には、真剣に耳を傾ける様子が窺えました。

https://www.jica.go.jp/project/bhutan/012/news/20220711.html

これら現地での日程をひと通り終えたあと、渡辺専門家と私は、これらの潜在的ニーズに対して、日本から技術協力専門家として派遣できそうな人的リソースは誰なのだろうかと議論しました。真っ先に名前が挙がったのが、「ファブラボ品川」でした。

さっそく、私からお二人に連絡しました。直接お会いしたことはなかったのですが、SNS上で共通の知人がいて、その方の紹介で以前からつながってはいたのです。専門家招聘の打診に対して、お二人からはご快諾いただきました。作業療法士(林さん)、デザイナー(濱中さん)という、異なる視点から見られるよう、二人同時の派遣をご提案いただいたので、こちらも即了承しました。

当初の目標は、1月下旬の招聘で、主な活動はティンプーで、と考えていました。冬休み中のコミュニティ・アウトリーチ活動との位置付けです。その時期のティンプーなら冬休みを実家で過ごしているCSTの学生も多いだろうと考えたのです。ティンプーならJICAの医学教育プロジェクトのように3Dプリントに関心を持っている医療機関もあるし、理学療法士や作業療法士も、数は少ないとはいえいることはいます。林さんと濱中さんのお考えの障害者自助具づくりの体制が、その時期のティンプーなら編成しやすい―――私はそう考えました。

専門家派遣手続上の不手際があって、当初想定していた1月下旬の招聘は、実現できなくなり、3月前半に仕切り直しとなりました。これにより、1月なら冬休み中のCSTの学生を捉まえてティンプーで活動してもらおうと考えていたものが、ファブラボCSTがあるプンツォリンに場所を移すことになりました。また、幸か不幸か、その時期にはブータン脳卒中財団(Bhutan Stroke Foundation、BSF)代表のダワ・ツェリンさんが脳卒中の啓発活動のためにプンツォリン入りすることになりました。ダワさんはCSTでの学生向け啓発も行うと聞いていたので、そこで脳卒中と自助具製作に関心を持った学生を引っ張り込めそうだと予想しました。その方が、コミュニティベースのファブラボとしての活動の充実にもつながります。


2.活動の中心「ミニ・メイカソン」の準備

直前まで竹村さんの活動をサポートしていたこともあって、林さんと濱中さんの現地活動の準備は少し後手にまわりました。カウンターパートにも調整を頼んでいたのですが、例によって土壇場にならないと物事が動かない「ブータンあるある」には焦らされました。お二人がプンツォリンに到着されたのは3月2日(木)午後、翌3日(金)の放課後に市内の障害児特別教育(Special Education Needs)指定校、通称「SENスクール」を訪問し、校長先生と面談することができたのです。

SENスクールの校長先生と養護教員を説得し、障害を持つ生徒と一緒に来てもらうことが「メイカソン」開催実現に向けた第一歩です。一発勝負でしたが、うちのプロジェクトマネージャーのカルマさんも同行してくれて、私の説得に加勢してくれました。彼女もその学校に息子さんを通学させている保護者の1人なのです。

無事説得も奏功し、障害を持つ生徒2人、彼らを受け持つ養護教員に、週明けから4日間、ファブラボCSTまで来ていただけることになりました。毎日、麓のプンツォリン市街からファブラボのある科学技術単科大学(CST)まで来てもらうのは大変ですが、校長先生は、スクールバスを手配すると言って下さいました。

こうして、「ニードノウア」(障害を持つ人、その家族、ケアを担当される方の総称)の参加を確保して、次なる課題はメイカソンに参加してもらうデザイナーの確保です。SENスクールから戻り、すぐに私はウェブ上で参加者募集の告知を行いました。

ファブラボCSTホームページで掲載されたイベント情報

それでも学生が集められるかどうかはとても不安でした。竹村さんのワークショップはどれも2~3時間の単発だったので、イベント告知すれば1日で枠が埋まるという盛況ぶりでした。でも今回は放課後が4日間連続で拘束されます。応募を考えるにあたって、相当な意識の高さが求められるのは間違いありません。

幸いにもその翌日、3月4日(土)に、BSF代表のダワさんが、CSTの学生に向け、脳卒中対策啓発のための講話を行う予定がありました。ダワさんから、脳卒中回復者の支援として、工科大学の学生だからこそできることとして、自助具の話をして欲しいと頼まれていたので、私は自分に与えられた30分のプレゼン時間の中で、林さんと濱中さんの翌日以降の活動予定に関して思い切り宣伝し、特にメイカソンへの参加を強く呼びかけました。

