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1通のメールから、アフリカの未来を変えた!?~エチオピアAIカンパニーiCog Labsの創業ストーリー~

「アフリカ・エチオピアでAI?? 」

80名以上のPython エンジニアと20名以上のスタッフとで
現在100人を超えるiCog Labs社。

このエチオピアの首都アディスアベバにある会社の話をする度に、
相手は「????!!!」って反応になる。

“アフリカ”、“発展途上国”など、それぞれが持つイメージからか、
いまの先進国においても最先端っぽい”AI”を語るには
とてもとても遠い組み合わせのように思われるようだ。

アフリカをよく知る国際開発の現場にいる方々からみても
異様な存在らしく、iCogの話題はどこでも驚かれることが多い。

それでも、iCog社の話題で「有名どころ」を挙げるとこんな感じ↓

・世界で初めて市民権を得たAIロボット「ソフィア」の開発に携わる。
 ソフィア(SOPHIA)と言えば→
 アフリカ最大級のICTイベント「Transform Africa Summit」
 2019年のオープニングでスピーチを行ったり、

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ハリウッド俳優ウィル・スミスと対談(というか口説かれる企画)したり。

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・チョコレートのHershey’sをはじめ、様々な欧米企業からの
 受託開発を行っている。
 エチオピア国内で利用されている仕事マッチングアプリなども開発。
 ※エチオピア人に聞くと、「そのアプリ知ってる!」となる
 (が、iCog社のことは知られていない。)

米国大使館とJICAとの共催で、「SolveIT」という
 エチオピア最大のスタートアップイベントを開催している。

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 ※JICA担当者にiCog Labs社を紹介したのは私たち!! とアピってみるw

・iCog社が力を入れる教育事業「Anyone Can Code」をリードする
 BettyことBetelhem Dessieは、2万人以上の子供達にコーディングを教え
 CNNBBCなど、世界的メディアからの取材が絶えない若き女性リーダーであったり。

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・Twitter/square 創立者でCEOのJack Dorseyも彼らにインスパイアされて(→Forbes記事に。)

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 2019年11月にエチオピアを始めとしたアフリカ諸国を訪問。

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2020年には、3~6ヶ月アフリカに滞在する、と発言して各所に記事にされている。

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などなど。

ここまで色々並べて「えー凄いじゃん!」となるものの
やっぱり、エチオピアもAIも遠くて、
「あーでもやっぱり、よく分からないや」っていう展開も多く、、、(涙)

iCog Labsの創業ストーリー

ご縁あって、2018年に初対面したときから意気投合。
独占契約をもとに、その年末には、(夫・秋間信人が)日本とiCogを繋ぐGAX社を立ち上げ。

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特に、代表のGetことGetnetとは夜な夜なミーティングを重ね、仕事をつくってきた私たち。

Getの卓越した未来を想像し創造する力、何よりその温和ながら熱い人柄をおそらく日本で一番知っている私たちが彼のことを紹介することで、

彼と彼の周りで起きつつあるダイナミクスの一端でも伝えられないか、と筆をとっている。

といいつつも、あまり自分からは自分の話をしないGet。
(これから何をしたいか、とか、未来の話には、止めどないw)

1年半ほど付き合いながら、食い下がって聞きまくって
やっと見えてきた彼の創業ストーリーをここに書きのこしておきたいと思う。

それは1通のメールから始まった

首都アディスアベバにて
建設労働者の父親と専業主婦の母親の間に生まれ、
彼曰く「not in Poor family but indeed in extremely poor family」
“「貧しい家庭」ではなく、実際とてつもなく貧しい家庭”で育ったGet。

