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指す将順位戦8th自戦記 B級2組 3回戦 (vs ひぐらし6級[1042])

1勝1敗となって重要な三局目。
まだまだ指す順の道は長い。


【対局前】

◇対局相手の印象

四間飛車ベースのオールラウンダー
基本的には四間飛車を相手にすると考えて良さそうだが、棋譜を見ると横歩取り角換わりのような研究将棋にも踏み込んでおり底が見えない。渡辺九段や中村八段の定跡解説動画も視聴済みらしく、案外深い研究勝負になるかもしれない。
一方 裏芸でアヒル戦法を志向することもあり本局出現する可能性がないともいえない。

◇対戦成績

初手合
ひぐらし6級は現在4名いる2戦2勝のプレイヤーの一人。勢いにやられないようにしたい。

◇事前準備

 [▲先手番]

①対四間飛車

本命
対後手四間飛車に対する作戦は色々あるところだが、本局はドルフィン流を採用。
指す将順位戦で前期唯一、そして先手番で唯一敗れてしまった作戦だが、作戦自体は非常に上手くいっており自分の力不足で負けてしまったのでこの機会にリベンジを狙う。

想定局面①
第6期指す将順位戦B級2組10回戦
▲みんちぃあ-△ひぐらし戦
より。
実はひぐらし6級は以前対ドルフィン流を経験していた。
流石に対局から2年近く経っているので指し方は変わっているだろうが、この将棋は参考になりそう。


※「ドルフィン流」という呼び方について
以前の記事で「ドルフィン流」は「マリンブルー流」に改名されたので以後「マリンブルー流」と呼ぶ、としていましたが、この戦法を体系化されたマリンブルー氏のTwitterアカウントが削除されたことで改名宣言のツイートが見れなくなっていることと 将棋系YouTuberなるる氏の動画で「ドルフィン流」としてこの作戦が紹介されたことからこちらの方が一般的な呼称として浸透したと判断し、やはり「ドルフィン流」と呼ばせていただきます。


②横歩取り模様

ひぐらし6級が後手横歩を狙ってくるかは微妙だが、先手番で横歩取りを受けて立っている棋譜はあったのである程度は理解があるとみて良さそう。
本局はやさい式相掛かりでこちらのペースに引きずり込む。

想定局面②
ひぐらし6級は定跡に詳しそうだが、この将棋はむしろ逆。
21手目▲4八金からの将棋はもはや やさい式相掛かりの枠を超えて私が一人で開拓しているような状態で、後手としては選びにくいと思う。

③角換わり

一応角換わりを指している棋譜もあったので。
本局2手目△8四歩をしてくるというのはあまり考えられないが、もしやってきたらその心意気に応えて角換わりの研究勝負で対局したい。

想定局面③
相腰掛け銀の展開。
前述の通りプロ棋士による解説動画も閲覧済みとのことで面白い対局になりそう。

④対アヒル戦法

アヒル使いとは月光戦でもゆかなか竜王戦でも当たっているのでそろそろ指す順で当たっても良い頃。
本局は将棋系YouTuber Jack氏の動画で解説されている形をベースに作戦を立てた。

想定局面④
低い陣形に対して金駒を盛り上げていく


 [△後手番]

後手番では2手目△3四歩から相手の指し方次第で作戦を変えていく。

⑤対居飛車

居飛車を志向された場合は△3二金→△3三角で33金型に。
早い段階で端歩を打診し、その対応によって二つの作戦を使い分ける。

想定局面⑤
端歩を突き返されなければ、端の位を取って阪田流向かい飛車に。


想定局面⑥
端歩の交換が入った場合にはサザンハヤクリで。
この戦型での端歩の交換は王手飛車の筋を消している分こちらの得になることが多い。

もし33金型を嫌がって▲3三角成としてこなければ△4二銀として、こちらが本来の形よりかなり得した局面へ誘導できるので先手居飛車の良さを無くすことが出来る。

⑥対振り飛車

振り飛車相手の場合は相振り飛車にしてLah流三間飛車
対四間飛車の展開は前回の記事の事前準備を参照のこと。

想定局面⑦
1回戦、2回戦に続き3回戦でも想定局面に抜擢

~対局前まとめ~

先手番になったら居飛車で挑む。
基本的には対四間飛車を想定して研究を深めておく。
後手番の場合は2手目△3四歩から積極的にペースを掴む。


【対局開始ッ!】

先手:* 最速キメ(950)
後手:higurashi_jp(1042)

