まよ吉@柿いろ

認知症の方と日々関わる仕事を始めて10年が経ちました。  10年を節目に、2023.8…

まよ吉@柿いろ

認知症の方と日々関わる仕事を始めて10年が経ちました。  10年を節目に、2023.8~心に響いたことを発信したいと思います。私の響いたことが、誰かと共感できたり、暮らしの参考になればうれしいです。  看護師☆保健師☆介護福祉士☆認知症ケア専門士

最近の記事

口腔体操 たのしい雰囲気のなかで

口腔体操の目的口腔体操、もしくは食前体操。皆さんの施設では、食前に行う体操のことを、なんと呼んでいますか? 呼び方は様々ですが、目的はひとつ。食事時の誤嚥予防です。 食事の前に口の中が、だ液いっぱいで、潤っていること。 舌がよく動くようになっていること。 そんなことを意識しながら、利用者様と口の体操をおこなっています。 『おまけ言葉』をたいせつに口腔体操は、日常の会話とは別の目的があるので、形式ばった体操になりがちです。 でも、ちょぴりスパイスを効かせながら、笑いも取り

    • 延命はしないでほしい。でも苦しいのはいやなんです。

      認知症の利用者様が入居されるときや、症状が悪化したタイミングで、いわゆる「延命」についてお話をさせて頂くことがあります。  そして、たいていの方は、「延命は希望しません。でも、痛みや苦しみは取ってあげてほしいです。」とおっしゃいます。当然のことだと思います。  では、「延命」ってなんでしょう? 呼吸器装着・経管栄養・高カロリー輸液・心臓マッサージ。この類のことでしょうか。  ところが高齢の方に対してのこの処置は、積極的に行わない医療機関も増えています。 では、これはど

      • 老いても子に従えない

        先日ことわざのお話をしていたときのことでした。 『老いては子に従え』そんな誰もが知っている、ことわざ。 「子に従えますか?」 なんて笑い話のようにやりとりをしていたときのことでした。 ある女性の方からの返事でした。 「老いても子に従えない!!そんなに簡単に従えるわけない!」 との返事に、みんなで爆笑。 ほんと、そうよね、とのあいづち。 またほかの方が、 「老いたら子に従えざるおえない!!おやつだって当たらないぞ!」 なんてお話をされるので、ますます盛り上がりました。  

        • 診断されたら、別の人?

          自分につけられる肩書き 自分につけられる、肩書きについてです。 お母さん、おばさん、娘、看護師、黄色い服を着ている人、髪の長い人…などなど。 他人から見たら、自分につけられる肩書きは、限りなくあります。 …ところで、肩書きがついた自分は、それぞれに合わせた『別の人』になってしまうのでしょうか?  私自身、肩書きが好きではありません。自分一人で過ごす時間が大好きで、「ただの自分」でいられるときを非常に大切にしています。  大げさに言うならば、親からもらった名前ですら、いらな

        口腔体操 たのしい雰囲気のなかで

          認知症の人が見ている世界

          認知症の人の世界 『認知症』と聞くと、まずどんなことをイメージしますか? もう何もわからなくなる。もう人生は終わり。苦しむのは、本人じゃなく、 家族だ。そんなことを考える人もいるかもしれませんね。 そう思うことを決して否定する訳ではありません。 長年「痴呆」「呆け」などと呼ばれていた時代には、認知症の人を 拘束したり、小さな物置きに閉じ込めたりすることもありました。 私が看護学生だった頃の教科書には、当然のごとく「痴呆」と書かれていて、私が療養病棟で勤務をしていたころ

          認知症の人が見ている世界

          帰る場所・居場所ってどこだろう

          お正月も過ぎ、新しい一年がはじまりましたね。 お正月の帰宅 お正月になると、「お正月の宿泊や外出は、どうされますか?」 そんなやりとりは、どこの介護施設でも、交わされていたのではないでしょうか。  お正月に認知症の方を受け入れるご家族は、残念ながら多くはありません。それでも一部、自宅に戻ったか方も。   ここでエピソードをおひとつ  自宅に戻ったとはいえ、そこには親族20人が集まる大宴会。何年か振りに会う親族のことは、うまく思い出せないし、耳が遠くて声もよく聞こえな

          帰る場所・居場所ってどこだろう

          尊厳〜自分が自分であること〜

          尊厳を辞書で引くと尊厳っていったい何でしょう?  辞書で引くと、尊く、厳かなこと。との記載。 非常にあいまいで、抽象的ですね。 でも、尊厳って、本来抽象的なのかもしれません。 個々に違い、正解がないのですから。 人間らしい生活人間が人間らしく扱ってもらえない時、尊厳を侵害されている、 尊厳が冒されている、などと表現されます。  最低限の生活の保障が日本国憲法にも掲げられていますね。 「健康で文化的な生活」この点も掘り下げる必要がありそうです。 その人がその人らしくあるた

          尊厳〜自分が自分であること〜

          小説8050

          ようやく読破しました。林真理子さんの、小説8050。 以前から気になっていた小説でしたが、その頃は、まだ遠い世界のこと。 80代の親と、50代の引きこもりの子どもが共依存する、8050問題です。  それこそ小説の世界だと思っていた現状が、知らなかっただけ。ということが偶然たび重なりました。  実はご近所にも似た状態で困っている家庭があったり、兄が引きこもってるの、と打ち明けてくれた友人がいたり。  フィクションなんかじゃない。圧倒的なリアリティーで、ごく日常の隣に潜む、当事