そのことが、彼自身の長期的視野やビジョナリーさ、強い信念やタフさを持つ大元になった、という。

17歳のときに軍隊に入り、首都郊外にある”防衛学校”的な工科大学に入学。
コンピューターサイエンスを学んだ後、エンジニアとして政府系企業に勤めていた。

一見、エンジニア畑の一社員であったGetだったが、
常に彼の頭の中を占めていたのは、抗えないほど強い「人類の未来」の話だった。

「温暖化に貧困、人口増加にエネルギー問題、
 あらゆる課題を乗り越えて人類が存続していくためにはどうすればいいか?」

「いかに人類は進化するか」

そんな彼のあくなき疑問や探究心に応えられる家族も同級生も先生もいなかったため、彼は古今東西の天才と呼ばれる天才の著作や記事を貪り読んだという。

そうして、AIを始めとしたFuture Techが変える「人類の未来」に希望を見出した彼。

これは!と思う記事や本を読むと
その著者にメールをしたり、オンラインで意見交換をしたり、、

ついには、働きながらも、毎月のように700名以上を集め
シンギュラリティや、AGI(強いAIと呼ばれる汎用人工知能)といったFuture techについて学ぶイベントを主催するようになった。


そんな中、Getが「すべてはここから始まった」という本が
人工知能研究の世界的権威、レイ・カーツワイル(Ray Kurzweil)著の
「Singularity is near(2005)」だった。

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※レイ・カーツワイル氏は「シンギュラリティ(技術的特異点)」という考え方を世に広めたことで知られる未来学者、発明家、実業家であり、2008年には、Xプライズ財団のピーター・ディアマンティス氏と共にシリコンバレーの教育機関Singurarity Universityを発起設立した。
2012年には、 Googleにジョイン。Gmailでの返信文の自動作成機能(スマートリプライ機能)を開発改良したことでも有名。(以下、Rayと呼称する。)

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これまでの人類や技術の歴史とともに、かなりの正確さをもって未来を予測している、と言われるその本にGetが出会ったのは、2011年の終わりのことだった。

感銘を受けたGetは、ありとあらゆるRayの記事を読み漁り、
興奮とともにメールを1通、Rayに送ったという。

それは感想はもちろんナノテクノロジーやゲノミクスなどに関する質問だった。

そのメールの内容の高度さに、驚きと共に感動したRayやRayの同僚たちから
Getは一目置かれ、これをきっかけに米国−エチオピア間の、オンラインでの対話を深めていったという。

そして翌2012年、Rayと同じく人工知能研究で世界的権威であり、彼の友人であったベン・ゲーツェル氏 (Ben Goetzel/以下、Ben)もRayからGetを紹介され、Getが主催するアディアベバ工科大学でのセミナーにオンラインで登壇。

そのとき Ben は、Getをはじめとしたエチオピアの若者らの知性とポテンシャルに感銘を受け、数か月後には実際にエチオピアを訪問することを決める。

そのときの記事→ KurzweilAI.net

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※ベン・ゲーツェル氏は「汎用人工知能(AGI)」という人間レべルのAIの実現に向けた技術的な目標を表す概念を広めた人工知能学者。AI間でさまざまな取引を実行するための非中央集権型マーケットプレイスの構築を目指して、ブロックチェーンを活用したAIプラットフォーム「SingularityNET」など創始。
参考)wired でのクーガーCEO石井敦氏との対談記事 

↓2019年4月に来日したとき、Benの家族と一緒に撮った写真。

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2012年9月、2013年2月と、エチオピアを訪問したBenは、「AI領域で働きたい」という多くの才能ある若者とも出会い、アフリカ・エチオピアでAIに取り組む価値(Leap Frog的に各種課題解決につながる価値)に確信を深めたという。

一方その頃、RayやBenとの出会いを経て、いまのiCogに近い、「エチオピアでAIに取り組んでアフリカを変えていく、というVision」をもったGet。

ただし、そのVisionを語るも、エチオピアでは、誰も理解し共感してくれる同志がおらず、、

「自分の知見や経験を深めるには、MITやスタンフォードに留学して、シリコンバレーで働くという選択肢しかないのではないか」と思っていたらしい。


ところが、そのVisionをBenに話したところ、思いがけず彼からは「エチオピアでAIカンパニーを一緒に立ち上げよう」と心強い声が。

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そうして、 Benとの共同設立のアイディアが生まれてから、すぐに退職したGetは、アイディアが生まれて2ヶ月後の2013年4月には、iCog Labを設立した。

本格的な仕事が始まる前に、Rayらが設立したSingularity University(SU)に招聘されて半年ほどアメリカ・シリコンバレーに滞在することになったGet。

SUのプログラム(Graduate Study Program/現 Global Solutions program)に選抜され、さらに滞在を延ばしてシリコンバレーのエコシステムなども実地でリサーチを重ねた。

