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毛糸と羊と毛織物

羊の毛を糸に紡ぐと毛糸になる。
毛糸というとセーターを編むような太いものを思うが
うんと細く紡いだ毛糸を織ると普通に布になる。
これがいわゆる、毛織物。

ウールは優れた性質の繊維で
軽くて・保温性が高くて・水をとどめない。
若いころ少し山に登ったが
その頃はちょうど登山用の服として
ウールに代わる新しい化学繊維が出てきた時代だった。
ただ、それを使った高性能の登山用の服はまだまだ高くて
まだまだウールを便利に使っていた。
雲の中を歩いてびっしょり濡れても
水気は肌に留めずにすぐに外側へと吐き出してくれた。
(ただ、摩擦には弱かったが)
もちろん、こういうハードな使い方でなくても
スーツやコートなどでおなじみの繊維だ。
さて
ウールの高級服地といえばメリノだが
このメリノ羊1頭から刈り取れる原毛は4キロ程度。
でも、糸に紡げるのはそのうちの75%ほど。

腹の下や脇、頭などは摩擦でフェルト状に固まっていたり
ウ○コで汚れていて、いい糸にはならない。
さて、この選り抜かれた3キロの原毛を紡いで織って仕立てると
男性用スーツが一着できる。
羊1頭=スーツ1着。

想像してみてほしい。
サラリーマンが着ているのは、実は羊の着ぐるみなのだ。

ちなみにこのメリノ種はその毛の品質もさることながら
歩留まりの高さも特徴で。
つまり、1頭分の毛を刈り取って、糸に紡げる割合が75%というのは
羊の中でも最高なのだ。(普通は6割程度、と思った)
スペインの毛織物産業を支えていたのがメリノ羊で
国外には出さない国の宝だったのが
スペインの無敵艦隊がイギリスに敗れてしまってのう。
今ではメリノ羊が一番多いのはオーストラリアなのだと。

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