CST学生向け啓発イベントで脳卒中発症時の即時対応について話すダワさん

この日、ダワさんの講話の裏日程で、CST教員は別のオンライン講義を受講していました。大学教育改革の一環でCSTに出入りしているシンガポール人コンサルタントから、「出席必須」と義務付けられ、大学側では検討の結果、全教員と4年生はこのオンライン講義受講の方に振り分けられました。結果的に、ダワさんの啓発講話を聴いたのは1年生から3年生までの学生のみでした。教員不在は残念ですが、秋以降も大学に残る学生にメイカソン参加経験を持ってもらうのは、意味があることだと思います。

この啓発イベントの直後から、メイカソン参加希望者が急増しました。定員10人はすぐ埋まりました。他にも、「定員オーバーして申し込めないけれど、参加できませんか」と個人的に相談してきた学生もいました。プロマネから特に応募勧奨があったわけではないですが、自然体で募集して15人も集められたのは、このイベントへの参加自体に意義を見出していた学生がそれだけいたということなのかと思います。


3.ミニ・メイカソンの前に

3月5日(日)、林さんと濱中さんには、CSTの学生を主な対象に、「3Dスキャン」「3Dプリントの材料選択と後処理」という2つのワークショップを主催していただきました。3Dスキャンは、粘土などで造形した複雑な形状を三次元データ化するための技術で、特に自助具製作では必要となる場面があります。

ちょうど1週前の日曜日に、竹村さんにやっていただいたユースセンターでの3Dスキャン講習会では、持って行ったEinScan Proが会場でうまく作動せず、スマホアプリで対応せざるを得ませんでした。でも、今回はファブラボを会場にし、スマホアプリ「Qlone」の操作実習から入り、EinScan Proを使ってみるところまで到達することができました。

Qloneを操作してE氏の胸像をスキャン
EinScan Proを使った3Dスキャンの実践

午後の部は「3Dプリントの材料選択と後処理」です。ファブラボCST開所後、利用者はこれまで、使い勝手のよい「PLA」と呼ばれる生分解性プラスチックの固い材質のフィラメントをもっぱら用いて3Dプリントを行ってきました。しかし、今回、お二人には、やわらかい素材の「TPU」フィラメントや、ファブラボ品川がユニチカ株式会社と共同開発した「TRF+H」というフィラメントも紹介して下さいとお願いしました。

用途に応じて原材料を使い分けること、さらには3Dプリント後にヘアドライヤーで熱風を当てて、形状を整える後処理の技法について、参加した学生は実際に体験しました。PLA以外の素材のフィラメントを用いたハンズオン研修は、おそらくブータンでは初めてでしょう。

「リボンを作ろう」との呼びかけに集まって来た学生諸君
TRF+Hにドライヤーを当てて、ひねって作ったイアリング
この蝶ネクタイは4月15日のCSTファッションショーでお披露目される…かも!

4.ミニ・メイカソンの推移

これらの講習会を踏まえ、3月6日(月)から9日(木)まで、障害児向け自助具の試作に取り組むミニ・メイカソン「小さいけれど、意味あるものを作ろう(Let’s Make Something Small But Meaningful!)」が行われました。SENスクールから来てもらった「ニードノウア」と、CSTで募集した学生デザイナーが一堂に会し、これら参加者が2グループに分かれ、各々の「ニードノウア」のニーズに合った自助具を短時間でデザインするというイベントです。

ミニ・メイカソンは、連日午後4時から6時30分まで行われました。それぞれのプログラムはざっくりと以下の通りです。

【1日目】ニードノウアへのインタビュー
【2日目】アイデアをスケッチしてグループ内で意見を出し合い、共同で取り組む自助具を決める作業
【3日目】アイデアスケッチをもとに試作(プロトタイピング)
【4日目】試作の続きと成果発表

この間、ニードノウアは学校が用意したスクールバスで毎日ファブラボを訪れ、デザインを担当する学生グループから寄せられる質問や、実際に自助具を使用する生徒の手や指、手首などの採寸に応じました。

初日冒頭での林さん・濱中さんによる説明

CSTでは、ハッカソンやアイデアソン、ビジネスアイデアコンテストなど、オープンイノベーション創出促進イベントはこれまでたびたび行われてきました。でも、実際にその試作品を使う人がデザインのプロセスに最初から関与する形態はこれが初めてでした。しかも、デザイン共創の相手が、これまでほとんど交流する機会のなかった、ブータン国内でも指折りのエリート学生と障害児やその父兄、養護教員でしたので、特に初日は、両者の間で、お互いどう接していいのか戸惑っている姿もよく見られました。

特に、障害児のお母さんから、「この子を家族の介助なしで歩けるようにさせたい」との希望を耳にしたグループは、「それをやるには電動のシステムが必要で、僕たちにはそんなものを作る力はありません」と不安を口にしました。なぜだか、今回の参加者のほとんどが、土木工学科の学生たちだったのです。林さんは、「2つめ、3つめに解決したい小さな困りごとはありますか」と尋ねるように仕向けておられました。

