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第14期月光戦自戦記 C級3組 第4節 (vs平和島のくじら1級)

2勝1敗で迎えた第4節。
勝ち越しとなるか指し分けとなるか、重要な一局。

【対局前】

対戦相手の印象

アヒル使い。
中終盤の力が強いので、アヒル戦法を逆手にとって序盤のリードを保ったまま勝ちきる展開にしたい。
また経験豊富な形だからか指し手のスピードが早い印象で、時間差には気を付けたい。

対戦成績

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月光戦第11期から連続で当たり続けてこちらの2連敗の後1勝している。
全てアヒル戦法の将棋で、第11期では中住まい型対策、第12期は完全力戦調、第13期では雁木風対策で戦った。


事前準備

~先手番~

基本的に対アヒル戦法について考える。


他に可能性があるのは一間飛車か四間飛車くらい。
一間飛車には端歩を突き返して対応して、四間飛車には最近試運転中のドルフィン流をぶつけてみようか。

さてアヒル戦法に対してだが、今まで戦った感触では

雁木風 > 中住まい > 完全力戦

の順で有力だと感じた。

アヒル戦法はひねり飛車のように飛車を移動させて攻めることが多く、そうなったときに玉が真ん中の中住まいより左側に寄っている雁木風の方が戦場から遠い。

第13期ではこのような考えに基づいて雁木風対策で勝利を掴むことができたが、そのときはまだ相手がアヒル戦法であると決め打って駒組みしていたため無理が生じており、普段の対局に活かせる将棋ではなかった。

今回は普段指している初手26歩でも指せるように
高美濃雁木スイッチ型で指してみたい。

25歩まで突いて端角で覗かれたときに今までは48銀で受けていたが、代えて58金と受け 早々の角頭攻めに67金から左高美濃囲いに組む手順を用意することで100%縦歩取りの展開にはならない。

相手が縦歩取りの展開を志向せずアヒル囲いを優先してきた場合はこちらも悠々と雁木風の囲いに組むことが出来る。

高美濃も雁木風もかなり有力なアヒル戦法対策であるが、如何せん経験値が少なすぎるのが弱点か(この駒組みを思い付いたのが対局開始2時間前)。

付け焼き刃ではあるが陣形の利はこちらにある。
それを活かせる展開にしたい。

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想定局面①
左高美濃囲いも玉が左側にあるので雁木風囲いと同じ利点を持っている。
評価値はこちらに寄っているが経験値は圧倒的にアヒル戦法側があるので勝敗はわからない。



~後手番~

後手番では先手番と同じような駒組みをすると縦歩取りの変化を許容することになるので、

①縦歩取りを拒否して雁木囲いに組む
②縦歩取りを拒否して中住まいに組む
③縦歩取りを拒否しない

の三択から選ぶことになる。
(これに変わる選択肢を模索中だが、発見できていない)


②で一敗したこともあって、今回は①でいってみようと思う。


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想定局面②
後手番の場合は相手の飛車先を受けるために32金の一手が必要で、32に玉がいけないため雁木風囲いや左高美濃囲いに組めない。
端角のラインが気になるので22まで入城した後に54の歩を突くか、金銀を盛り上げていく過程で土井矢倉のような陣形に変形するか、模索中。


対局前まとめ

先手番なら高美濃雁木スイッチ型、後手番なら雁木囲い
細かい駒組みの差やその他の戦法には臨機応変に対応。


【対局開始ッ!】

先手:SaisokuKime 1級
後手:TKMI55 1級

▲2六歩 △9四歩 ▲9六歩 △8四歩 ▲2五歩
△3二金 ▲7八金 △1四歩 ▲6八銀 △8五歩
▲6六歩 △4二銀 ▲6七銀 △8六歩 ▲ 同 歩
△ 同 飛 ▲8七歩打 △8四飛 ▲7六歩 △1三角
▲4八銀 △5四飛 ▲5八金 △3四歩 ▲7七角
△3五歩 ▲6九玉 △3三桂 ▲7九玉 △6二銀
▲8八玉 △7一金 ▲5六歩 △7四歩

