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【小説】守護霊のりおちゃん

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「まさかわたしが乳がんに?!」 大分県別府市に住む主婦の小百合には、普通の人間にはない能力が備わっていた。特定健診で右乳房に乳がんが見つかった小百合は、摘出手術を受けることに。…
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#乳がん

崇徳天皇への願い文

福岡県朝倉市は、大分県日田市の隣に位置する。山や田畑が広がる、農業のさかんな地域だ。 美…

死者からの電子メール

わたしが大阪の実家から別府に帰った翌日。夫を送り出し、洗濯機を回しながら寝室でゴロゴロし…

大谷先生の豹変

令和5年12月25日。今年最後の診察である。わたしは鶴見にある「火売神社」にお参りしてい…

マイ・ホーム・グラウンド 競輪温泉

夫の運転する車の助手席にわたしは座った。自宅から競輪温泉までは、車で5分とかからない。温…

恋は憂鬱

わたしと夫は、亀川駅前のラーメン屋にいた。 「ラーメンいっちゃん琴別府店」 元力士の琴別…

心はキャプテン・ハーロック

手術から一週間がすぎた。経過は順調だ。リンパ液の色は透明に近づいている。チューブが外れる…

生麦・生米・生卵

わたしは談話室の窓際に座り、ぼんやり外を眺めていた。窓からの景色は、巨大な屏風絵のようだ。屛風絵の中央には、八幡竈門神社が鎮座している。このあたりは、温泉地の喧騒から隔絶されている。鉄輪温泉の湯けむりも山にさえぎられ見えない。 手術は今日の13時からだ。「今からそっちに向かう」と夫からLINEがあった。 入院病棟は患者とスタッフ以外、病室に入ることができない。面会のときは、患者本人がエレベーターホール前の談話室に出向く。手術の付き添いも同じである。わたしは夫が病院に到着するの

お前も麻酔なしで乳輪に注射してやろうか

令和5年11月6日。入院当日である。わたしは自宅の近くから一人でタクシーに乗り込んだ。入…

手術説明ムズすぎワロタ

令和5年10月6日。乳がん手術について、夫と一緒に説明を受ける日である。のりおちゃんはこ…

輪投げ大会ってなんやねん

「今日の検査、どうやった?」 風呂からあがった夫がたずねた。わたしは台所で夕飯の支度をし…

おっぱい喪失まであと1か月

国立別府病院は、「地域医療支援病院」である。かかりつけ医からの紹介患者に対し、医療提供・…

鬼が築いた石段の先に

国立別府病院は、別府市の北のはずれにある。病院の西側を小高い山が取り囲み、東側には別府湾…

のん気な女

その日わたしは、夫の修二と昼食を食べていた。「民芸茶屋・味蔵」という食事処である。別府市…

拝啓 山本先生

拝啓 新緑の候、山本先生におかれましては益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。この度、5年間にわたる乳がん治療を無事に終えることができましたのは、ひとえに先生のおかげでございます。改めて深く感謝申し上げます。 乳がんが発覚してから、度重なる治療や検査の中で不安な日々もありましたが、先生の的確な診療と温かいお言葉に支えられ、ここまで回復することができました。先生のおかげで現在は日常生活を取り戻し、元気に過ごしております。 長期間にわたり、親身に診ていただき本当にありがとうござい