緊張の面持ちのグループA
緊張の面持ちのグループB

しかし、2日目になると明らかに緊張がほぐれてゆき、学生とニードノウアの間での活発な意見聴取が行われるようになりました。学生が思い描いた仮説に対して、障害児のお母さんや養護教員がその子がふだん使用している文具や食器なども見せ、それが今はどのように使われているのかを説明して、デザイン改善に向けた提案をしたりする姿も見られるようになりました。

私はその様子を横から見守っているだけでしたが、両者が積極的に意見を出し合う様子を眺めていて、この化学反応が長年自分が見たかったものなのだと改めて思いました。あまりエモーショナルなことは文章で書かないよう心がけていますが、このシーンには少し目頭が熱くなりました。

2日目、学生とお母さんが意見を交換する
アイデアスケッチ、現在考え中
出来上がったアイデアはボードに貼り出してシェア

3日目の試作では、学生グループの作業は主に工作機械が置かれた作業スペースで進められました。ニードノウアは研修会議室で待機し、学生から時折寄せられる相談や確認に応じました。同行した母親や養護教員は、「こんなものは作れるのか」と、新たな自助具や教具のアイデアを、ファブラボのスタッフに持ちかけるようになりました。教員の中には、自ら3D CADプログラム「Tinkercad」の操作を始めて、学校で必要なものをデザインしてみたりする動きが見られました。

メイカソン3日目終了後も、学生の試作は深夜にまで及びました。くしくもこの日(3月8日)は「国際女性デー」で、国連で定めた国際デーにはきわめて忠実なブータンでは、各組織機関ごとに国際女性デーを祝う式典が開かれます。CSTも例外ではなく、この日は学生会が主催して、夜7時30分からホールで式典が開かれました。主賓はなんと林さん。昼過ぎになって突然学生会長がファブラボを訪れ、主賓になってほしいと懇願されました。全学生が出席したこのイベントは夜9時まで続きました。この式典に正装で出たメイカソン参加学生は、式典終了後、再びファブラボに戻って作業を再開しました。一部の作品については翌朝も3Dプリント出力が続きました。

国際女性デー記念式典で檀上で踊るメイカソン参加者
式典が終わるとファブラボに戻って来て作業再開

4日目も最初の約2時間は試作品の完成作業に時間が割かれました。3Dプリンタだけでなくミシンまで使い始めたチームも現れました。昨年12月にプロジェクトが主催した学生インターン向け1日縫製研修に参加した学生がメイカソン参加メンバーにおり、ミシン操作を知らない他の学生に彼らが教えるという姿も見られました。

ミシンが使える学生が、初めてという学生に教えている

17時50分、2つのグループが、計6点の自助具の試作品の発表を行いました。多くは、ニードノウアである2人の障害児生徒(1人はそのお母さん)が好きだと答えた「書くこと」をサポートする道具でした。実際に自助具を装着して、筆を持って絵を描く生徒には笑顔も見られました。

両グループによる成果発表
プレゼンだけでなく、実際に装着してもらう
両チームとも、ペンアシストにフォーカス
4日間同席して下さったSENスクール代表の先生のご挨拶

5.ミニ・メイカソンでの気付き

短期間で行われるメイカソンで、出てくる自助具アイデアは大きなものではありません。すぐに実装できないかもしれないし、ニードノウアが最もなんとかしたい大きな課題に直接ソリューションを与えるものではないかもしれません。ミニ・メイカソンを通じて気付かされたのは、むしろ、これがデザイナーとニードノウアが出会うきっかけに過ぎず、4日間一緒にデザイン共創に取り組むことで、お互いの理解を深め、信頼を醸成するプロセスだったのではないかということでした。

1つ一緒に作ってみたものが生まれると、それなら次はもっと何か考えてみようとなります。こうした出会いをきっかけとして、次につなげていく活動をさらに繰り出していくことが、お互いをつなげて大きな共創のコミュニティにつながっていくのでしょう。

自分でデザインした教具を持って帰られた先生方に、次は何をデザインしてもらうか。また、先生から相談を受けて私がメイカソン会場場外で取りあえずデザインしてみた教具も、実際に使用されている現場を目視確認して、さらに試作を進めていくことが今後必要です。

児童に同行して下さったお母さんからのご要望に応えて、我が子に使いやすいスプーンホルダーを、取っ手の厚さに合わせて2種類作ってお渡ししたところ、お母さんからは、「今度はうちの子に合った鉛筆ホルダーは作れますか?」とか、「うちの子の友達に合ったスプーンホルダーは作れますか?」とか、次なる問いを投げかけて下さるようになりました。こういう問いにちゃんと応えていくことが、信頼関係の維持と発展には必要でしょう。