↓いつも通りshogi.ioで振り返っています。

https://shogi.io/kifus/256825







 【急所の局面】(93手目▲8七金まで)

(▲8七金以下) △8五香 〈基本図〉

〈基本図〉

ここでは幻の△8五香という手があった。
本局はその変化を分析していきたいが、これはソフトでもなかなか読みきれない非常に難解な局面。
水匠5の1秒解析や24の局面分析では僅かにマイナスの評価値を出すが、読み込ませると次第に先手に振れてくる。

そして上画像の4番目の手(▲9七桂打)が読み込み時間の関係で+252のまま止まっているが、この手を指すと△8九龍から25手詰である。

*検討 1 時間 00:02.2 深さ 16/18 ノード数 3896363 評価値 -詰 25 読み筋 △8九龍(29) ▲同 玉(99) △7八銀打 ▲同 玉(89) △8七香成(85) ▲同 玉(78) △8六銀打 ▲7八玉(87) △7七金打 ▲6九玉(78) △6八銀打 ▲同 銀(57) △7八金打 ▲5八玉(69) △6八金(78) ▲4九玉(58) △4八銀打 ▲3八玉(49) △3七銀成(48) ▲4九玉(38) △5七桂打 ▲3九玉(49) △3八歩打 ▲2九玉(39) △2八成銀(37)

長すぎて一回の分析では最後まで表示されないので
二つの分析を途中で繋げています。


△8五香に対して一見自然な応手に見える▲8六香。
以下△同香は▲8五桂から本譜のような詰み筋がある。
この筋を「敵の打ちたいところに打て」で消しているのが△8五香の効果なのだ。

よって香車は動かしたくない。

ではどうするかというと、▲8六香には△6二金であら不思議。急に後手玉が広くなり捕まらなくなる。

(〈基本図〉以下) ▲8六香 △6二金 〈参考図1〉

〈参考図1〉

〈基本図〉からの正解手はただ一つ、▲7二金
本譜でも詰み筋として存在し、観戦者からの指摘もあったが 対局中に発見できなかった一手だ。

ただ〈基本図〉から▲7二金を打たれても詰みではないらしい。
その辺りのカラクリを分析によって紐解いていきたい。

(〈基本図〉以下) ▲7二金 〈a図〉

〈a図〉

▲7二金に対して△同玉は▲7一龍で詰み。
玉を引っ張り出すためのタダ捨てだった。

残る退路は△8四玉しかない。
よってその変化を検討していきたいが、その前に本譜94手目の局面を見てもらいたい。


本譜94手目△7八銀まで

ここで▲7二金が対局中発見できなかった詰み筋なのだが、以下読み筋を見ていくと△8四玉▲8五香△同玉▲9五龍までの5手詰となる。

途中▲8五香と再び引きつけのタダ捨てをするのがミソで、逆にこの手を未然に防いでいるのが幻の△8五香の効果なのである。
これが▲7二金が不詰みになるカラクリの正体だった。


それがわかったところで再び〈a図〉に戻り、その後の進行を見ていくことにしよう。

(〈a図〉以下) △8四玉 ▲8六香 〈b図〉

〈b図〉

▲7二金を打ってから、今度こそ▲8六香と指すという手順が良い。
〈参考図1〉と〈b図〉とを比べてみるとわかるように、今度は△6二金が全く意味を為していない。

さて〈b図〉からは矢印で示されたような様々な手が考えられる。

ざっと見ていくと、

△9一角と龍を取るのは▲8五香で、以下△同玉は▲8六香△9四玉から9筋の歩で連続王手していけばそのまま詰むので代えて△9三玉に▲9一桂成として次の▲8二角からの詰みを見せ必至

