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吉井和哉のアンチなのに吉井和哉の歌声に逆らえない

フ、フ、フーーーーン。
まぁまぁ、まぁ、いいんじゃないの…!!?

などと、概念創立から間もない超初期のツンデレキャラのような距離感で虚勢を張る私がいるのだ。


吉井和哉氏の概要

公平を期す為にWikipediaから引用します。

吉井 和哉(よしい かずや、1966年〈昭和41年〉10月8日 - )は、日本の音楽家、シンガーソングライター。THE YELLOW MONKEYのボーカリスト、ギタリスト。東京都北区出身、静岡県育ち。身長183cm。血液型はA型

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

所謂バンドマンです。中でもフロントマンという花形の立ち位置、スター性のあるタイプの人です。実際色気と華のある人です。
あ、いや、嫌いなんですよ、私は。

何故嫌いなのかというと第一印象がなんとなく最悪だった。

当時私は中学3年生くらいで、私の世代の邦楽バンド好きとしてはあるあるなRADWIMPSというバンドにドハマリしており
これまたベタに『Rockin’ on JAPAN』というミュージシャンのインタビューとライターによるライブレポや新譜レビューが載っている音楽性的には含蓄があるのかないのか微妙な立ち位置故にミーハーが読むみたいな扱いをされている雑誌で好きなアーティストの記事を読み漁っていた。
(ちなみにミーハーじゃない人はギタマガ/ベーマガ/バーンあたりを読んでいるという偏見を持っていた)

当時はほぼ活動休止中だったのもあり、音楽雑誌ですら露出がほとんど無かったRADWIMPSの新しい記事は、野田洋次郎(Vo.の人)のことを洋次郎呼びして彼こそが音楽的にも文学的にもこの世で最も崇高なオンリーワンと心酔しているキッズにとってはまぁかなりのご馳走で、前述のロッキンジャパンの表紙に文字だけでちょろっとバンド名が書いてあるだけで私は目ざとく飛びついていた。

その時に一緒に載っていたのが吉井和哉でありたぶんそれが初邂逅だったと思う。
今少し調べてみると2009年3月号と4月号の二ヶ月連続でRADWIMPSと吉井和哉の特集が組まれていた。同時期に新譜を出していたみたい。

当時この世の神は野田洋次郎と思いつつも他にも好きな音楽を増やしたいという気持ちは一応あったので、全然知らないアーティストの記事もそこそこ読んでいた。
で、その時の吉井和哉氏の印象がなんか悪かったのである。正直内容はうろ覚えで、さっき調べた際には‟『(新譜の名前)』の全貌が明らかに”と記載があったが全然ピンと来ない。
中学生当時の感情だけ覚えている印象を羅列すると

・髪が長すぎる、若作りロックおじさん
・そういうちょっと不良みたいなロックのスタイルいつまでやってんねん21世紀やぞ
・(なんらかの発言に対して)それがかっこいいと思ってる感覚どやねん

なんかこんな感じだったと思う。好きなバンドがやっと3つ4つ出来たばかりなのに妙にイキっている清廉潔白なかわいい中学生なので許してあげてほしい。

RADWIMPS

野田洋次郎という人は上の画像の後ろで一人だけ立っているゆるゆるの服を着たお兄ちゃんなのだが、
つまりこういうユニセックスで、ナチュラル素材な、独特の言葉遣いをする、且つ当時の中学生が共感しやすい人生観の歌詞を書く人がその時の私にとっての神であり素晴らしい創作をする人物であったので

吉井和哉

こんなグラムロック風味バキバキおじさんなんて嗜好の真反対の存在で、扱う言葉のファッション性もパフォーマンスの1つと理解していない中学生には受け入れがたい存在だったであろうことは今の自分なりにも想像できる。あ、いや今も完全には受け入れてないですよ、一応ね。

という感じで第一印象は完全に世間知らずの子供の潔癖な価値観から来る嫌悪感だったんですが、
何年か後に某女性タレントとの熱愛報道、授かり婚報道などが出た際、ついでに吉井和哉氏の過去などに対する下世話な詮索が煽りとしてワイドショーや週刊誌の表紙で流されるので「やっぱロクでもねぇ勘違いロックおじさんじゃん…」という印象がとうとう定着。
年下のタレントと結婚するバンドマンに対して根拠のない嫌悪感があった気もする。

ただしこれらの報道で「バラ色の人生」的な文句が使われた際に「上手いこと言うたと思ってんなよマスコミ!!」とキレる程度には既にちょっとずつ懐柔されつつあった。

再録より古いバージョンのほうが好きな曲の1つです。

私はクソチョロい人間なので、好きなバンドマンが昔よく聴いていた音楽としてイエローモンキーの名前を出したり、そのバンドがイエモンのトリビュートアルバムに参加したり、吉井和哉氏と一緒にイエモンの楽曲のカバーをライブで披露したりすることでだんだんイエモンの曲を知りだんだんイエモン単体にも興味を持ち始めた。

