恋愛ってなんだろう

好きな人がいた。
中学校の同級生で、2年生で初めて同じクラスになった人だった。明るくて、いつも輪の中心にいるようなタイプで、正直仲良くなる前は怖いイメージがあったのだが、隣の席になって話してみるとめちゃくちゃ気さくで、趣味も合ったし、あっという間に仲良くなった。

｢話してると楽しい｣からだんだん｢好き｣に変わり、2年生が終わるぎりぎりのタイミングで告白した。結果見事に断られた。でも｢友達のままで｣という言葉通り、次の日からもお互い今まで通り自然に接することができて、変わらず仲の良いまま、3年生でも同じクラスになった。

3年生になるとお互い別の恋人ができた。私にも彼氏がいた。彼氏のことはちゃんと好きだった。でもなんというか、その人の存在は常に心の片隅にあるというか、ずっと気にはなっていた。その人に彼女ができても全然嫌な感情にはならなかったし(むしろめちゃくちゃ応援していた)、数ヶ月後別れてしまった時は残念だなあとも思ったけど、話すとやっぱり楽しかったしなんだか嬉しかった。

結局仲のいい友達のまま中学校を卒業した。春休み中に私は彼氏と別れたけど、別にその人と何かあるわけでもなかった。連絡もほとんど取っていなくて、駅でばったり会った後に｢偶然だったね〜｣みたいなLINEをしたり、誕生日におめでとうの一言を送ったりする程度だった。お互いそこまでSNSを更新するタイプでもないので近況もあまり分からないまま、高校卒業の時期がやってきた。

で、私は友達と卒業旅行に行っていたのだけど、そこで上げたインスタのストーリーに珍しくその人が反応してきた。そこから会話が始まった。高校はどうだったかとか、大学はどこに行くのかとか、後は色んな近況報告とか。けっこう長くやり取りが続いた。

そこからまた特に連絡も取らないまま大学生活を送っていたのだけど、夏頃に｢ご飯行かない？｣という連絡が来た。唐突に。でもまあ、私も久しぶりに会ってみたかったし、深く考えないまま予定を決め、実際にご飯を食べに行った。

久しぶりに会ったその人は全然変わっていなかった。正直、ちゃんと会って話したのは中学の卒業式の日以来だったので上手く話せるか不安だったのだけど、そんなこと気にならないくらい会話が弾んで、とても楽しい時間だった。

で、解散して、楽しかったねーみたいな連絡をして、次は映画に誘われた。食事の時に観たい映画の話をしていて、二人とも同じ映画を挙げていたのだ。不自然ではないけど、映画はなあ…みたいな気持ちもあって、でも断る理由もないので1週間後に映画を観に行くことにした。

正直、映画に誘うってそういうことなんじゃないの？と思う自分もいた。周りの友達に話しても同じような反応が返ってきた。まあ分かる。でも、なんというかその人との間には友情しかないと思っていたし、実際中学の時だって好きでもない私を買い物に誘うような人だったので今回もそういうことだろうと思ってしまっていたのだ。いや、80%くらいそう思っていて、20%はもしかしたら…という気持ちがあった。

当日。待ち合わせ場所にいたその人は相変わらずな感じで、この前あった時と特に変わった様子のないまま映画館に向かって、そのまま映画を観た。
そして帰り道。映画の感想とかを言いながらだらだらと駅まで歩いていた。｢おまえあそこでビビってたろ｣｢いやビビってないし｣みたいな、軽い会話をのんびりしていた。で、沈黙。空気が変わるってこういうことなんだってくらい、何か違う感じがした。

｢○○さあ、彼氏いないの？｣
この言葉を聞いた瞬間、ああそういうことなんだ、と察してしまった。
｢いないよ｣
そう答えて、
｢好きな人は？｣
と聞かれる。
｢それもいない｣と答えると少しまた沈黙が流れて、
｢じゃあ付き合わない？｣
と言われた。

その言葉を聞いて、私はひどくがっかりしてしまった。迷う余地なく｢無理だよ｣と言った。それを聞いたその人は｢え？なんで？｣と不思議そうに聞いてきた。｢なんでって、好きじゃないし｣と答えると、その人は｢そっかー、いけるかなって思ったんだけど｣と言ってきた。

なんだかとてつもなくがっかりしてしまった。久々に会って、前と変わらない距離感で話ができて、やっぱり楽しいな、それで良かったのにって。

でも冷静に考えれば中学生の時彼も同じ気持ちになっていたかもしれなくて、｢友達だと思ってたのに告白されて残念だ｣って、当時の私にも当てはまるわけで。そういう意味ではお互い様なのかもしれない。

自分勝手かもしれないけど、振られたけどいい恋だったな、って、私の中でその人との関係は完結していたのだ。でも、そんな自分の中での｢いい恋｣が大学生になってから｢ワンチャンあるかも｣に使われてしまったような気がして、それが残念で仕方なかった。

恋愛って本当に難しい。