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お父さんのお仕事

お父さん、お母さん、長女7歳、次女5歳、長男3歳。5人家族

お父さんのお仕事

朝のゴミ出し


朝起きると、お母さんは子供のお弁当と朝食の準備。並行して家の中のゴミを集めてゴミ出しの準備。お父さんは小学一年生の長女を起こし、顔洗い、トイレへ誘導。お母さんから朝食の号令がかかれば、長女をダイニングへ誘導。朝食が終われば、長女を歯磨きへ誘導、様子を伺いつつ、仕上げ磨きをする。小学校の制服の着替えの手伝い。長女の機嫌が良い時は、自分で着替えるが、機嫌が悪いとお父さんが手伝う。着がえが終わればお母さんが長女の髪を結んであげる。お父さんとお母さんは玄関で投稿する長女の見送り。見送ったと同時にお父さんは玄関にあるゴミぶくろをゴミ置き場へもっていく。長女は集団登校の集合場所まで。お父さんはゴミ置き場まで。朝日を浴びながら二人で雑談。お父さんはゴミ置き場にゴミを置く。娘は集団登校の輪の中へ。登校する娘の後ろ姿に成長を感じる。朝のゴミ出し。
お父さんの仕事は朝のゴミ出しをすること。


お母さんのお話



仕事が終わるとまっすぐ家に帰る。夏は暑い。汗だくになったので、家に帰るとすぐ着替えたい。家について、玄関をあけると3歳の長男が走ってきて「おかえり」と迎えてくれる。お母さんと長女と次女は冷房の効いたリビングでテレビを見ている。「ただいま」と言うと「おかえり」と答えてくれる。お父さんは汗だくのシャツとスラックスを部屋着に着替えようとタンスへ向かう。お母さんはお父さんが帰ってくるのを見て、夕食の準備を始める。夕食の準備をしながらお母さんは今日あった出来事の話をしだす。お父さんは着替え。お母さんは夕食の準備とお話。着がえをしているとお母さんの話声が遠くから聞こえる。着がえをしている場所とキッチンは少し遠いので、内容は良く分からない。なんとなくいいタイミングで大きな声で相槌をうつ。着がえが終わればお父さんはキッチンへ行って、換気扇の下でお母さんの話を聞きながら煙草を吸う。お母さんはお皿などの洗い上げかごを買うか悩んでいるらしい。これはこんな機能がある。これは今すごく安くなっている。一番ほしいもの買ったらいいんじゃないと答えるとお母さんは嬉しそうにありがとうと答える。お母さんは子供の話をする。長女が小学校で初めてのプールを経験した話。次女が幼稚園でうんていができるようになった話。長男がおもちゃをかたずけなくて困っている話。お父さんは相槌をしながら話を聞く。途中からお母さんが何をいっているか良く分からなくなってくる。それでも相槌を打ちながら話を聞く。お母さんは困ったことや嬉しかったこといろいろと話をする。結局ほしかった洗い上げかごが買えた事が嬉しかったみたい。お母さんは今日もお父さんが好きな料理を作ってくれる。
お父さんの仕事はお母さんの話を聞くこと。