②▲8六香を取ってしまおうという△8五香は、今度は▲8五桂が効かない分 有力だが、▲8五歩△8三玉▲8一龍が強力。高い駒で相駒すると詰むので△8二歩とするが▲8六金が効くのが大きい(△同角は82への利きがなくなるので▲8二龍△9四玉▲8四龍までの3手詰)。以下△8七桂▲同金△7八銀と迫るが▲8四歩△9三玉▲8三歩成△同玉▲8六香と歩を成り捨てて香車を設置するのが好手順(後手は82に歩を打っているので香車の威力が上がっている。相駒を歩以外にした場合は歩の成り捨てをいれずに▲8四香が良い)。以下は守備は11の馬と連携しながら、攻撃は上下挟撃態勢で迫っていく方針で先手優勢

③同じく▲8六香を取る△8六角は▲同金△同香▲8五歩△同玉▲9五龍△7六玉▲7七馬と進めば詰み。放置は出来ないので△同香に代えて△8九龍▲同玉△8六香と無理矢理王手になるように取るくらいだが▲8七歩と打っておいて次の▲9五龍△8三玉▲8二飛までの詰みを見せて先手勝勢

④放置するのは▲8五香△同玉▲9五龍でそれは△8五香を打った意味がないので、香車を受ける△9四銀には▲同龍△同玉▲7一桂成が次の▲9五歩△8四玉▲8五香△同玉▲9四銀△8四玉▲8五香までの詰みを見せており、△9三金と受けても「端玉には端歩」で▲9五歩から一手一手で先手勝勢

⑤同じく▲8五香を受ける狙いの△9三桂が後手としては最有力。これは局面図を用いてもう少し掘り下げてみる。

(〈b図〉以下) △9三桂 ▲7七馬 △9四銀 ▲6八銀 〈c図〉

〈c図〉

▲7七馬は言われれば成る程の追撃で、放置すると▲8五香△同香▲9五馬△8三玉▲9四馬までの5手詰

よってこれを受ける△9四銀に▲6八銀が落ち着いた一手。△7九金を先受けしており、それでも△7九金は▲同銀△同龍のときに▲8五香から11手詰

*検討 1 時間 00:01.5 深さ 14/12 ノード数 2478593 評価値 +詰 11 読み筋 ▲8五香(86) △同 玉(84) ▲8六香打 △同 角(64) ▲同 金(87) △8四玉(85) ▲9五金(86) △同 銀(94) ▲同 馬(77) △8三玉(84) ▲9四角打

〈c図〉以下は何を指しても先手がそこそこやれるようだが 組み合わせが多く拾いきれない。
またここに至るまでにも、例えば▲6八銀など実戦で指せる気がしないし△8五香を打たれるのは面白くないかもしれない(実戦ではそもそも▲8五桂しか見えてないから香車で埋められたら負けてるし)。

形勢としては一瞬ソフトも迷うので真相を確かめる意味と、一応の勉強としてまとめてみたが
結論は「こんな複雑な局面になる前に本譜93手目▲7二金で勝っとけ」である。


【対局後】

◇本局の振り返り

最後の最後までわからないハラハラした対局だった。
もう何度言ったかわからないが終盤力が課題。

凹んでいる箇所は【急所の局面】で取り上げた幻の△8五香

本局の形勢を24棋譜分析でグラフにするとこうなる。
この評価値だけを見たら先手の圧勝という印象を受けるが、実際は棋譜コメントで記したように全然読みきれていないなか偶然手にした勝利だったわけである。
このギャップを解消していきたい。

それと、当初の目標だったドルフィン流でのリベンジを達成できたのは良かった。これで今期連勝となったのでこの勢いのままいければと思う。

◇最後に

本局の振り返りもかなり時間がかかってしまいました……。もう明日が4回戦なんですが、大丈夫なのか??
時間がなくて自戦記公開を断念…ということはしたくないので次戦以降も上手く時間を活用していきたいと思います、それじゃあ。

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