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「愛」の果てにあるのは絶望。妹が兄を喰べた時、彼らの世界は赤色に染まっていく。

「pupa」 茂木清香 全5巻

PAKU★★★★★ POKU★★☆☆☆ BLACK★★☆☆☆

仲の良い兄と妹だった主人公たちは、ほぼ同時に未知のウィルス“pupa”に感染してしまう。妹は人を喰らう化け物になり、兄は不死の体を手に入れる。元の幸せな生活を取り戻すための2人の戦いが始まる。

最初は、ワクチンを飲めば妹は治るということで、自分の体を媒介にして兄が妹に食べれらるという展開になっていく。だが、この作品はとにかく展開が早い。1巻を追うごとに、状況がどんどん変わっていき、続きがどんどん気になる。

終わり方も新人作家に割にはうまくいっている。きちんと纏まっているのは素晴らしいと思う。「続きはっ?!」とならなくて済む。

また、この作品は「愛」がきちんと描かれていることが一番のポイント。1巻の帯にある「究極の兄妹愛!」と書いてあるとおる。歪んではいるものの、みんな家族をきちんと愛している。そして、その家族は「血の繋がり」ではない。

兄は妹を愛し、妹は兄を愛し、また違う兄妹も互いを愛している。そして、父も息子を愛し、母も息子を愛している。父も母も互いを愛している。もちろん、あたらしい生命もまた、愛される存在である。全員の「愛」をヒリヒリと感じる。その「愛」があるが故、物語は絶望しかない。

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