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ときはいま 雪が舞い散る 睦月かな

昨夜は友達の行きつけの居酒屋で晩飯をご馳走になった。カウンター席だから、他の常連客も彼に話しかけてくる。が、彼は自分の興味のある話こそ会話にノるが、他人が話したいことに耳を傾けることをしない。話題に興味を失うとスマホをピコピコ。

そうなると、僕が会話を引き取って「なるほど」と相槌を打ちながら、相手の引き出しを広げ、自分との共通項を挙げたりしながら、楽しく話す。気を使って疲れるということもない。
僕は、心理戦が好きだ。それが腹黒い分野で発揮される事も多いが、こうした、ちょっとした社交の場で、穏やかだったり、賑やかだったりする空気を作るのも趣味のようなものなのだ。

唐突に、友達が声を荒げ、演説口調になって「それは違います」と一発カマし、会話に割り込む。どうやら、他の常連客の会話に揶揄のようなものを感じて、面白くなかったようだ。
穏やかだった空気に冷たい風が吹き込んで、皆口を閉ざす。こういう時に下手に彼を宥めても、よりムキになって、自説を滔々と論じるから、僕は黙ってハイボールをちびりちびりとやる。

一説ぶった後に、僕は穏やかにその場をフォローし、頃合いをみて僕らは店をあとにした。
「すまんかったな。だけど、馬鹿にされたら黙ってちゃいけない」
店から少し離れたところで彼は立ち止まり、僕に詫びを入れた。
「そういう原理原則は大変だな」
僕は、薄く笑って応える。
「原則原則じゃない。これは人として当たり前のことだ」
また、彼がムキになる。
「じゃあ詫びる必要なんてないさ」
僕は涼しくそう言って歩き出す。それから仕事の事など話題を変えて、テキトーに別れた。そして一人になってから
「まったく、中途半端なボンボンはこれだからなぁ」
と苦笑いしながら呟いた。
友人であり、うちの会社の大将はこんな感じである。

大将といっても、僕はその提携先の会社に出向していて、そこで技術を習得して、大将の資本で新たな会社を立ち上げる。というシナリオになっている。だから今のところ僕の食い扶持は、実質的に出向先から出ている。
もちろんそちらのボスとも仲良くしている。付き合いは浅いがボスは叩き上げなので、仕事の話になると、むしろボスの方が本音で話しやすいかな。

そして、ボスと大将の関係はビミョーだ。僕の出向についても、契約も何もあったものではなく、賃金も期限も、僕が出向先に来てから、ボスの部下とムニャムニャ話し合って決めた。ハッキリ言ってしまえば、出向先の繁忙期は終わっていて「いてもらってもなあ」という空気だったところを、自分から、二月末か三月末と期限を切って、残務処理で居場所を作ったようなものだ。
大将も大将ならボスもボスと言いたいところだが、ボスはボスなりに、放置プレーで僕の力量を試したような雰囲気だ。

一方大将は、ボスが僕を通年で雇わないことに憤慨して「無責任」だと陰で批難している。
僕はそもそも大分に骨を埋めるつもりはなくて、都会と田舎の二拠点生活を考えているし、ボスはその事を分かっているので、ボスと僕の間ではなんの問題もない。ボスとしても忙しい時期だけ労働力があるのは効率が良いから、来季はもう一人、僕の仲間を雇ってくれるのも決まった。

この状況。タイムリーなことに、大河ドラマ「麒麟が来る」の今後の展開に結構似ている気がするんだなぁ。

大将=足利義昭
ボス=織田信長
ぼく=明智光秀

まあ、僕は「国盗り物語」の影響が強いから、十兵衛カッケーと思ってるし、負のイメージなんかない。とはいえ僕が憧れるのは、松波庄九郎なんだよね。カミさんもお槙ってガラじゃなくて、どっちかというとお万阿に近いような。

さてさて、「僕のドラマ」どうなることやら。

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