          年賀状からの卒業

          年賀状の時期 そろそろ年賀状の期日がせまり、慌てている方もいるのでは? 私は、5年前に年賀状を書くことから卒業しました。 以前は、80枚の年賀状を毎年書いていました。 一年間の家族の写真を選び出し、自宅のプリンターで夜な夜な作業。 作業…と言っている時点で、すでに良くないですね。 書いている時は、一年に一度くらい、相手を思い出しながら一筆書こう、と気持ちを向けながら書いていました。 もちろんお正月に届く年賀状も楽しみではありました。 成長する友人の子供たちの笑顔。近況報

          年賀状からの卒業

          やりたいことを「やる」にかえる

           やりたいなぁ、と思っていることを、実際「やる」に移行するとき、 自分自身でできることならば、それは自分次第。  今回は、ほんの少しのきっかけと道具で、ご本人のやりたい希望を叶えることができました。  ほんのささいなことなのです。   元来、写経を趣味としている方でした。 家族への手紙も書いていましたが、おっくうになってきたお年ごろ。 98歳です。  「頭がぼわっとしてくるから、何か書かせてほしいのだけど。」  つかさず用意したノートと鉛筆でしたが、肝心の文字が読

          やりたいことを「やる」にかえる

          着物がこころ残り

          「置いてきた着物が気になるの。」 何度となく聞く、入居者様の言葉です。 嫁入りに持たせてもらった大切な着物。 若い頃は忙しくて、ハレの日にも着れず、しつけのついたままの着物。  施設に入った今も、桐のたんすに入っている着物の行方が気になるのです。  それは残念ですが、たいていご家族がすでに処分してしまっていることも、よく聞く話。  そうなる前に、世に送り出してあげませんか?タンスの中の着物たち。   練習用の小紋の着物をカットして、20枚のふくさをつくりました。 模様

          着物がこころ残り

          一生残る こころのきず

          「一生だよね、このこと」 久しぶりに、以前一緒に働いていた友人と話をしました。 その友人の祖母が高齢者施設に入居することになり、そこで心ない 介護を受けてショックを受けていました。  おむつを外すから、つなぎの服を着て、どこへ行くか分からないので部屋に鍵をかけられていました。  面会のたびに身体にあざが増え、尿臭がしたままの衣類でした。  そこで、私たちが20年前に実際していたことを振り返ったのです。 何してたんだろうね、私たち。不適切なケアをされた方も傷つき、そして

          一生残る こころのきず

          やりたいを叶えること

          「目が見えないけど、便りの返事が書きたいのですが」 ある午後の日のことです。 ご家族からハガキが届いても読むことができないので、 いつも職員が代読していました。   でも、この日は、ふとそんなことをおっしゃいました。  食べる・排泄・入浴・睡眠…で精いっぱい。意欲的な活動がほとんど ない状態でしたが、テーブルに紙とマジックを準備してみました。  勢いのある字。 見守るだけで、そのままのご本人の文字です。  『ゆきがふって 世界がひろくなったような 気がしますね  さ

          やりたいを叶えること

          認知症の方は、薬を飲んでいる?

           認知症の方は、病気なので、必ず認知症薬を飲んでいると思っている方は 多いのではないでしょうか?  私の認知症グループホームで認知症薬を飲んでいる方は、2~3割です。 先日の地域会議でこの話をしたところ、意外と少ないことに驚かれました。  自宅で過ごしている方で、症状が落ち着かず薬を飲んでいても、入居後に中止した方もいらっしゃいます。  また、認知症の進行に伴い、ふさわしくない時期がきて、やめた方もいらっしゃいます。  どちらにせよ、認知症の方でも、認知症の薬を飲んでい

          認知症の方は、薬を飲んでいる?

          人を縛ったことはありますか

           人を縛る。一方的な行為です。 病院で治療する際に、拒否や理解が乏しい患者様に対し、ミトンや、ひもで縛り、点滴を打ったり、処置をすることがあります。  これは、患者様の命にかかわるためです。 私も、数えきれない方の腕を縛り、足を縛りました。  でも、これはどうでしょうか。 認知症の方がおむつを外してしまうので、縛りました。 縛らなかったとしても、鍵付きのつなぎ服を着せました。 車いすから立ち上がって危ないので、車いすに縛って固定しました。  …していました、私。  数え

          人を縛ったことはありますか

          敬老日

            『敬老日 涙して聞く 子らの歌 』  もうすぐ敬老の日ですね。 祝日の考え方は、さまざまありますが、久しぶりに会えたり、声を聞いたり、文字を読んで喜び合える日であることに、間違いはないでしょう。  自分が歳を重ねると、おじいちゃん、おばあちゃんと呼べる相手は確実に減ります。  幼少期から記憶になくても、あふれる程の愛情を受けていた相手です。  大きな声を出さなきゃいけなくても、良く見えないと言われても、何度も同じ話をしなきゃいけなくても、そこは一呼吸おいて。  もしか