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映画「東京組曲2020」コロナ禍で編み出された新手法

イントロダクション

この映画は、あるルールの下、これまでにない手法で製作された映画です。
そのルールとは、俳優が自分の物語を自分で演じ、それを自分もしくは同居家族などが撮影するというものです。2020年、春、世界中に蔓延した新型コロナウイルス感染症と一連の緊急事態宣言による活動自粛。大所帯で動かざるを得ない映画撮影。相容れない二つをなんとか乗り越えたい一心からスタートしたと言えると思います。

この時、映画監督の三島さんは、5年以上準備してきた映画の撮影開始直前の緊急事態宣言発出を受けて、撮影中止の憂き目に遭っていたそうです。

ぽっかり空いたスケジュール、未曾有の事態を記録したい気持ち。

折しも、Youtubeなどで自撮りの緩い作風も自分語りも受け入れられる観客の下地は出来上がっており、それを映画にするハードルは下がっていたと言えるでしょう。
機材も進化して、画質なども耐えうるものが撮れる時代でもあります。

役者側にとっても、仕事が止まる、オーディションなくなる、バイトなくなる、友達にも会えない、悶々とする日々に、俳優として、表現者としてできることを熱望、多くの参加者が即刻参加を決意したようです。

各エピソードには、生々しいあの時の思いが詰まっていて、観る人それぞれの想いと重なったり、過酷さに胸が詰まる想いを受け取ったりする筈です。あまりどんな人が出てくるのか知らずに見た方がいいかと思います。

自撮りや身内の撮影による映像は、そのような関係性でしか撮影できなかったような表情や空気が収められ、一方で編集作業を経ることでしっかりと研ぎ澄まされた作品に仕上がっていると思います。

以上、上映後の舞台挨拶を聞いてのご紹介でした。

内容にかかわる感想編

実家に帰るものの、ウイルスを持ち込んでしまう恐怖にがんじがらめになっている佐々木史帆さん。実直にガイドラインを遵守することで何とか自分を保っていたのだと思いますが、限界に達してしまう。お母さんはそんな事態にも冷静に対処して、丁寧に言い聞かせてていて、さすが母親だなと思うのですが、若い人にこんな辛い思いを強いていたのかと思うと胸が潰れる思いで見ました。ただ、いくら政治の言う通りにしたって、いざって時になっても誰も責任なんて取ってくれないよ。自分で判断することが大事だよ、と今だから言えるのかもしれないけど、若い人には知って欲しいです。

また、この映画の副題、alone togetherですが、会えない辛さの一方に、二人のお子さんが休園で終日家にいるご家庭のお母さんでもある田川恵美子さんのストレスマックスには、1番自分が知ってる感覚であり、共感しました。夫である俳優さんは、妻の発する妖気を察知して子供を連れて公園に行ってくれます。これに気が付ける男性というのも、もしかして役者という人の内面の動きに敏感な特性ゆえではないかなと。自分の子供なんだから面倒見て当然だとか、みんな同じ状況で頑張ってるとか、分かってるだけに表に出せない苦しさ、夏休みが1秒でも早く終わってくれと思っていた自分を思い出したエピソードでした。

以上、長文お付き合い下さりありがとうございます。
あの、もしよろしかったら三島監督作品の過去記事もいかがでしょうか。



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