というか元々ぼんやり聴いたことがあった楽曲も勿論あり
「あ、このメロディもこの人たちの曲だったのか」をただ繰り返す作業でもあった。名曲ばかりなので意図せずそらで歌えるくらい繰り返し聴くようになるのも時間の問題である。
再結成した時は漠然と「長い時間世の中を見てればこんなに良いことがあるのか!長生きいいかも!」とまで思った。

それでも吉井和哉のソロは(特に理由なく)違うかな!と思い無理矢理避けていたのだが、

久保田早紀の『異邦人』のカバー(とんでもない数がある)をひたすら聴き、どれが一番秀逸か決める遊びをしていた時に吉井和哉が歌う『異邦人』を聴いて「この人の声帯やっぱり最強では…?!」とついうっかり唸ってしまう。この頃からだんだん隙が出てくる。
(ちなみに一番好きな『異邦人』はEGO-WRAPPIN'のもの)

決定的なのはYoutubeにあがっていた松任谷由実との『あの日にかえりたい』デュエット音源だった。※今はもう削除されています。

『異邦人』は昭和歌謡といってもアップテンポな楽曲だしカバーのアレンジもイエモンっぽかったので声帯がつよいと感じた以外に意外性はなかったのだが『あの日にかえりたい』はしっとりした曲調でより歌手の表現力が前に出てくる。
しかもユーミン本人とのデュエットなのでユーミンの歌の独特のクセにどう合わせるか試されるところでもある。
のだが、なにも違和感がない!!!

勿論吉井和哉の能力だけでなくユーミンの実力もあわさってのことではあるのだけど、にしても!!
あぁ~美しい歌声と思わざるを得ない!ちくしょう!

一旦話を脱線させると、私は一応舞台に関わっていた人間ということもあり、その時々の板の上での役割にあわせて出力を調整できるパフォーマーは全般的に尊敬している。
例えば演劇だと主役といってもその役が物語の中でずっと目立つ訳ではなく、その時々で焦点が当たる場所は変わる。それを理解せずに常に自分が目立つことを考える、実力を晒したがる俳優やスタッフ等がまま存在するのだが、個人的には美しくないと思う。
ただ本人が意図せず目立ってしまうどうしても華のある人というのもいて、それはそれとして許される場合があったり悪目立ちとされて苦労をする場合があったり様々なのだが

吉井和哉が普段あれほどの華とオーラをまといながら、前述のデュエットでは相手を立てる出力を抑えた歌唱が出来ることに、自分が前に出るターンでは普段の華を少し添える姿に、正直かなり好感度が上がってしまった。悔しかった。ちくしょうずるい!と思った。

グラムロックのファッションにはとうの昔に嫌悪感を抱かなくなり、むしろデヴィッド・ボウイの衣装を模写したりするようになっていた私は当然、吉井和哉のファッションへのなんとなくの嫌悪感もほとんど無くなっていたしなんなら垂れ目の男が好みだ。

正直、今、もうギリギリである。
アンチするところがもう余り無い。

しいていえば『4000粒の恋の唄』の内容について

吉井が青春時代を過ごした「女性たちへの懺悔の歌」であり、「だらしない男がそれを歌うとこが凄く重要だと思う」と語っている。また、某女性歌手からカバーの要望があったが、吉井は「この曲は女性には歌えない。こんな情けない僕にしか歌えない」という理由で断っている

Wikipedia出典元によるとROCKIN'ON JAPAN 1993年3月号とのこと

おっっっっまえほんまそういうとこやぞ!!!クソ名曲やけど
と思ったり、

よく取り沙汰される『JAM』の歌詞についてのコメントで

ちょうどオウム真理教の地下鉄サリン事件とか、阪神・淡路大震災とかあって、子供を持つ身としては不安な世の中だったから、それも大きかった。『君に逢いたくて』というくだりは、当時、娘に向けて書いたんです。あまり家にいてやれなかったですし」と語っている。

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/JAM/Tactics#cite_note-jdn-6

いや災害を目の前にして急に思い出したように娘のこと思って歌うよりいつも会いに行ってやれよ!!!!そういうとこやぞ!!!!

サビ前の言葉にならない歌声がきれいな獣の哭き声みたいで
こっちまで泣きそうになるけど!!!さぁ!!!

という風な虚勢を張るので精一杯です。
吉井和哉のソロ活動でカバーばっかりのアルバムがあるんですが、ほんとに、どんな歌でも余裕綽々で伸びやかに歌うんですよね。
ちょいちょいお茶目を添えられるくらい、ほんと余裕なんですよね。ちくしょう!ずるい!こんな声帯が私も欲しい!こんなにも自由に歌ってみたい!

人物に対する感情のスタート地点がこんなにも嫌いなのに、この歌声に一切逆らえなくて、逆に一番実力で捻じ伏せられているという点では一番好きな才能なのかもしれない。

チバユウスケの訃報がとてもショックだった時、吉井さんの喉頭がんについても心配が再燃しましたが、新しい音源を聴けると安心するし何より嬉しいですね。いや別に全然ファンとかじゃないんですけど。

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