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序盤から駆け引きがあった。

まず後手からいきなりの端歩突き
これは一間飛車を狙ったものだろう。

一間飛車は難しい戦法だが正確に指すとかなり優秀で、後手番に一間飛車を多用するソフトが水匠を始めとする一流ソフトを撃破している棋譜が複数ある。

本譜は余計な変化を消すために端歩を突き返す

アヒル戦法では飛車先の歩を受けるために26歩に14歩、25歩に13角とするのが効率的だが、本譜は32金と飛車先の歩を受けたため相掛かり調の出だしとなった。

次の手で76歩として77角で後手の飛車先の歩を受ける手も有力だったが本譜では相掛かり志向で78金と受けた。

この手によって高美濃囲いに組む変化が無くなり、後手番用に用意していた雁木囲いを築くことになる。

想定局面②の形はやはり角の利きが気掛かりだったので玉を88まで入城してから56歩とした。

紆余曲折あったものの陣形はこちら十分。
ここからどうやって戦いを起こしていくか。


▲1六歩 △7三桂 ▲4六歩 △3四飛 ▲4七銀 △5二玉

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16歩から後手の角に圧をかける。

石田流の形には47銀としっかり受けてお互いに飽和状態に見える。

本譜では48金としたが55歩と玉頭に迫りながら陣形拡大、更に銀の進出を見せ飛車を圧迫する手が優った。
実は先手陣は飽和状態ではなかったのだ。

▲4八金 △2四歩 ▲ 同 歩 △ 同 飛

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飛車交換を迫られた局面だが、ここは素直に応じておいて問題なかった。

アヒル囲いは大駒交換に強い囲いだが、本譜では24同飛同角に21飛打の隙があった。序盤で飛車先の歩を32金で受けたことを咎めている。

そしてこちらの陣形も玉が左側にいるため右側を荒らされても簡単には寄らない。
これが中住まいを止めて雁木囲いを選択した理由だったが上手く活かせなかった。


▲2六歩打 △2五歩打 ▲ 同 歩 △ 同 飛
▲2六歩打 △2四飛 ▲6八角 △2五歩打
▲ 同 歩 △ 同 飛 ▲2六歩打 △2四飛 ▲3六歩
△3四飛 ▲3八飛 △2四飛 ▲2八飛 △3四飛
▲3八飛 △2四飛 ▲2八飛 △3四飛

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飛車交換を拒否したためじっくりした展開に。

しかしじっくりしたから何かができるという訳でもなく双方手をこまねいて千日手の変化が現れる。

千日手が成立して後手番になったとしても本局と同じことをするだけでメリットが無く、且つこの局面の形勢は先手が良いと見ているため千日手にするつもりはなかったが、暫くは手数を稼ぐ。

時間稼ぎの意味もあるが、一番の目的は形勢判断のチューニング
相手が千日手に乗ってくれば相手も今の局面を先手が指しやすいと見ているということで、自分一人で形勢判断していた局面を二人で形勢判断することができる。


▲3五歩 △ 同 飛 ▲3六歩打 △3四飛 ▲5五歩
△3五歩打 ▲ 同 歩 △ 同 飛

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35歩と千日手を打開したが、37金とする手が後手の飛車を圧迫しており、48金としたからにはこの一手だった。

やっと55歩としたが歩が浮いたため動かれてしまった。この歩を取られてはいけないと銀で守ったが、この手があまり良くなかった。


▲5六銀 △3九飛成 ▲3八金 △2八龍 ▲ 同 金
△4九飛打 ▲3四歩打 △3九飛成 ▲3三歩成 
△ 同 銀

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55の歩を守った代償に飛車に成り込まれてしまった。

桂馬を取って両取りの攻めを見せたが、先に竜を消しておけばこちらが良かった。
竜飛車交換をした後のこちらの陣形が意外としっかりしており、後手陣には桂馬の両取りの筋や21飛打の隙が残っている。
このような展開にするつもりの48金だったのだが、ここでも指し手が噛み合っていなかった。


▲2五桂打 △2四角 ▲3三桂成 △ 同 角
▲3八金 △2九龍 ▲2一飛打 △3一歩打
▲2三銀打  △6四桂打 ▲6七銀 △5五角 
▲3二銀成 △ 同 歩 ▲3一飛成 △4二銀打
▲3二龍 △3一歩打 ▲3五龍 △4四角 ▲2五龍
△5五桂打

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竜を消さずに攻め合うのは流石にキツく、攻めあぐねている間に自陣がボロボロに。

逆転の手段が乏しく、そのまま押しきられてしまった。


▲3四金打 △6七桂成 ▲4四金 △6八成桂
▲4三金 △ 同 銀 ▲6八金 △7六桂 ▲7七玉
△7九龍 ▲6七玉 △3四角打 ▲ 同 龍 △ 同 銀
▲3五歩打 △6八龍 ▲5六玉 △5七飛打 ▲ 詰み
まで124手で後手の勝ち

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【対局後】

本局の振り返り

第11期と同じく、一貫性のない指し手が敗因になってしまった。
特に48金が活きない展開になってしまったのが良くなかった。
「アヒル囲いだから大駒交換はダメ」で止まらずに、盤上を見て隙がないか確認するのも大事。


さいごに

前回から無事詰めチャレは日課になりました。
noteの方はなかなか暇が無くかなり時間を置いての完成。
アヒル戦法に対する考えをひとまず明文化できたんでこれを基準に色々整備してみたいです。それじゃあ。

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