子供たちの寝かしつけ


子供たちはお風呂が終わると、お父さんとジュースを飲む。飲み終わったらお母さんと絵本を読む。一通り絵本を読み終われば、お父さんの号令で電気を消して就寝の準備をする。子供たちはまだ小さい。子供たちは仲が良い。ずっとお話をしている。静かにしなさい。もう寝なさいとお父さんが言う。家族みんなで布団に入る。お母さんは絵本を読み終われば自分の時間。スマホで漫画を読んだり、好きなアーティストの動画を見たりする。子供たちはふとんに転がりながら、お父さんに話しかける。しりとりをしよう。クイズをしよう。おすもうをしよう。一回だけだと伝え。終わったら寝るよと伝える。三人ともはい、と良い返事。まず長女とクイズ、次女とクイズ、長男とクイズ。終わったから寝るよと伝えると。次女がもう一問だけという。次女ともう一問クイズをすると長女が、ずるい私ももう一問という。長男は良く分かってないが僕も僕もと大声で叫ぶ。二、三問づつほどほどにクイズを終えて、もう寝るよと伝える。しりとりしてないよと長女が言う。長女と、次女と、長男としりとしをする。適当なタイミングで「ん」のつく言葉を言って、負けちゃったといって、終わりにする。子供たちは大喜び。さあ寝るよと伝えると、おすもうがしたいと長男が言う。お母さんは相変わらずスマホで漫画か動画を見ている。お父さんはちょっと助けてと思うがそこはお母さんの時間。そっとしておく。子供たちとおすもうをする。お父さんはわざと負ける。おすもうをしているとときどきお母さんの足を踏んでしまう。お母さんがいたいと叫ぶ。お父さんも子供たちもごめんと伝える。おすもうはまだおわらない。お父さん疲れたし、明日も朝早いから寝ようと伝える。しぶしぶ子供たちは布団でごろごろしだす。長女が最初にねる。小学校で疲れているので寝つきは良い。次女は静かに目をつぶっている。長男はタンスから靴下を取り出して放り投げている。お父さんは静かにその靴下を片付ける。そうこうしていると次女は寝ている。長男はタンスから服を取り出して放り投げている。お父さんはもう寝なさいと長男に起こる。怒られた長男はお母さんの元へ寄っていき、泣きながらお母さんの横で静かになっていく。毎日同じような夜の繰り返しだが、子供たちは少しづつ成長している。
お父さんのお仕事は子供たちの寝かしつけ。

カブトムシ


お母さんから突然のLINEメッセージ。次女が幼稚園でカブトムシをもらってきたらしい。帰りに虫かごなど必要な物を買ってきてということだった。お父さんは虫が嫌い。動物も苦手。でもカブトムシの世話もお父さんの仕事。帰り道に虫かごと、土と、カブトムシ用のゼリーを購入。土の説明書きをよく見ると、袋を開けて一日ほど天日干しが必要らしいので、今日は使えない。今日すぐに使えるように帰宅途中の公園に立ち寄り適当な腐葉土を先ほど買った虫かごに入れて持ち帰る。家に帰ると次女が駆け寄ってきて、おかえりの一言もなしに、お父さんから虫かごを奪い取る。虫かごの中の腐葉土を眺める次女。うようよと何か虫がいると訴える次女。お父さんはベランダへ行き、先ほどとってきた腐葉土を広げて虫をとる。一匹、二匹、合計六匹の虫がいた。虫を取り除いて、ベランダからリビングに戻ると次女が大きな声で「ありがとう」という。お母さんが後ろで微笑んでいる。きっとお母さんがちゃんとありがとうを言いなさいといったのだろう。虫かごにカブトムシとゼリーを入れる。それを眺める次女。面白そうだと長女と長男も駆け寄ってくる。急遽買った虫かごは小さく、三人が頭をぶつけながら上からカブトムシを眺める。お腹が減っていたのかカブトムシはすぐにゼリーを食べ始める。楽しそうにそれを眺める子供たち。ぶつかり合う頭。徐々に押し合い、喧嘩が始まる。カブトムシはそっちのけで、泣き叫ぶ子供たち。それでもカブトムシはゼリーをほおばる。一息ついたら次女がお父さんに駆け寄ってくる。虫かごが小さい。とのことらしい。後日また大きな虫かごを買いに行く。おそらくその頃には子供たちは興味を失い、カブトムシの世話はお父さんの仕事になる。これからよろしくとカブトムシに声をかけ、リビングの換気扇の下、お父さんはタバコを吸う。
カブトムシの世話はお父さんのお仕事。

おじいちゃんのパソコン


お母さんのお父さん。お父さんにとってはお義父さん。子供たちにとってはおじいちゃん。おじいちゃんはパソコンが苦手。分からない事があるとお母さんに電話がかかってくる。お母さんもパソコンが苦手。お母さんはお父さんに電話を渡す。お父さんはおじいちゃんのお話を聞く。インターネットがつながらなくなったらしい。お父さんはおじいちゃんの家を頭の中で想像して、あそこのコンセントを入れてください。あそこのスイッチを押してみてください。パソコンのここのボタンを押してください。あれやこれやと説明する。おじいちゃんはお父さんの指示通りに作業を進める。電話をしていると子供たちがおじいちゃんとお話がしたいとせがむ。大きな声でおじいちゃんとお話をする子供たち。パソコンの問題は忘れてしまって、子供たちとのお話を楽しむおじいちゃん。お話が終わると満足をして電話が切れる。パソコンの問題は何も解決していないけど、喜んでもらえたならそれでいい。きっとまた明日電話がかかってくる。電話でだめなら、今度家に帰った時にパソコンの問題を解決しよう。お母さんは笑顔。お母さんはおじいちゃんのお話が少し苦手。話が長いし、きびしいからみたい。おじいちゃんの話を一生懸命聞いてくれるお父さんがうれしいみたい。おじいちゃんと電話している間にお母さんが準備してくれたコーヒーを飲むお父さん。
おじいちゃんのお話を聞くのがお父さんのお仕事。


