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Blackkklansman でJimi Hendrixを想う

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2020年、Black Lives Matterをテーマとした人種差別反対運動が盛り上がりました。そしてその動きに反発する運動もまた火に油が注がれたようでした。無抵抗の男性が懇願したにも関わらず、人前で警官に無惨に押さえ付けられて息絶える動画を見るなんて、映画を超えるショッキングな事件でした。

多くの映画や文学に、人種の問題とその苦しみや不条理が描かれています。個人的に、幼少期には「アンクル・トムの小屋」、テレビドラマシリーズの「ルーツ」は、今も主人公、クンタキンテの名前が記憶に残る程です。少年がアフリカで生け捕りにされた挙句に奴隷市場で売られて綿花畑で奴隷として働くなんて、子供心に恐怖が植え付けられました。その後、人種問題について新しい側面から描いた作品としてスパイク・リー監督作品に出会いました。大学時代、「ドウー・ザ・ライト・シング」、「ジャングル・フィーバー」を観て、その臨場感、スピード、センスの良さ、色々な面で新鮮かつ衝撃でした。その頃のスパイク・リーはまだ若々しい青年で役者として前面に立っていました。

そして今年、殆ど何も知らずに観たのが本作、「ブラック・クランズマン」でした。白装束とトンガリ頭巾がトレードマークのKKK、過激な白人至上主義団体に黒人警官が電話でコンタクト、同僚のユダヤ人警官がその人物を名乗って組織に加入するという、難易度高すぎな潜入捜査の物語です。信じられないけれども実話で、原作は当の黒人警官のロン・スローワースご本人によるものです。黒人のKKKをもじったタイトル、翻訳不可能につき、原題のまま。人種問題の映画といっても、エンタメ性も高くスリル満点に作られている上に全てがカッコいい。ファッション、インテリア、音楽など、当時の空気を醸すディテールも存分に楽しめる映画です。勿論音楽もカッコいい!音楽はテレンス・ブランチャード。スパイク・リー監督映画の音楽を数多く手掛けているジャズミュージシャン、トランペット奏者です。

舞台は1970年台のコロラド州コロラドスプリングス。しかし、現在と過去の映像や古い映画の断片が挿入され、差別が過去の問題ではない事を強く意識させられます。この映画制作中にシャーロットヴィルでの事件があり、その現場の映像はご遺族の承諾を得て急遽取り入れたそうです。

主題歌と言えるのは、Blut Und Boden (Blood and Soul)。作中幾つかのバージョンで演奏されるギターの旋律は強く印象に残ります。トランペット奏者の作曲者ですが、なぜギターを使ったのか、なぜこんなに心に届くのか、テレンスのインタビューを聴いて理解できました。ジミ・ヘンドリクスがウッドストックでアメリカ国家を演奏したのは1969年。ギターの音色だけで言葉以上に強い思いを表現して、世界に衝撃を与えたあのパフォーマンスへのオマージュとして、その想いを引き継ぐものであり、聴く人の心の中でその記憶と結びつけられてより強いインパクトとなって胸に響く。文化の連続性、積み重ねられた歴史を過去に葬ってはいけない。とても重要なメッセージを受けとりました。

当時の流行歌も劇中歌として使用されています。Too Late to Turn Back Nowで踊るシーンが素敵です。そして、最後に流れる曲は、Princeが残したテープからリリースされたMary, Don’t You Weepと言う黒人霊歌。当初予定になかった曲で、その存在を知って迷わずエンディングに使ったとのことです。

始めから終わりまで、あれこれ語りたくなるメッセージが詰め込まれた映画、Blackkklansmanは、2018年のカンヌ国際映画祭で グランプリを受賞(最高賞のパルムドールは「万引き家族」)、スパイクは2020年にカンヌ映画祭初の審査委員長になったのでした。今後も彼の代表作と評されることになるのではないでしょうか。

ブラック・クランズマン(2018)
出演:ジョン・デヴィッド・ワシントン
           アダム・ドライバー
監督:スパイク・リー
音楽:テレンス・ブランチャード



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