一方、デザインする側への働きかけも考えておかねばなりません。今回ミニ・メイカソンに参加した学生が取り組んだプロジェクトは、その試作のプロセスもすべて参加者により記録が取られていて、ファブラボCSTのホームページ上ですでに公開されています。でも、公開されども完成はしていません。試作品は最終日に発表はされたものの、実装には至らなかった試作品の残骸が、ファブラボにはまだ残っています。 

少なくとも、実装できそうなものは実装するまでに持って行き、実装に至らなかったものは課題を整理して記録に残すところまでは、彼らにも頑張ってもらいたいものです。

この「文書化」は、ファブラボ憲章にも謳われているファブラボのネットワークの重要な理念の1つだと理解しています。実際にこういう文書化に取り組んで製作プロセスを公開しておくと、思わぬところから「一緒にコラボしたい」との申し出があったり、こちらがやっていることを他所に展開する時の関係者向け説明にも使うことができます。そうしたメリットを、ミニ・メイカソン開催後の10日ほどの間に、実感する機会が何度かありました。

そしてその上で、この取組みは「次」が必要だと思います。今回は土木工学科の学生がやたらと多かったわけですが、これを他の学科にも入ってもらってもっとバラエティに富んだ知見を盛り込めるようにしていきたいです。

今回は私の事前準備不足で、近隣の看護学校「アルラ医学アカデミー(Arura Academy of Health Sciences)」から、看護学生の参加者を受け入れるまでには至りませんでした。また、ファブラボ品川の林さんと今回約10日間のブータンでの活動に同行させてもらってみて、作業療法士さんや理学療法士さんの視点がこの試作プロセスに反映されることの必要性を強く感じました。

デザイナーの視点で一見「良かれ」と思ってデザインした器具が、実はそのニードノウアの成長を阻害する可能性もあると聞くと、デザイナーやエンジニアが自分の視点だけで作ることのリスクを感じずにはおれません。次やる時には、作業療法士さんや理学療法士さんがご参加いただけるような時期と場所で、やってみたいものです。

「ミニ」がついたとはいえ、4日間にも及んだメイカソンですが、なんとCSTの学長がフルタイムで同席して下さいました。プロマネのカルマさんは、初日のニードノウアの障害を持つお子さんの様子を見たあと、自宅で息子さんと会って涙ぐんだと聞きました。「私たち教員には、地域にこうした子どもとその親が暮らしているという現実を見ないで済ませてきました。地域とファブラボがつながるとはどういうことなのか、今回のメイカソンでよくわかりました」と言っていました。油断は禁物ですが、ファブラボに対するCSTマネジメントの姿勢が、大きく変わるきっかけになったかも。


6.ミニ・メイカソン以外の専門家活動

最後にあと3つ、林さんと濱中さんがやられたことをご紹介します。

1つめは、プンツォリンの脳卒中回復者と会って、そのニーズに基づいてリハビリ用器具をデザインして、お渡しされたことです。短い滞在期間ですが、何か現地でインパクトを残して帰りたいとのご希望があり、2つほどのつてをたどって2人のニードノウアとの面談を実現させました。こうして1人はすでに器具を使っていただいていますが、もう1人は時間的制約もあって、お二人が帰国されたのちに私がお届けに上がりました。まだ改良の余地がありそうでした。

ニードノウアの指回りを巻き尺で採寸
1日後、リハビリ用のボールを出力してお渡ししました

2つめは、ティンプーでちょうどこの時期に行われていた障害者向け縫製技能研修の見学です。2月末からスタートした4カ月研修で、3つの障害者団体からノミネートされた受講生が集まり、月曜から土曜まで、ミシン操作やアイロン操作、型紙づくりとハサミでのカットなどの操作を習います。

私たちが見学した時は、主催者から提供された端切れを使ってミシン操作を習っているところでした。どちらかの手が不自由だったり、ペダル操作が難しかったりと、障害の程度によって、ミシン操作において求められる自助具は違います。90分ほどの見学の間に、林さんはお気づきになったことを主催者にはアドバイスされていました。すぐに出力できる3Dプリンタがあれば、アイデアスケッチからの試作も一度はやってみることができたかもしれません。ティンプーで自助具製作を考えるなら、現地のパートナーが必要なのですが…。

障害者向け縫製技能研修の様子

3つめは、その研修会場に来ていた1人の脳卒中回復者に、彼女のニーズに基づいて日本で試作が行われた自助具(タオルで背中を洗うために、タオルの両端に装着してタオルを引いたり押したりできるようにするもの)を手渡し、フィッティングを行うことでした。別の機会にご紹介したいと思いますが、2月24、25日と東京のJICAの本部で、本部勤務の若手職員数名が参加して、小規模なメイカソンが開催されました。その際のニードノウアが、このティンプー在住の脳卒中回復者の女性だったのです。

最後までご覧下さり、ありがとうございました。

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