長女との秘密の時間


夜中に小学一年生の長女が突然泣き出す。お父さんが起きる。お母さんはお父さんが起きたのを確認して、そのまま動かない。お母さんはたくさん家事をしたので疲れている。お父さんが長女のお話を聞く。お腹が痛いらしい。長女のお腹をさすってあげる。お父さんが子供の頃もよくお腹がいたくなった。お腹がいたいのがつらいのはよくわかる。なでなでしていると静かになってくる。でもやっぱりまだいたいらしくてまた泣き出す。お父さんは長女のお腹をなでながらお話をする。おとうさんも子供のころおばあちゃんにいつもお腹をさすってもらってたんだよ。お腹なでなでしてたらいたくなくなるからねと。お腹をさすっていると、お父さんはまた眠たくなってくる。眠りながらお腹をさする。長女はまだお腹が痛いらしい。一緒にトイレにいって、一緒に少しお茶を飲む。少し痛みが治まってきた長女はお父さんに耳を貸してと言ってくる。秘密の時間だ。長女は秘密の言葉を言う。「じゃがりこ」。秘密の言葉を聞いて、お父さんは頷く。他の子どもたちが起きないように静かに玄関のドアを開けて、二人で車に乗り込む。近くのコンビニでじゃがりこを買う。すぐに家に戻る。家の駐車場に車を止めて、家に戻る前に急いでじゃがりこをすべて食べる長女。お父さんと長女の秘密の時間。長女はお姉ちゃんとして妹に、弟にいつも優しくしている。でも長女も甘えたい。だからときどきお父さんと長女の秘密の時間を作る。お母さんも次女も長男もしらない、お父さんと長女だけの秘密の時間。
長女との秘密の時間を大切にするのがお父さんのお仕事。


アンパンマンの食べ物

三歳の長男がお父さんに話しかける。「アンパンマンの食べ物がしたい」。お父さんは良く分からない。何がしたいのと聞くと「アンパンマンの食べ物がしたい」と長男はもう一度言う。長男の手が少し上下に動いている。何かの遊びかなと思うけど、お父さんは分からない。長女が横から教えてくれる。アンパンマンの手遊びだよ。なるほど、アンパンマンの手遊びなら分かる。「トントンとんとんアンパンマン、トントンとんとんカレーパンマン」と手遊びをしていると途中で、長男が違うと言う。何か違うらしい。長女が再び教えてくれる。アンパンマンのほっぺたがとれるらしい。お父さんが子供のころとは少し違う。長女に習いつつ、ほっぺたをとる。「トントンとんとんアンパンマン、ポロ、ポロ、トントンとんとんカレーパンマン、ポロ、ポロ、」。また長男は違うと言う。長女に聞くと、取れたほっぺたを食べるらしい。「トントンとんとんアンパン、ポロ、ポロ、パク、パク、」。長男は笑顔。これが正解らしい。カレーパンマンは食べると辛いらしい。からいからいと言いながら水を飲むしぐさが必要だとのこと。ばいきんまんは食べるとお腹が痛くなって、薬を飲むらしい。子供の遊びも進化している。一通り楽しんだ長男は次女の元へと駆け寄っていきまた何やら違う遊びをしている。一息つくためにリビングの換気扇の下へ、タバコを吸おうと箱をあけるとタバコは一本も入っていない。溜息をつきつつ、コンビニへタバコを買いに向かう。
長男のアンパンマンの手遊びに付き合うのもお父さんのお仕事。


お父さんのお仕事

お父さんのお仕事。お母さんのお話を聞くこと。カブトムシのお世話をすること。おじいちゃんのパソコンを直すこと。長女との秘密の時間を大切にすること。長男とアンパンマンの手遊びをすること。お父さんは忙しい。
お父さんは楽しくて、忙しい。








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