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【雑感】この国に来る前に、やってたことが報じられる

2019年9月から2023年3月まで、名古屋大学大学院経済学研究科に留学していたペマ・ドルジ君から、昨日LINEにメッセージが入り、彼が執筆した「道の駅~ブータンに送る日本の教訓」というエッセイが、ブータンの全国紙クエンセルの5月6日(土)版に掲載されたことを知らされました。

紙版のイメージはこんな感じ、全文は下記リンクからご覧下さい。

もう1つのSSブログ「サンチャイ★ブログ」の方で取り上げてもいいような内容ですが、さすがに冒頭から私の名前が実名で載ってしまっているので、一応匿名でやっているSSブログの方では扱いづらく、しかも派遣されているプロジェクトの名前が冒頭から載っているのなら、プロジェクトのいい宣伝かもしれないとポジティブに捉えて、今回はnoteの方でご紹介します。


私がブータンに来る前にやっていたことに触れた箇所は本当に冒頭に部分だけなので、エッセイ全体の趣旨についてはここでは触れません。ペマ君がクエンセルに寄稿するのは今回が2回目です。今年2月には、日本の「ふるさと納税」について紹介し、今回は「道の駅」です。財務省マクロ経済局出身の彼は、JICAの留学生支援無償制度で選抜されて2019年に初めて日本に留学した一期生唯一の博士課程留学生です。彼が3年半にわたって見聞してきた日本の経験は、今後のブータンの公共政策となって、経済社会開発に生かされていくことが期待されます。

もともと、公務員に学位取得機会を提供し、日本の大学で勉強している間に、日本のさまざまな政策制度構築の経験についても学んでもらおうというのが、JICAの留学支援制度の目的だと私は理解しています。その意味で、ペマ君がやってくれたクエンセルへの寄稿は、その期待にも沿った大きな成果だといえます。ブータンから公費派遣されている他の留学生もこれくらいのことは最低限やって欲しいところですが、残念ながら学位取得の方で手一杯で、さらに本邦滞在中に「日本の経験」をリサーチし、何らか論文にまとめて母国で紹介するというところまで到達できたケースは他にまだありません。

ペマ君の寄稿の冒頭で紹介された通り、私は、ブータンに派遣されてくる直前まで、岐阜大学や名古屋大学に留学していたブータン人学生を、揖斐川上流域の水力発電所やいくつかの地域おこしの現場、道の駅・池田温泉、ソフトピアジャパンなどに連れて行っていました。2021年3月末に父が他界し、実家で行われた中陰法要の多くを手伝う必要があり、私はブータン出発直前まで多くの時間を故郷の岐阜で過ごしました。法的手続きや相続、法事などに追われましたが、それでも時間の余裕が多少あったので、ブータン人留学生に声をかけて、車で案内して回ったのでした。

同じようなことは、ブータンから日本を短期訪問した昔の部下の東京滞在中の空き時間に、東京近郊でも試行していました。単に都心で食事会を開くだけにとどまらず、週末に東京都檜原村に連れて行き、地域おこし協力隊員の方を訪問してインタビューをアレンジしたりもしました。その時も、「「地域おこし協力隊」という制度のことを、クエンセルに寄稿しろ」と念を押し、そのためのリサーチをさせたつもりだったのですが、その彼ですら、今に至るまでそうした寄稿はしていません。

檜原村って、ブータンとすごく似ていて、檜原村で取り組まれていることって、結構ブータンには参考になると思ったんですけどね(苦笑)。

ブータンの人は、弁は立つ人がすごく多いのですが、文章を書かせると「あれ?」っていう感じの人がけっこういます。作文、苦手なんじゃないかという印象です。


そんな中で、ペマ君のように書いてくれる留学経験者が出てきたことは素直に嬉しいです。また、大したことやってないですけど、自分がブータンに駐在している間に仕事としてやったことではなく、日本にいる時に個人的にやっていたことが、こんな形でブータンで報じられるというのも、なんだか恥ずかしいような、でもちょっと嬉しい気がします。

ペマ君のエッセイの冒頭、第一段落の最初の行でいきなり私の名前が出てきたおかげで、職場の同僚からメッセージをもらうは、知らないブータン人からFacebookの友達申請が舞い込むは、なかなかの反響ぶりでした。

ちなみに、ペマ・ドルジ君は、経済学博士号を無事取得して3月末にブータンに帰って来ました。今後は「ふるさと納税」と「道の駅」のブータン版を導入すべく働いていくとのことですので、活躍を楽しみにしたいところです。でも、実は彼にはもう1ヵ所私が連れて行った「ソフトピアジャパン」についても、いずれ彼自身の言葉で、スポットライトを当てて欲しいと期待したいです。いや、決め打ちで「ソフトピアジャパン」とは言わないまでも、地域開発と大学の連携とか、地域の中小企業振興とファブ施設の役割とか、今のブータンがうまく取り組めていないところにも、光が当たるといいのですが。

そういえば、それらしいことは、私も以前、別の機会にブータンの学生向けにオンライン講義でしゃべったことがありました。ペマ・ドルジ博士の語る「日本の経験」に期待するだけではなく、私自身も自分のリサーチを文章化して、自分なりに「日本の経験」を語っていかないといけないですね。


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