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そうして始まったiCog Labs社は、Benらのネットワークもあって、
世界の名だたる企業からも仕事を受け、
いまでは、政府が頼りにするアフリカ随一のAIカンパニーとなっている。

と、たった1通のメールをきっかけに、Rayや Benと繋がり、いまのiCog Labsを創業したGet。アフリカを変えるリーダーの1人にも選ばれている。

≫≫Quarz Africaの記事

未来は若い世代の手の中に。

こうして2013年に設立されたiCog Labsの今はどうか、というと、エチオピアは若者の多い国、とあって入社希望者を募ると、全土から数千人の単位で応募が殺到するらしい。
(数千人全員と電話で話す、という独自の選抜方法も現地ならでは。)

Get自身が、貧しい環境からチャンスを受けて自らの道を開いていった経験から、教育機会の提供を重視しているiCog Labsでは、

「就業時間の20%は、子供達を含む後進の教育に充てること」

というルールが雇用契約で明記されている。

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実際に、オフィスではいつもどこかで、子供向けのレクチャーが
行われているし、Anyone Can Codeのようなワークショップが
エチオピア全土を超えて、海外でも開催されている。

※このACCプロジェクトのリーダーが冒頭に紹介したBetty。
先日はスウェーデンの Dellがスポンサーとなって、ストックホルムでのACCが開催されたばかり。

未来をソウゾウする力:VisionaryさとPracticalさと。

次世代育成への熱量もすごいが、最後にGetのことをよく表すエピソードを添えたいと思う。

Getといえば、一見両立しがたい
未来をつくるVisionaryさと、現実を動かすPracticalな力
その両方を兼ね備えているところに大きな特徴がある。

私たちが、初めてiCog Labsを訪問した2018年6月のこと。

最初は、東京大学・松尾豊研究室の弾丸エチオピア視察をお手伝いしたところから、お礼に紹介返しをしてもらったのが彼ら、というご縁だった。

「国の発展具合とは、ある意味"似つかわしくない"洗練されたコーディングをしていて驚いた」

という彼らの評に驚いて訪ねていった。

そのとき、 Getはエチオピア全土、はたまた隣国エリトリアやジプチなどにも教育機会を広げたくて、海外から払い下げられたようなバスを改造して、スポンサーの広告をしながら、あちこちでテックワークショップを繰り広げる、、というアイディアを持っていた。 

日本から訪ねた初対面の私にも、
「いすゞのバスが欲しい。何とかしてくれないか」とGet。

私自身、彼の熱意と細かく計画したプロポーザルに感動して、帰国してから各種自動車メーカーや国際開発機関などにアプローチした。 

「まだアフリカ展開の予定はなくて・・」などと断られまくっている間に
Get自身は、全方位にアプローチをし続け、結果他の国からファンドレイズに成功。
実際にその年の終わりには、"School Bus Project"をローンチさせていた。

その事実はしばらくしてから知ったのだが、彼の「語るだけじゃない、現実を動かす力」にさすが!と感動した。

そして、この"School Bus Project"を任せている、という19歳の若者・女性リーダーを連れて、来月いよいよGetが初来日する!!!!

Coming Soon!!!!  Getの初来日!!!!

ここまで読んで、GetやiCog Labsとの協業に興味がある、という方は是非気軽に下記フォームよりコンタクトしていただければ、と思う。

ビザやパスポートのあれこれがあって、もう一人呼びたかった日本との仕事に邁進してくれているエンジニアが呼べなくなったり、と色々あったのだが

ついにGetが初来日を果たす!ということに正直ワクワクが止まらない。


彼が日本に滞在する2月5日から15日までの10日間に、個別の取材やアポ調整に加えて、いくつか彼を囲んだイベントを開催予定です。

後日談:おかげさまで100名を超える講演会をはじめ20社近い日本企業との接点をもつことができました。周知の通り、この2020年2月の彼らの来日直後に新型コロナウイルスの猛威から、彼らの来日もこちらからのアフリカ訪問も叶わなくなりました。あらゆる企画は見直されてしまいましたが、あきらめの悪さから次の展開をつくっていっています。


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