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「ひとつだけ」by 清志郎&矢野顕子 の幸せなデュエット for しあわせのパン

しあわせのパン
出演:大泉洋、原田知世
監督:三島有紀子
2012年公開
主題歌: ひとつだけ

映画で知る音楽、音楽で知る映画の第三回目です。
この映画は美しい北海道の大自然の中、小洒落たカフェ兼プチホテルを切り盛りするナチュラル系夫婦、そして訪れる不安や悩みを抱えた個性的登場人物たちが、心もお腹も満たすパンによってしあわせを見つけるお話しーだったかな、多分。

「ひとつだけ」は、1980年の矢野顕子さんのアルバム、「ごはんができたよ」に収録されている、矢野さんの代表曲です。この映画で使われているのは、忌野清志郎とのデュエットバージョンで、2006年のアルバム、「はじめての矢野顕子」に収録されているものだと思われます。

矢野さんが歌う『ひとつだけ』は、既にレジェンドとなった素晴らしい曲で、コンサートでも必ず歌っていると思います。しかし、私がNHKーFMで初めて忌野清志郎バージョンを聴いた時の衝撃は、今も忘れられない体験でした。ライブイベントの録音が、当時熱心に聴いていた『サウンドストリート』でオンエアされたものだったので、その後ずっとまた聴きたいと強く思っていたものの、実際に音源化されたのが2006年で、20年ぐらい経っていたのだと思います。わたしの知る限り。

アッコちゃんが「あなたの心の白い扉」と歌っているところを、清志郎は「君の心の黒い扉」と歌っています。ダークな部分を掘り下げられる感がなくもないです。

映画で使われるのは最後のクレジットの時だけでしたが、どちらかと言えば、映画のイメージからは、矢野顕子バージョンの方がほんわか感が似合っていたのではないかと思いますので、なぜデュエットバージョンにしたかと言えば、三島監督が私と同じく清志郎が好きだからではないかと勝手に推察。公開当時、映画館で見ましたが、この曲がかかるとは知らなかったので、おお!と思ったものでした。

映画館に見に行ったのは、三島監督がわたしの大学の後輩であるのみならず、サークルの後輩でもあったからです。面識はないので、この映画を観た時は、ほんわかした人なのかなと思ってしまいました。いえいえ、そんなほんわか系の人は自主映画から商業映画の監督に登り詰めることなど出来ませんて。失礼しました。最新作の『Red』や初期のドラマ『硝子の葦』もご覧下さればと思います。

三島監督は人も羨む有名俳優を次々と起用しながら意欲的に活動なさっています。なぜそんなに人気俳優を次々使えるのかと不思議にすら思っていましたが、ある時、お話を聞いて感じました。相手を見る力、自分の考えを伝える力、そうする意欲がすごい方ですね。これも才能。

忌野清志郎様は2008年、この世を去ってしまいました。彼の反原発運動に微妙な気持ちだった人も少なくなかったかもしれませんが、その3年後に起きた原発事故で彼の正しさが証明されてしまいました。

個性あふれる魅力的な歌唱と言う点では男女の頂点とも言える二人のデュエットは個性が絶妙に合体しています。映画の最後にちょっと気持ちが上がって席を立つ事が出来ました。また、矢野顕子さんの清志郎へのレスペクトは、2013年、「矢野顕子、忌野清志郎を歌う」というアルバムに結実しています。

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